『傾く天秤』
9体のルヴィエラが、それぞれ殺害対象を決定した。
アルバティンに3体。ラードニアに1体。ルーワカに1体。サレヴィアに1体。アルンフィードに1体。エーテルノに1体。サツキとアメルに1体。ルヴィエラの本体は、気絶しているアズリオンを見張りについている。
「自分が何体もいると便利だわ。殺すのがらくちん。この魔法、天竜戦争の時に上位天使を食って使えるようになったんだよね、超便利」
3体のルヴィエラに囲まれ、アルバティンは汗を垂らしている。
空間転移が可能で、1体だけでは殺すのに時間が掛かるとルヴィエラは判断したのだろう。
「いくら空間転移が使えても、3体に囲まれたら長くは持たない。魔力切れでゲームオーバーになる」
「ルーワカを潰した今、おまえが一番厄介だからね」
「卑怯者……」
「殺し合いに卑怯もクソもないよ」
2体のルヴィエラが放った劫火を空間転移で躱すアルバティン。
しかし、転移直後の一瞬の隙を狙って、残る1体のルヴィエラが始剣テリエーラで斬りつける。
「あぐっ……」
鮮血が舞う。
前方からの斬りつけは躱したが、背中を斬られてしまった。
「アルルン!!」
「あたしを相手に余所見なんて度胸あるじゃん」
「くっ……」
アルンフィードは助けに行こうとするが、ルヴィエラに邪魔されてしまう。
妖刀月夜見と始剣テリエーラ。夜を司る神と始まりを司る神が生み出したとされる伝説の武器同士がぶつかりあう。
「その妖刀は確かに強い。しかし、あたしの炎は魔法じゃない」
「あちちちっ……サレちゃんお助けくだせえ」
「お助けくだせえはアタシのセリフよ。最上位悪魔の中で一番弱いアタシを1人にするんじゃないわよ。こいつが遊ぶのをやめたら死ぬわぐっ……」
「サレちゃん……!! く、くそ……!! そこをどけよクソバカドラゴン……!!」
「どいてほしいならあたしを倒したらいい」
「できないから言ってるんだ!!」
ルヴィエラはわざと浅く斬り付け、サレヴィアをいたぶっている。
「ルーワカ、傷の回復まで後どれくらいかかる」
「40秒は欲しい」
「10秒でなんとかして」
「無理」
ルヴィエラ2体から、傷を負いながらもなんとかルーワカを守っているラードニア。
「未来が見えるやつに光速特攻は使えないし……それよりも、サツキンとアメルンがやばい。助けに行きたいけど、ルーワカを守らないと……テルルン!! どうにかできないかな!!」
「テルルンって私のことですか!! 無茶を言うなですよ!! たった今首ちょんぱされちったですよ!! 頭が転がって目が回るですよ!!」
「どこ行くの!!」
ルヴィエラにより首を切断されてしまったエーテルノが転がっていくのを見て、ラードニアが発狂する。
「クソやべえですよ。サツキとアメルじゃあ天地がひっくり返っても勝てねえですよ」
「……」
カレイアを抱きかかえ、ルヴィエラを睨みつけるアメル。
アメルとカレイアを守るように、魔剣ドラゴスティアのレプリカを構えるサツキ。
涙を浮かべ、全身を震わせている。
「滅竜魔導士が聞いて呆れる」
「……」
「ユズキの子孫っていうからどんなものかと思ったけど、まるで大したことない」
「……」
「黙ってないで何か言ったらどうかなぁ!!」
「かはっ……」
軽く振るわれた始剣テリエーラを、サツキはなんとか受け止めようとする。
しかし、実力が違いすぎた。魔剣ドラゴスティアのレプリカごと勢いよく後方に吹き飛ばされてしまう。
「今の一振り、ものすっごい手加減したよ」
「御冗談を……」
「ほんとだよ。ユズキなら、あの一振りを躱してあたしに反撃の一太刀を入れるくらい朝飯前だよ。この傷なんかまさしくそう」
ルヴィエラはひらりと服をめくると、脇腹に刻まれた傷跡をサツキに見せつける。
「私の御先祖様が……」
「ユズキは強かったな。魔剣ドラゴスティアを覚醒させる前からあたしとまともにやりあえていたもん。しかし、おまえは違う」
「……」
「クソ雑魚がその剣を握っているのを見るだけで、怒りが抑えきれなくなる。そういうわけだから、その剣を離してくんない」
サツキの視界から、魔剣ドラゴスティアのレプリカが消える。
その直後、ぐちゃりという音とカランカランという音が足元から聞こえてきた。
――そして、気づく。
両腕が斬り落とされていることに。
ぽたぽたと落ちる血液。
「ああああああああああああっ!!!!」
「サツキちゃん!!」
悲鳴を上げるサツキ。
地にうずくまるサツキを守るように、ルヴィエラの前に立ちはだかるアメル。
「神の召喚魔導士か」
「カレンとサツキちゃんは私が守る」
「魔力すっからかんでどうするつもりだよ。できもしないことを言うなよ腹立つから」
「げはっ!!」
腹部に拳を打ち込まれ、よだれを垂らしながら膝から崩れ落ちるアメル。
「弱い」
「ぎゃふん!!」
顎を蹴り上げられ、宙を舞うアメル。
そのまま地面に落ちるが、なんとか意識を保ちルヴィエラを睨みつける。
「その目、イラっとくるなぁ」
「カ、レンと、サツ、キちゃ、んは私が、ま、もる」
「よし、決めた。こいつから殺そう。目の前で殺したほうがユズキの子孫も絶望するだろ」
始剣テリエーラを抜き、ゆっくりと構えるルヴィエラ。
「やめて!! ルーちゃん!!」
「裏切り者の言葉なんて聞こえない。おまえも見たらいいよ。こいつが死ぬところ」
「ルーちゃん!!!!」
ラードニアは光速特攻をしようとするが、別のルヴィエラに行く手を塞がれてしまう。
「未来予知しなくても、ユズキの子孫が絶望する顔が見える見える。きゃはは、たっのしーい……な?」
勢いよく振り下ろされた始剣テリエーラが、アメルの首ギリギリのところで動きを止めた。
その理由は、アメルの後ろにある。
「なにが……」
「あれ、は……カレンの『天銀ノ裁秤』ですか……?」
カレイアの心臓から、銀色の天秤が現れたのである。
ふわふわと浮いており、水平を保っている。
「嫌な予感が……」
嫌な予感がしたのか、未来予知を行うルヴィエラ。
その瞬間、顔色が変わる。
――カコン。
銀色の天秤が、右に傾いた。
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天銀ノ裁秤
左に傾くと魔法が使えなくなる。
右に傾くと。
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