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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第七章 魔界進行作戦
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05 魔王城の隠し通路

            ◆


 ターミヤさん達との合流を果たし、休息を含めた作戦会議に費やす事、三日。

 いよいよ僕達は、大魔王ギストルナーダが待ち受ける魔界へと進行を開始した!


 さて、一口に魔界といっても、例えばこの世界とは別の次元にあるとか、そういう事はない。

 いわゆる、『邪神への信仰が蔓延る、魔族の支配領域』が魔界と呼ばれる地域だ。

 そこでは、僕達のような人間や一部の獣人族、さらにはドワーフやエルフなんかも奴隷として扱われているらしい。

 しかし、邪神への信奉者へと転身すれば、それなりの地位を築く事も可能なんだとか。

 前に僕達が戦った、『邪神教団』の連中なんかが、そのいい例だろう。 


 そんな奴等の懐に飛び込もうというのだから、こちらもちゃんと策を練らなきゃならない。

 だから、まず僕達は魔界にもっとも近い味方サイドの国……獣人王国を目指した。


「ワタクシ、戦闘面ではお役に立てないので、先触れの使者としてお父さま達に協力をこぎ着けてまいりますの!」

 そう言って、数日前にシェロンちゃんが獣人王国へ向かっていたので、僕達が到着する頃には様々なバックアップの態勢が整っているはずだ。

 まぁ、シェロンちゃんの言葉だけだと少し心配だけど、今回はルドさんの名前も連名で協力を要請してるから、たぶん大丈夫だろう。

 そうして、後方からの支援を完全な物として、皆には動いてもらう手はずだ。


 ──ちなみに、援助要請にディセルさんの名前を連ねなかったのは、わざとである。

 本来なら、大一番の作戦を支える根底なり得るだけに、彼女の名もあった方がよかったのかもしれない。

 だけど、前の獣人王国であった戦いの後、半分は容認されつつも、再びディセルさんは国を飛び出してしまった。

 それもこれも、獣人王国奪還の前に、僕と交わした約束……『結婚』があったからだ!

 ──まぁ、まだ具体的な話は決まっていないんだけどね……。


            ◆


 実は一度、二人の結婚式なんかについて、いつものように添い寝してきたディセルさんと話した事はある。

 その時に聞いた話では、獣人族はそんなに派手な結婚式などは行わず、ごく親したしい者達……だいたいが身内だけで婚姻の式を終えるそうだ。


「まぁ、私は出奔した身だし、マーシェリーやロロッサ達に見届けてもらえれば、それで構わないよ。人間界でよくある、派手な婚姻の儀式には、ちょっと慣れないしね」

 そう言って、僕を撫でていたディセルさんだったけど、「ただ……」と呟いて、こちらをジッと見つめてきた。

「結婚の宴自体は、質素でいいんだ。けど、その日の夜……『何をとは言わないが、絶対に(・・・)しなくてはならない(・・・・・・・・・)初夜(・・)』だけは、必ず遂行してもらわなきゃ、ね」

 至極、真面目な表情で、彼女はそんな事を言った。

 ……何をとは言わないがって、そんなの『やる事』はひとつ……だよね。


 さすがの僕も、その意味を理解して頬を赤らめていると、それを見たディセルさんがクスッと笑みを漏らす。

「まぁ、これは獣人族の掟でもあるけれど、私の個人的な望みでもあるから。本来なら、今にでも……と言いたいところだけど、君の心の準備もあるだろうし」

「ディセルさん……」

「だから、その時が来るまで私も我慢するよ。その代わり……」

 彼女はペロリと舌で自身の唇を舐め、ギラリと輝く瞳で僕を見据えた。


「お預けされた分も、まとめてして(・・)もらうからね♥」

 肉食獣然とした妖艶な笑みを浮かべながら、ディセルさんは僕に軽いキスの雨を降らせる。

 私の物だとマーキングするようなその行為を受けつつ、僕はこの愛しい捕食者の獲物となった喜びを胸に抱いていた。


            ◆


「……ムール、アムール!」

「っ!?」

 僕の名前を呼ぶ声に、意識が現実に引き戻される!

 っと、いけない!

 つい、あの夜の約束を思い出して、ボーッとしてしまっていた。


「大丈夫かい、アムール?」

「は、はい!ボケッとしてて、すいません!」

 僕の顔を覗きこむディセルさんの顔が近くて、また頬が熱くなってくる。

 そんな風に、赤面する僕の様子に何かを察したのか、彼女はいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

「ふふっ……その感じだと、何か私に関する事を考えてボーッとしていたのかな?」

 図星!

