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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第二章 邪神教団の罠
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02 いっしょに戦う君達の事を教えてほしい

 ──勇者さま一行と合同で依頼を受けてもらいます。


 ネッサさんの言葉を聞いてから、どうやって借宿まで戻ってきたのかは覚えていない。

 ただ、気がつけば僕を心配そうに覗き込んでいる、ディセルさんの顔がすぐ目の前にあった。


「あ、あれ?ディセル……さん?」

「ああ、やっと正気に戻ったみたいだね。よかった……」

 なんでも、勇者一行との話を聞いてから心ここにあらずといった感じで、ずっと小刻みに震えていたらしい。

 ただの重度な武者震いです!と、ディセルさんが誤魔化していてくれて、なんとか話を切り上げて借宿まで連れてきてくれたそうだ。

 うう、また彼女に余計な世話をかけてしまった……情けない。


「……それにしても、『勇者一行』との合同なんて話を聞いただけでそんな事になるなんて、相当なトラウマみたいだね」

「は、はい……それはもう……」

 しょんぼりしながら、僕は答える。

 明らかに間が悪すぎた誤解があったとはいえ、追放を宣言されたあの時の雰囲気……あれは、いまだに夢でうなされるくらいだったからなぁ。

 ディセルさんのお陰で、最近は悪夢も見なくなっていたけど、また今夜辺りから見る事になるかもしれない。


「うう……それにしても、直接勇者一行(エルビオさん達)と顔を会わせる事になるなんて……」

 僕のこと……バレたりしないよね?

 追放された当時と比べれは、髪も伸びたし、眼鏡もかけてるし、少しは化粧もできるようになったし、装備もしっかり女の子している!

 外見から、僕が(アムルズ)だと露見する心配はないと思うけど、相手は少しの間とはいえ一緒に旅をした仲だ。

 思わぬ所で、勘づかれる可能性があるかもしれないと思うと、心配してもし足りない気がする。


「大丈夫、今のアムールはどっからどう見ても、ただの美少女だよ!」

「ディセルさん……」

 励ましてくれる、彼女の優しさが嬉しい。

 しかし、それでも沸いてくる不安は拭えなかった。


「た、例えば、こういうあざといポーズをとったら、男の子だなんて思われませんよね!?」

「とってもキュートだ!可愛いよ、アムール!」

「それとも、もっと女の子をアピールするような、ちょっと際どいこっちの装備の方がいいんでしょうか!?」

「んんっ!小悪魔チック!セクシーすぎるっ!」

「じゃあ……?」

「素晴らし……!」

 そうやって、テンパった僕とディセルさんの二人だけのファッションショーは、夜明け近くまで続いたのだった……。


            ◆


 戦々恐々としっぱなしの日々は、流れるように過ぎて行き、今日はいよいよ勇者さま達との顔合わせの日である。

 昨日、騒ぎにならないようにこっそりと街に入っていたエルビオさん達と、ギルドの建物内にある応接室で支部長を交えて会う訳であるけど……。


「あば……あばばばば……」

 ネッサさんに案内されて特別応接室へと通されている間、この期に及んで僕は極度の緊張に蝕まれていた。

 その様子に、ネッサさんも不安そうだったけれど、ディセルさんが僕の肩に手を置いて落ち着かせてくれる。

 それで大丈夫そうだと判断したネッサさんが、応接室の扉をノックした。


 どうぞという声が内側からかかり、僕達は部屋の中へと歩を進める。

「B級チーム『レギーナ・レグルス』のお二人を、お連れしました」

「ああ、ご苦労様」

 ネッサさんに労いの言葉をかけるのは、ちょっと薄くなってきた頭のギルド支部長(四十代)。

 そして、そのギルド支部長とテーブルを挟んで対峙している四人組のパーティは……間違いない!


 聖剣の勇者、エルビオさん!

 前衛の重戦士、グリウスさん!

 回復のエキスパート、神官戦士のヴァイエルさん!

 探査や撹乱を得意とする、斥候のルキスさん!


