『封絶の巫女』
「ワタシの負けです。煮るなり焼くなりどうとでもしてください」
『封天ノ鎖』で拘束されたことにより、戦意喪失したカレイアはぺたんと座り込む。
ルーシェリアにより重傷を負わされているが、そこにいるのは熾天使カレイア。身体を拘束していたとしても油断は許されない。
カレイアが不審な行動をすれば、隣にいるアズリオンとルーワカが即座に無力化することになっている。
「そんなことはしないよ。私はただ話がしたいだけなんだ」
「こちらに来ないでください。姿を見るだけで反吐が出ます」
「……」
カレンではないとしても――
親友に拒絶され、心を抉られるような感覚。
「アズリオン、ひとついいですか」
「なんだ」
「カレイアはともかく、ルーシェリアはなんでアメルのことを知っているんですか。さっきもクラウィスって言ってやがったですし」
「あの時代ともなれば、さすがの貴様でも知らないか。クラウィスというのは創造神ブラシュアにより封絶牢獄の門番を任せられていた巫女の一族だ」
「……は?」
アズリオンの発言に、エーテルノはポカンと口を開ける。
「神の戦争に巻き込まれて行方不明となっていたらしいが……戦火を逃れるために人間界へと移り住んでいたとは」
「何かあるとは思っていたですが……まさかここまでとは」
エーテルノが苦笑を浮かべていると、ルーシェリアが会話に入ってくる。
「驚くのはまだ早いぞ虹色娘。実はそこのアメルとかいう少女。初代巫女のイルティア=クラウィスとそっくりなんだ。さすがの私でも驚いた」
「マジですか」
「同一人物かと思うくらいには……神どもが見れば皆が驚くだろうな」
「ははっ……」
苦笑するエーテルノ。
「カレイアちゃん……で、いいのかな。教えてほしい、私はあなたに家名を名乗ったことはないのに、どうしてクラウィスって分かったの」
「その顔、その声、そして、その神開魔法。忘れようにも忘れられない。やはり殺しておくべきだった。貴方さえ、クラウィスの巫女さえいなければ……あら、もう時間切れですか。結構無理していますね私」
「ひっ」
憎悪のこもった眼差しで睨みつけられ、アメルは思わずビクッと身体を震わせてしまう。
「魔神ルーシェリアを解き放ったことで、貴方の存在は神々に知られてしまったでしょう。これから気を付けることです。貴方を利用しようとする者や存在を抹消しようとする者が確実に現れるでしょう。では、また会うことがあれば」
「まって――」
静かに目を閉じて、倒れるカレイア。
「……これで、終わったですか」
動かなくなったカレイアを見て、ぽつりと呟くエーテルノ。
「安心するといい、焔神の気配は消えた」
「「「「ふううぅぅぅぅぅぅ……」」」」
ルーシェリアのひとことに――
緊張が解けたのか、アズリオンとルーシェリア以外の者たちがぺたんと座り込む。
「あはひひふふへっへっ、生命のストック無し。こーわかったこわかった。ふつーあんなふうになるとは思わないじゃんうひゃあぁぁ。全ての元凶の私が言えることじゃないけど、あんなバケモン相手によく生き残ったわうひぃぃ」
「ホントですよこのクソトカゲ。てめえが魔界侵攻とか考えなければこんなこと起こらなかったんですよバカタレ」
「すいません」
エーテルノにドスの効いた声で言われ、土下座するルヴィエラ。
「貴様のせいで魔界は壊滅状態だ。この大馬鹿者。状況が状況で仕方なく無かったことにしてやったのでこれ以上責めはできんが……しかし、復興の支援くらいはしてもらうぞ、ルヴィエラ」
「はい……」
土下座したまま、小さく返事するルヴィエラ。
「最初の劫火でどれだけの被害が出たか……はあ、貴様等これから忙しくなるぞ。仕事が山積みだ。それと、魔王城も建て直さねば。ルーワカ、魔力回復したら頼んでいいか」
「わかりました」
アズリオンに頼まれ――
ルーワカがこくりと頷いた時、今まで倒れていた銀色の少女が目を開く。
「……やっと、身体の主導権を取り戻せた」
ぽつりと呟き、銀色の少女がゆっくりと起き上がろうとする。
「「カレ――」」
「アメル、サツキ、待つですよ。起き上がる前に質問を1つだけするですよ。今のてめえは誰ですか。カレイアですかそれともカレンですか」
駆け寄ろうとしたアメルとサツキを制止させるエーテルノ。
エーテルノの言葉に、銀色の少女はポカンと口を開ける。そして――なるほど、そういうことか、と。
全員の視線を浴びながら、銀色の少女は黄金に輝く天輪と3対6枚の白翼を顕現させて言うのだった。
「カレンに決まってるじゃん。みんな迷惑かけたね。ごめん」
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
戦いが終わりましたね。
魔界の被害は大きく、最上位悪魔たちは大忙しでしょう。
カレイアの言葉。
神界にアメルの存在が知られてしまったと。
さあ、これからどうなってしまうのか。




