『セクハラされたので、神様を殴っちゃいました』
初連載です。
よろしくお願いします。
私はカレイア。
天界を守護する熾天使です。
天界における序列は、絶対神ハレス様とソフィエルに次ぐ第3位。
戦闘能力は私のほうが圧倒的に上ですが、ソフィエルはハレス様のお気に入りなので戦闘能力の高さにかかわらず序列は3位となっています。
私の趣味は美味しい料理を食べることです。
天使は空気中に含まれる魔粒子を生命力に変換することができるので食事を取る必要がありません。
そのせいで仲間から変な趣味だと言われていますが、私は正常だと思っています。
天界には娯楽が少なく、美味しい物でも食べていないと日頃のストレスで堕天不可避。
ただでさえハレス様からの天使に対するセクハラ行為が絶えないというのに。
人間が羨ましいです。
人間は冒険者になって世界中を冒険したり美味しいものを食べたりライバルと力を競いあったりして毎日の生活が充実しています。
それに比べて、天使は意味のない戦闘訓練しかすることがなく3000年前に天界・魔界・竜界――3界で休戦協定が結ばれてから戦争の兆しはありません。
退屈です。凄くイライラします。
もし今の乱れた精神状態でハレス様からセクハラを受けてしまえば確実に殴ってしまいます。
お願いですから今だけは姿を現さないでください。神殺しとか洒落にならないので。
「でゅふふふふふふふふふ!! 今日の僕ちゃんラッキー!! こんなところでカレイアちゅわんを発見しちゃうなんて!!!」
「げっ」
嘘だと言ってほしい。
ストレスしかない戦闘訓練が終わり、温泉で疲れた身体と心を休ませようと思っていたら運悪くハレス様と出会ってしまった。
ぽよんぽよんと脂肪の蓄えられた腹を揺らしながら私に駆け寄ってくる。
「カレイアちゅわん、着替えなんか持ってどこ行くんでちゅか? もしかして温泉でちゅ? でゅふふふふふふふふ!! ちょうど僕ちゃんも温泉に行くところだったんでちゅ!! おほほ!! そうだ、僕ちゃん良いこと思いついたでちゅ!! カレイアちゅわん、僕ちゃんの身体を隅々まで洗って――」
「毎回毎回きもっちわりぃんだよこの膨張肉ダルマがああああぁぁっ!!!!」
「あびょろぶきょはびあああああああああああああああああああああああっ!!!!」
苛立ちを抑えきれなかった私は、本気でハレス様の顔面を殴り飛ばしてしまった。
しっかりと踏み込んで、体重を乗せて拳を撃ち出した。我ながら素晴らしいフォームである。
激しく回転しながら宙を舞うハレス様の身体。
数秒後、凄い音を立てながら地面に落ちると、近くにいた天使兵たちが騒ぎ出した。
「きゃああああっ!! カレイア様がハレス様を殴りましたわ!!」
「うひゃあ、鼻の骨が折れてますわ……」
「しゃおらァ、カレイア様ナイス……じゃなくて、血迷ったのですか!? 我々天使が絶対神であるハレス様に危害を加えるなど!!」
最後に喋った青髪の天使、本音が漏れているよ。
現在のハレス様は――鼻は折れ、歯は抜け、顔は血塗れ。酷い有様である。
念のために私が生死を確認していると、騒ぎを聞きつけたソフィエルが飛んできた。
膝まで伸びた黒髪ストレート。黒曜石を連想させる黒色の瞳。天界の序列2位――『天鎖』ソフィエルである。
「貴様等、何事だ!! 誇り高き天使とあろう者が騒いで……なんだ、そこで転がっているボロ雑巾は……まて、ハレス様ァ!?」
ボロ雑巾みたいな姿をしているハレス様を見て、ソフィエルが発狂した。
「もぴ、もぴぴ……」
「しっかりしてください!! ハレス様!! 何があったのですか!? その酷い怪我は!?」
「……カ、カレイアにやられた」
ソフィエルに身体を揺らされる中、ハレス様が震える右手で私を指差した。
「カレイア!! 貴様がハレス様を……このような、このような醜いボロ雑巾のようにしたのか!!」
「おまえ、どさくさに紛れて僕ちゃんの悪口言ってない?」
「集まれ皆の者!! ワタシが魔法を封じている間、全員で協力して反逆者カレイアを拘束しろ!! 序列関係は気にするな!! ソフィエルが許可する!!」
「「「「御意」」」
ソフィエルの声を聞きつけた天使兵たちが襲い掛かってきた。
数は不明。たくさん。なんとか30まで頑張ったけど、多すぎて数え切れません。
「くそ……」
黄金色の鎖が、私の左腕に巻き付く。
量産型の天使如き、私の魔法――『銀ノ焔』なら瞬殺は容易。