 この半年の間に、随分と鍛えられたのか、厚みが増したみたいに感じる。

 それに比べて、僕は……ついそんな事を考えてしまい、居たたまれなくなった僕は、ディセルさんの影に隠れるようにして、少しでも目立たぬように息を殺した。

 まぁ、これから顔合わせなのにそんな真似をしても意味がないと、すぐに気づく事になったけど。


 そんな風に、緊張で思考能力の落ちてる僕だったけれど、初対面という事になっている勇者一行と、お互いに挨拶を交わしながら自己紹介を済ませていく。

 最後に、エルビオさんが「よろしく」と握手を求めて来たのな対して、『レギーナ・レグルス』のリーダー(一応)である僕は、それに答えた。

 が、握手を交わしたエルビオさんが、なにやら僕の顔をジッ……と見ている?


「なにやら調子が優れない様子ですが、大丈夫ですか?」

「い、いえ……噂の『聖剣の勇者』様達のお供するだなんて、とても緊張してしまって……」

「ハハハ、僕達だって元々は平民ですから、そんなに気にせずに」

 気さくに笑いながらも、エルビオさんは手を握ったままだ。

 何かバレたのではとヒヤヒヤしたけれど、「おっと失礼」と言いながらエルビオさんは手を離した。

 ふぅ……どうやら、今のところは順調みいだ。


 挨拶も終えた所で、さっそく今回の依頼について説明が始まった。

「さて、今回は僕らからの依頼で、二人に協力してもらう事になってます。それというのも……」

「私が、この地方に『邪神を奉る怪しい集団アリ』との神託を受けたためです。なので、地元のハンターのお力添えが有効だと判断して、依頼を出させていただきました」

 エルビオさんが切り出して、ヴァイエルさんが話を続けた。

 ふむう、この地方に来たのは、そういうわけだったのか。

 それにしても、『邪神を奉る集団』?そんな連中が、この辺にいるというんだろうか?


「さて……そのような集団は、聞いたことがありませんが?」

 支部長が首を傾げると、そうなのですか?とヴァイエルさんは呟く。

「もしかしたら、表だって活動しているのではなく、地下に潜っていること考えられますね」

 確かに、邪神崇拝となれば、大っぴらにやれる物じゃないだろう。

 人目の届かない場所で、こっそりやってる方がイメージに合ってる。


「なんにしてもさぁ、なるべく外から接触されにくい、閉鎖的な環境の村とか集落とか、そういうのを知りたいのよね」

 ルキスさんの言葉を受けて、少し考え込んだ支部長は、テーブルの上にこの地域の地図を広げて、ある森を指差した。


「バートの街から南の方に位置するこの森の奥には、猟師達の村があります。そこはあまり外の者が入る事がなく、勇者様達の言っていた条件に合っているかもしれません」

 ああ、確かにそんな村があった。

 前に、猟場に危険なモンスターが出るから、退治してくれって依頼を受けた覚えがある。

 でも、そんな怪しげな物を奉っている様子はなかったけど……。

 一応、その話をしてみると、エルビオさんは「ふむ……」と小さく漏らして思案している様子だった。

「なんにせよ、手がかりくらいは得られるかもしれないし、とりあえずその猟師の村を目指してみよう」

 方針が決まり、ひとまず僕達はその村まで案内をすると言うことになった。


「さて、次は今回いっしょに戦う君達の事を教えてほしい!」

 そう切り出したエルビオさん達から、いくつかの質問が飛んで来た。

 主に魔王四天王スウォルドとの戦いの事が聞かれ、その結末などについて説明する。


「ふむう……太陽も克服した吸血鬼を、体内から……」

「しかも、尻から打ち込むとはな」

「この街の人達が言ってた、『アナルブレイカー』ってそういう事だったのね」

 偶然とはいえ、そうなった経緯を聞いて、エルビオさん達も呆れたような、感心したような……微妙な表情を浮かべていた。


「それにしても、そのようなオリジナル魔法をお使いになるとは、アムールさんはすごいですね」

 ヴァイエルさんに誉められて、僕はぎこちない笑顔でありがとうございますと返す。

 パーティにいた頃は、こんな風に誉められた事が無かったから、なんとも複雑な思いが沸いてくる。


「魔法使い……か」

 不意に、エルビオさんがそう呟くと、一瞬だけ勇者一行の顔に陰がかかった。

 なんだろうと思っていると、彼等の口から思わぬ名前が出てきた!


「これは、今回の件とは関係ない話なんだが……アムルズという少年の事を、君たちは何か知らないだろうか?」

 その質問をぶつけられた瞬間、僕とディセルさんは顔を見合わせる!

 も、もしかしたら、ピンチ……なのかもしれない……。

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