『私が行く』
「はあ、はあ、なんだ今の……ほんの一瞬で、あたしたちを全滅させやがった」
ルヴィエラは息を切らしながら、くるんくるんと聖槍アルジェーレを回転させるカレイアを睨みつける。
8体のルヴィエラが瞬殺され、生き残ったのは本体だけである。本体と分裂体の実力はほとんど変わらず、最後方にいたおかげで生き残ることができた。
「カレっちひどくね? あたしたちのことなんかお構いなしにぶっぱなしたよ? アルバティンがいなかったら全滅してたくね?」
「間違いなく、全員黒焦げになっていたわね。しっかし、許せないわ。アメルちゃんたちがいるのに魔法を使うなんて……冒険者同士の殺し合いは規則違反。冒険者カード剥奪よ。目撃者がアタシでよかったわねアホ天使」
「ティアレやラードニアと戦った時とは違い、私とアメルのことも殺そうとしました。色彩の集いルール1『ギルドメンバー同士の殺し合い禁止』に違反しています。ルールに則り、カレンがごめんなさいを言うまでボコボコにします」
指をポキポキ鳴らし、戦闘態勢に入るサツキ。
「いや、それができたら苦労しないわよ。あのルヴィエラすら手も足も出ないのよ」
「天界からソフィエルを拉致してくるか。あいつの鎖ならカレイアの魔法を無力化できるのだろう。アルバティンと誰かで天界へ行き――」
「魔王様、アルバティンちゃんが1秒でもいなくなったら全滅するわ」
「くそ……」
ルーワカに言われ、軽く舌打ちするアズリオン。
そんな時、エーテルノがぽつりと呟く。
「あるですよ」
その発言に――
全員の視線が、エーテルノに集中する。
「「あっ……」」
大事なことを思い出したのか、アメルの方に振り返るサツキとアルンフィード。
サツキとアルンフィードの反応を見て、ルーワカが口を開く。
「どういうことかしら、エーテルノちゃん」
「ははーん、そういうことだったですか。カレンがこの戦いにアメルを連れて行きたかったわけがやっとわかったですよ。アメル、リュックからアレを出すですよ」
「うん」
リュックから、ごそごそと何かを探し出すアメル。
そして、黄金色の鎖を取り出した。
「「「『封天ノ鎖』!!」」」
最上位悪魔たちが声を上げた瞬間、カレイアの魔力圧が上昇する。
「――『神銀ノ天舞』」
銀色の焔で生成された巨大竜巻が、魔界陣営の者たちに襲い掛かる。
ルヴィエラとの戦いでカレイアが作り出した巨大竜巻よりも大きさは倍以上あるだろう。
「へへっ、あの焦り様。効くですよコレ絶対」
「それで、これをどうやってカレイアに巻き付けるんだ。近づくことすら不可能だぞ」
にやにやと笑うエーテルノに、アズリオンが質問する。
「そりゃあ、アルバティンがちょちょいとやりゃあいいですよ」
「無理。転移直後の一瞬を狙われて殺される」
「えっ」
アルバティンの言葉に、ぴたりと動きを止めるエーテルノ。
「あと、正直そろそろきつい。運ぶ人数が多ければ多いほど魔力消費が激しい。頑張ってあと1~2回」
「「「えっ」」」
魔界陣営の者たちを白い魔法陣が包み込み、1回目の空間転移が行われる。
転移可能回数は、残り1回。
「おい、どうするし魔王。勝ち目ゼロだし。逃げたほうがいいし」
「それはできん。封印の影響で弱体化している今しか勝ち目は無い。時間を与えてしまえば調子を取り戻してしまい、いよいよ手が付けられなくなる」
「いや、今の時点でも手が付けられねえし。てか、あれで弱体化してんの」
「魔法を連発してこないからな。破壊神シーヴァルカとの戦闘時は毎秒ごとに魔法をぶっぱなしていた。破壊神シーヴァルカも少し困っていたな」
「おかしいだろ……って、やばいし!! 魔法が来るし!!」
悲鳴を上げるラードニア。
右手を構え、魔法を撃ち出そうとするカレイア。
「少しくらい時間稼ぎになればと思ってさっきから時間魔法を使っているけれど、銀色の焔を纏っているせいで魔法が消されてしまうわ。あの焔さえなければいいんだけど」
悔しそうな表情を浮かべるルーワカ。
エーテルノは少し悩む素振りを見せると、アルンフィードの方に振り返る。
「ちょんぱ娘、その妖刀は魔法を無効化できるんですよね。どうにかなんねえですか」
「身体能力もバケモノでしょアレ。聖槍アルジェーレでぐちゃぐちゃにされるのがオチだよ。テルルンこそ死なないんでしょ。どうにかしてよ」
「バカ言うんじゃねえですよ。フェニックスの血もろとも燃やし尽くされるですよ」
「「どーしよ……」」
半泣きの状態で抱き合うエーテルノとアルンフィード。
魔法は全て無効化され、身体能力でも敵わない。勝率は皆無だと。待つのは死のみと。この場にいる者たちが諦めようとした。
――ただ1人を除いて。
「大丈夫、私が行く」
黄金色の鎖を握り締め、桜色の少女が歩き出す。
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