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『そして、私たちは最強になった』

「いてて……身体中が痛い。あっちこっちぶった切られてめっちゃ血が出ちゃってるよ。よくもまあワタシにこんな傷を負わせたね」


 身体の主導権を取り戻した私は、サツキに『封天ノ鎖』を解いてもらいながら現在の状況を把握する。


「ふふふ、それをやったのは私だ」

「……えっ」


 声の聞こえた方向に視線を送ると、本来ならばこの世界に存在するはずのない者がいた。

 理解が追い付かず、ポカンと口を開ける私。


「久しぶりだな、カレイア。2万5千年ぶりくらいか」

「ル、ルーシェリアさん!? ええっ!? なんで!? ブラシュアを殺そうとして封絶牢獄に落とされたんじゃなかった!?」

「ふふふ、驚くのも無理はない。なぜ私がここにいるのか。それは、ここにいるアメルのおかげだ」


 アメルと肩を組んで、笑みを浮かべるルーシェリア。


「いや、それは有り得ない。ルーシェリアさんが封印されるとしたら封絶牢獄の最下層。どれだけ代償を払ったとしてもアメルじゃあ――」

「ええっと、それにはいろいろとあって。ルヴィエラさんの協力でエーテルノちゃんと生命力を共有してルーシェリアちゃんの封印を解いたんだよ」

「ど、ども……」


 気まずそうにしながら、ゆっくりと手を挙げるルヴィエラ。


「全ての元凶!! 焼き殺してやる!!」

「ちょ、ちょま、ちょまままま――」

「まて、カレイア。全ての元凶であるこいつを焼き殺したい気持ちは分かる。しかし、こいつがいなければ貴様を止めることができなかった。こいつがアメルと虹色娘の生命力を共有しなければ、我々は貴様の焔によって全滅していた。納得はいかないと思うが、どうか許してやってくれ」

「アズリオンが言うなら……」


 アズリオンに止められ、私は『銀ノ焔』を消滅させた。

 神の力を手にしたルヴィエラであれば、私が『銀ノ焔ぎんのほむら』を撃ち出すよりも早く私を殺すことができた。それをしなかったということは、敵意は皆無ということだろう。