しかし、ソフィエルから『封天ノ鎖』で妨害を受けているので魔法を撃つことができない。
『封天ノ鎖』は対天使に特化した魔法で、鎖に縛られると力が抜けてしまい魔法はおろか身体を自由に動かすことすら難しくなってしまう。
「カレイア様!! 覚悟してください!!」
「じゅるり、まさか憧れのカレイア様の身体に触れることができるなんて私は幸せですわ!!」
もみくちゃになっていると、紫色の髪をした天使が服の中に手を入れてきた。
触り方が手慣れており、とんでもなく気持ち悪い。
「こら!! 嫌らしい手付きで私の服に手を入れるな!! どこの部隊だ!! 君の顔覚えたからな!!」
「顔だけではなく、名前も覚えてください!! 私の名前はルリルア!! ルフィア隊所属の天使兵ですわ!!」
「どさくさに紛れて抱きつくな……まて、よくやった!! 君のおかげで『封天ノ鎖』が緩んだ!!」
私は抱きつく変態天使――ルリルアを振り払うと、身体をくねらせて『封天ノ鎖』から抜け出した。
それから3対6枚の白翼を広げると、天高く飛び上がる。
「ワタシの『封天ノ鎖』が突破された!? 皆の者、追いかけろ!!」
「「「「御意」」」」
「その必要はないでちゅ」
ソフィエルが天使兵に指示を出した直後、治癒魔法を使える天使兵に傷を治されて復活したハレス様が口を開いた。
「必要ないとは……?」
「僕ちゃんに逆らう天使なんて、いらないでちゅ」
首を傾げるソフィエルに、ハレス様は冷たく告げると私に向かって右手を伸ばした。
その直後、私の身体が鉛のように重くなる。
「身体が重い……!!」
「天使のくせに、絶対神である僕ちゃんに逆らいやがってえ!! 創造神のお気に入りだというから大目に見ていたが、もう我慢できないでちゅ!! 反逆者カレイア!! おまえなんか死んでしまうでちゅ!!」
「うぐ……」
身体の重さに耐えきれず、私は地面に落ちてしまう。
勢いよく叩きつけられ、私が激しく咳き込んでいると、追い打ちが飛んできた。
「僕ちゃんを舐めやがって!!」
落下した私の脇腹を、ハレス様が何度も蹴りつけてくる。
脇腹を蹴られる度に、鈍い音が響き渡る。
このまま蹴り殺されるわけにもいかないので、私は反撃に出ることにした。
「やらせておけば……」
「おっと、魔法は使わせんぞ……?」
私が『銀ノ焔』を起動させようとした瞬間、ソフィエルの『封天ノ鎖』によって阻止されてしまった。
「ソフィエル……」
「ふん、芋虫みたいに這いおって。惨めだなカレイア」
全身に巻き付く、黄金色の鎖。
魔法を使えないどころか、手足すら動かせない。
「ふう、そろそろ蹴るのも飽きてきたし、もう殺そうでちゅ。ソフィエル、断頭台の準備をするでちゅ」
「ハレス様、それは避けるべきかと。カレイアは創造神のお気に入り。我々が殺しては問題になるかもしれません」
「それなら、どうするでちゅ?」
「簡単です。事故に見せかけるのです。カレイアは『封天ノ鎖』で魔法どころか手足すらも動かせません。その状態で人間界に落としたら転落事故として処理できます」
「名案でちゅ」
待ってほしい。
転落死した熾天使とか、死後も笑い物じゃないか。断頭台で首を切られるほうが幸せなんだけど。
「そういうわけで、おまえには死んでもらうでちゅ」
「待って、真面目に転落死とかさせちゃうわけ!? お願いだから断頭台にして――」
「消え失せるでちゅ」
ハレス様――いや、ハレスが口を開いた直後である。
黄金の鎖に拘束された状態で、私は空に放り出されていた。
周囲には何も無く、視界に入るのは青空だけである。どうやら私は神の権限で空間転移させられたらしい。
「手足すら動かせないだろう!! そのまま人間界に落下して死んでしまえ!! 天使の面汚しが!!』
ハレスの怒声が脳内に響いてきた。
普段の気持ち悪い口調は消えており、どうやら本気で怒っているらしい。
アホみたいな顔をしているが、あれでも創造神から天界の統治を任された絶対神である。
よく考えたら弱いわけがない。完全に油断していた。
熾天使が転落死って、確かに死んだ後も笑いものですよね。拘束されて大空に投げ出されたカレイアはどうなってしまうのでしょうか。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
みなさんに楽しんでいただけることが、執筆活動の原動力になっております!!
これからもよろしくお願いします!!




