貴族は未婚の男女の一対一は許さない
俺はプリンシアを抱き締めながら彼女の幼気さに愛情が増すばかりであり、きっと妹がいればこんな感じなのだろうと彼女の頭を撫でていた。
プリンシアはミーアのようにして俺にしがみ付き、ミーアが寒さに震えながら俺にぴったりと貼り付いたときのように、彼女は微かに震えていた。
違うのは、彼女は寒さに震えているのではなく、声を殺して泣いているのだ。
「うわーんって、泣いてもいいよ。俺は子供に嫌われるタイプだからね。親戚のどの子も俺を見りゃ、うわーんと泣いて逃げるばかりだ。慰めるってしてみたかったんだ。」
そうだ、君を慰めてこのままずっと撫でていたい、気もする。
俺の腕の中の灰色猫はふたたび震えた。
今度はくすくす笑いに変わっていて、俺は自分が誰かを慰められた事が嬉しいと彼女をさらに抱きしめていた。
「絶対に素晴らしい相手に嫁がせてやる。安心していいよ。」
俺は胸に強い衝撃を受け、クローゼットの床に背中をうち付けていた。
俺を見下ろすのは仁王立ちになったプリンシアだ。
「プリン?」
「明日からはシャンタルの家に行きます!結局追い出すのね!気持よく追い出したいから優しくするだけなのね!」
プリンシアは踵を返して俺の前から逃げようとしたが、俺が敵兵の逃亡を見逃すわけは無い。
彼女は敵兵ではなく防衛目標そのものなのだが。
部屋の真ん中に行く前には彼女の腰を抱いて彼女を捕まえ、そして、俺から逃げようと暴れる彼女を床に落とすよりはと、すぐそばに控えているベッドに放り投げた。
「きゃあ!」
「怪我はないか?あんまり暴れないでくれ。俺は話し合いがしたいだけなんだ。」
「そうですね。結婚の日取りを今すぐ決めた方が良さそうです。」
俺のベッドに転がるプリンシアに俺が覆いかぶさるという状況だ。
執事の冷静な物言いは、俺の頭を冷静にした。
「フォルマン、そうだな、これは無体な行動すぎた。すまない、プリン。俺は君をこの屋敷から追い出す気持ちは無いと伝えたかっただけなんだ。君が幸せをつかむ相手を見つけるまでね、好きなだけ居座ってもいいんだよ。」
「では、旦那様こそ責任をお取りください。」
「いや、だからさ、フォルマン!」
俺はようやく執事に向き直り、執事の後ろにニヤニヤ顔のプリン親衛隊がずらりと勢ぞろいしていた事実を知ることとなった。