 つい言葉を失う僕に、笑みを深めたディセルさんが、包み込むように僕を抱きしめてくる。


「もう、そんなにわかりやすい反応をして……ほんと、君はかわいいね♥」

 僕の顔を胸の谷間に埋めながら、愛おしげに優しく撫でてくれるディセルさん。

 その心地よい愛撫に、僕の意識も徐々に蕩けていく……。


「んんっ!」


「っ!?」

 急に聞こえたわざとらしい咳払いに、僕達はハッ!として身を離す!

 そして咳払いのした方へ顔を向ければ……そこには呆れた顔つきで勇者の一行である、グリウスさん、ヴァイエルさん、ルキスさんの三人が僕達を見ていた。


「……ほんとにお前らは、隙あらばイチャイチャしやがるな」

「な、仲が良いのはいいことですが、もう少し人目を考えてもらえると……」

「あんまり間近でイチャつかれると索敵の邪魔だから、後にしろっつーの!」

 三人からの苦言に、返す言葉も無く僕達は「すいません……」と頭を下げた。


 そう、僕とディセルさんにグリウスさん達の計五人は、今現在、四つに分けた部隊から離れ、隠密行動を取りながら目的の場所へとすすんでいた。


 今回の作戦において、魔界に進行するメインとなる部隊を四つに分けて、行動を開始している。


 第一班は、ルドさんが率いる獣人族の剣士、約百五十名。

 第二班は、ターミヤさん率いる、こちらも獣人族の剣士が約五十名。

 第三班は、お姉ちゃんがリーダーを務めるハンター混合チーム、約五十名。

 そして最後の第四班が、ロロッサさんとガマスターさんが率いるハンター混合チームその二、約五十名である。


 敵の勢力圏に攻め入るには不安しかない人数の少なさだけど、獣人族達もハンター達も、ターミヤさんとお姉ちゃんによって鍛え上げられた精鋭となっており、その強さは折り紙つきだ。

 さらに、各々のチームのリーダー達は、一騎当千の強者達であり、その総合力は万の兵に匹敵すると言っても過言ではない!

 まぁ、ルドさんはちょっとだけ格が落ちるけど、そこは部隊の人数で補強してるから、ヨシッ!


 そうして、真正面から皆が大暴れしてもらっている間に、僕達の別動隊がこっそり侵入しようとしているのだ。

 そう、大魔王の城に!


 そんな僕達の目的は、大魔王ギストルナーダを倒すことではなく、闇堕ちしたエルビオさんを救出し、あわよくば魔王四天王のウェルティムとラグロンドを倒す事。

 特に、エルビオさんにかかっている性転換光線(TSビーム)の効力を消して男に戻すためにも、淫魔女王ウェルティムだけでも倒しておきたい!


 そんな訳で、ガマスターさんに書いてもらった、地図と魔王城の見取り図をたよりに、ここまでやって来たという事である。


「えっと、おそらくこの辺りに……」

 地図を見ながら、勇者一行の斥候役であるルキスさんが、周囲を見回す。

 そうして、その辺りの藪を切り払うと、ポツリと一言「あった」と呟いた!


「見つかったんですか、魔王城の隠し通路が!」

「ええ、あの元魔王四天王が書いた地図は、正確だったわ」

 僕達が先行する前に、ガマスターさんが書いてくれた地図には、魔王城から伸びる隠し通路の記載があった。

 どうやら脱出用の物らしいけど、これを逆にたどっていけば、魔族やモンスターに発見される事無く城に侵入できるはずだ。


「さて……巧妙にカムフラージュされてたし、たぶん罠は無いと思うけど……」

 本来なら出口側なのだから、トラップの類いは無いとルキスさんは践んでいたみたいだけど、念には念といった感じで、慎重に扉と周辺を探っていく。

 そうして、罠の有無を確認した後、鍵の解除まで一気に済ませたルキスさんは、その扉をゆっくりと開いた!


「大丈夫そうね……」

 扉の内側をサッと調べ、ルキスさんは僕達の方へ振り返る。

「じゃ、行きましょうか」

「ええ!必ずエルビオさんを、取り返しましょう!」

「待ってろよ、あのバカ勇者……」

 ルキスさんに先導されて、ヴァイエルさんとグリウスさんも通路へ入っていく。


「私達も、行こう、アムール!」

「はいっ!」

 ディセルさんに向かって大きく頷き、僕達は手に手をとって勇者一行に続いて、隠し通路へと飛び込んでいった。

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