『天銀の覚醒』
『天銀ノ裁秤』
左に傾くと全ての魔法が使えなくなる。右に傾くと世界が滅ぶ。
「カレン……?」
口から血を垂らしたアメルが、彼女の名を呼ぶ。
その声に反応するように、目を閉じた状態のカレイアが指先を動かす。
「こ、こいつ――」
カレイアの指先が動いたことに気づき――
始剣テリエーラを振り下ろそうとした瞬間、カレイアを中心に凄まじい魔力圧が発生した。
「「「「っ!?」」」」
魔力感知を行える全ての存在が、魔力圧の発生源に視線を吸い込まれる。
魔力圧はぐんぐんと上昇を続け、止まることを知らない。
「な、なにこれ、カレっちの魔力?」
「い、いけない……こ、この魔力、あの時と同じ……エ、エンデヴェーク決戦の時と同じだわ……」
驚愕するラードニアと、声を震わせるルーワカ。
カレイアの魔力圧によって、世界の終わりを告げるかのような大地震が起きた。
空は赤く染まり、地は割れる。
「まずい」
9体のルヴィエラたちは未来予知をしたのか、凄まじい速度でカレイアから距離を取る。
尋常ではない焦り様。
「この勝負、魔界の勝ちだな。早々に食っておかなかったのが貴様の敗因だ」
「お、おまえ……!! この変化がなにか知っているのか……!!」
意識を取り戻したアズリオンの首元に剣先を突きつけ、カレイアの変化についての説明を求めるルヴィエラ。
「自分の目で確かめるんだな。こうなればもう我々には止められん。あの時も奴の介入がなければ魔界は滅んでいた」
「おまえ……!!」
「ふふ、殺すなら殺せ」
「ちっ、くそが!!」
「ぐへ」
アズリオンの態度に腹が立ったのか、乱暴に蹴り飛ばすルヴィエラ。
「カ、カレン、生きてたんだ……熱いッ!!」
カレイアの身体に、魔力感知のできないアメルが触れようとした瞬間――
カレイアの全身を銀色の焔が包み込む。
「アルバティン!! アメルとサツキを急いでカレイアから離れさせるですよ!! あの焔はカレイアの焔じゃねえですよ!! 少しでも掠ったら死ぬ!! あと、私の胴体の回収も頼むですよ!!」
「わかった!!」
エーテルノに言われ、アルバティンは空間転移でアメルとサツキを回収する。
「カレンの焔は、私たちには効かないはず――」
「敵と見做した者にしか――」
「あいつはカレンでもカレイアでもねえですよ。ルーワカ、てめえならアレがなんだか知ってんじゃねえですか」
魔界陣営の者たちが、一カ所に集まる。
両目の修復を終えたルーワカが、ゆっくりと目を開けた。
「私も詳しくは知らないけれど……あのカレイアちゃんは、神すらも凌駕するほどの力を持っているわ。過去に一度あのカレイアちゃんを見たことがあるの。3界戦争の最終局面、エンデヴェークという都市で私とアルバティンちゃんと魔王様の3人が、カレイアちゃんと殺し合いをした時。あっ、アメルちゃんたちの怪我を治してあげるわね」
「ありがとう」
「わりいですよ」
「ありがとうございます」
ルーワカの時間魔法で怪我を治してもらえることになり、お礼を言うアメルとエーテルノとサツキ。
「それで、勝敗は」
「私たちが勝利したはずだった。あの時、魔王様の神剣アズルゲイアが確実にカレイアちゃんの心臓を貫いた。首を切り落としてとどめも刺した」
「とどめまで刺しておいて、はずだったってのは」
「とどめを刺して数分経った時、銀色の天秤がどこからともなく現れて……右に傾いた後、銀色の焔がカレイアちゃんの全身を包み込んだわ」
「まさに今と同じ……じゃねえですか。そして、どうなったですよ」
「そして――」
そう、ルーワカが言いかけた時――
サツキとエーテルノの魔力感知に異常が発生した。
「カレンの魔力が消えました」
「私もですよ……さっきまで感じていたのに……待つですよ、ルーワカは今、カレイアの魔力を感じられるですか」
「ええ」
「私とサツキだけが魔力を感じ取ることができねえって……まさか」
エーテルノが気づきかけた時、銀色の焔の中で立ち上がる少女の姿。
ゆらり、ゆらりと、焔の中から歩いてくる。
「魔王様、撤退の許可を」
「動くなよ。動いたやつから殺される。カレイアのやつ、エンデヴェークの時よりも成長していないか」
銀色の焔を纏った、銀髪の少女。
紅色の目には天秤の紋章が刻まれており、銀色の焔によって天輪と翼が生成されている。
銀色のドレスを纏いし彼女の姿は、まさに神の如き美しさ。
「……綺麗」
アメルが、ぽつりと呟く。
アメルの声が耳に入ったのか、カレイアの視線が向けられる。
「面白い光景が広がっていますね。人間と悪魔と竜が魔界に揃っています」
にっこりと笑うカレイア。
「あれ、そこまでやばくない? 殺気をまったく感じないよ?」
「口を閉じなさい。アルンフィードちゃん」
「ルカ姉、顔怖い」
ルーワカに注意され、黙るアルンフィード。
そんな時、1体のルヴィエラがカレイアに近づいていく。
「おまえ、生きてたのかよ。なんか見た目も変わっちゃってさあ。あのままおとなしく寝ておけばよかったのに――」
「愚かですね」
カレイアがふふっと笑い、指をぱちんと鳴らすと――
ルヴィエラの悲鳴が響き渡る。
「あああああああああああああっ!!!!」
一瞬の出来事だった。
銀色の焔が、ルヴィエラの身体を塵も残さず焼き尽くしたのである。
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