「すっごい今更だけど、よくよく考えたらエグいよねメンツが」


 ピリついた空気の中、アルンフィードが口を開いた。空気を変えるチャンスだと思ったのか、サレヴィアが話を続ける。


「……本当ね。熾天使カレイア、魔王アズリオン、竜王ルヴィエラの3体が揃うだけでもアレなのに、魔神ルーシェリアまでいるのだから。3界戦争の時よりも豪華だわ」

「それに加え、それぞれのナンバー2も揃ってやがるですよ。ルーワカ、ラードニア、イケメンくそったれ」

「まってくれ、僕だけ悪口じゃないか?」

「てめえには、イケメンくそったれがお似合いですよ」

「ええ……」

「「「「あははは!!」」」」


 エーテルノとルフィアのやり取りによって、笑いが起こる。


「カレイアちゃん、遅くなったけど傷を治してあげるわね」

「うん、ありがとうルーワカ。さっきから我慢していたけど痛くて泣きそうだった」

「うふふ、かっこいいカレイアちゃんも好きだけど、私はこっちの可愛いカレイアちゃんの方が好きだわ」

「……」


 よしよしと頭を撫でてくるルーワカ。

 時間魔法によって、みるみるうちに傷が治っていく。


「私もルーワカ好き。アルバティンと一緒に私たちのギルドに入ってよ」

「いいわよ」

「おい、そこのアホ天使。ダメに決まっているだろう。そこにいる馬鹿にただでさえ戦力を削られたというのに、ルーワカとアルバティンまで奪われたら魔界滅亡だ」

「あはは、冗談だよ」

「まったく、油断も隙もない。さて、そこのバカのせいで我々には後始末が残っている。今から復興作業だ。貴様等解散だ」

「あーん」


 アズリオンによって、荷物を運ぶかのようにルーワカがずるずると引きずられていく。


「じゃあね、ボクたちも行くよ」

「魔界の後始末が終わったら、サレンとして冒険者協会に顔を見せに行くわ」

「いつか美味しい料理食べさせて」


 アルンフィード、サレヴィア、アルバティンも、アズリオンに付いていってしまった。


「一旦、あたしらも竜界に戻るし。ルーちゃん、竜界のみんなに謝んないとね」

「許してくれるかな」

「ルーちゃんは今まで竜界のために頑張ってきたんだし、みんな分かってくれるし」

「うん」


 ラードニアに背中をポンポンと叩かれ、こくりと頷くルヴィエラ。

 隣でトップを支えるナンバー2。良い関係だね。


「んじゃ、またいつか会おうし。愛してるよカレっち。最後にちゅーしていい?」

「だめー」

「たはー、ふられちった。じゃあ、いつかまた会おうし」

「うん」


 ばさりと翼を広げ、ルヴィエラとラードニアが飛び立っていく。


「じゃあ、私たちはどうしようか」

「念のために言っておくが、僕たちは天界には戻れないからね。人間界で迷子になっているクレアとアリアも」


 腕を組んで、悩む素振りを見せるルフィア。


「クレアは心配いらないよ。少し前に再会して集合場所は決めているからね。アリアを見つけたらそこに来るように言ってあるよ」

「なるほど、それなら心配いらないか。それと、1つ頼みがあるんだが、僕に人間界での生き方を教えてくれないか」

「人間界の大先輩である私が親切丁寧に教えてあげる」

「ははっ、期待しているよセンパイ」


 ふふっと笑うルフィア。


「じゃあ、とりあえずギルドハウスに帰ろうか。サツキの美味しいごはんが食べたいな」

「私もお腹ぺこぺこだよ」

「今日はおかわりしまくるですよ」

「ふふふ、完璧で究極のメイドの本気を見せますよ。今日の夕飯は超スーパーメイドデラックスハンバーグです」


 腰に手を当て、どや顔を浮かべるサツキ。


「楽しみだな」


 ルフィアを抜いて、色彩の集いのメンバーは4人しかいないはず。

 しかし、5人目の声。


「……えっ?」

「なんだ、その顔は? 超スーパーメイドデラックスハンバーグとやらを私も食べたいぞ?」


 きょとんとした表情で、首を傾げるルーシェリア。


「ええっと、封絶牢獄には戻らないの?」

「バカ言うな。2度とあんな場所には戻らん。と、いうか、戻れん。アメルが私の封印を全解除してしまったからな。晴れて自由の身だ。と、いうわけでアメル、今日からおまえは私の主人だ」

「「「「……えっ」」」」


 ルーシェリアの言葉に、この場にいる全員が間抜けな声を出してしまう。


「私を使い魔にするメリットは多いぞ。私は強い。シーヴァルカの邪魔さえなければ、あのブラシュアを殺せたのだから」

「「「「……」」」」


 黙り込む私たち。


「私は美人だ。強くて美人な使い魔がいて損は無いだろう。美の女神スヴィーナにも引けを取らん」


 えっへんと、ふんぞりかえるルーシェリア。


「ちょっっっっとまって!? 本気で言ってる!? 神界最強の魔神ルーシェリアが人間の使い魔になるって!?」

「悪いか?」

「んうぅぅわるくぅはないけど……いろいろさあ、立場がさあ、ねえ、あるでしょう?」

「そんなものは封絶牢獄の中で捨てた!!」

「ええ……」


 ズバッと言い切るルーシェリアに、私は言い返すことができなかった。


「まあ、いいんじゃない?」

「軽い!!」

「さすがだなアメル。念のために言っておくが、私の契約を断れば世界を滅ぼす」

「脅迫じゃん!!」

「私は強いからな。わがままを言う権利がある。さあ、ギルドハウスとやらに帰ろう。そして、超スーパーメイドデラックスハンバーグを食べよう」

「もう、どうにでもなれ……」


 どうにもならないので、私は諦めることにした。

 本日、世界の均衡が崩れ去った。そして、私たちは最強になった。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!


戦いが終わり、平和が訪れました。

キリがいいので一旦ここで完結とさせていただきます。


私の作品を応援してくださった読者の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。


次回作でもよろしくお願いします。


牧田ゆんも

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― 新着の感想 ―
一気に122話まで読み切りましたがとても面白かったです。 二部も頑張って書いてください
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