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61.満月の夜、餅と団子が(四)

宴会まだ続きます。

 歓迎パーティーには勇者と仲間達はもちろん、ネイとラン、人型をとったイクスカリバーとイージィスも顔をそろえていた。

 イクス、イースは品の良いワンピースを着ている。それでも色々と目に毒な部分はあるが、メイド姿に比べれば無難な選択だ。むしろ両名は人族の常識にとらわれないところがあり、いつものアレな格好で出ようとしたがセレストに阻止されたのだった。

 なおパーティー開始前に超級の美女を見せられたベルクートが「トールも隅に置けんな!」とほぼ想定通りの勘違いをし、「全然そういうんじゃないです!」と勇者を憮然とさせたのは……もうお約束の展開と言えるだろう。


 この顔触れで、新しいゼータ男爵家の女主人となるリンテ、その使用人達と顔合わせを行う。

 シャダルム夫妻が連れてきた使用人は、主にリンテの実家であるサンテラ子爵家からついてきた者達だと聞かされた。嫁ぎ先の異郷でも彼女が心細い思いをしないよう、シャダルムとクリスが配慮したらしい。

 彼等は勇者屋敷の維持管理も、交代で手伝ってくれることになっていた。


 ここへ、さらに飛び入りの王太子、護衛の魔術師三名が加わる。

 増改築した大広間も手狭に感じられるにぎやかさだ。



 パーティーが始まるとベルクートが乾杯の挨拶をし、シャダルムがリンテと新顔の使用人達を改めて紹介した。

 その後は、皆が自由に食べたり飲んだり、となる。


「ふぅむ、あれもこれも目移りしてしまうな! とりあえずコメとやらの料理を試してみるか。トール、どれが美味いのだ?」


 豪快に笑う王太子。


「米は何でも美味いですけど。んー、初めて食べてもらうならピラフかな?」


 今回の米料理は洋風がメインだった。

 理由は一つ、醤油の在庫が残り少ないためである。

 今ある醤油はディーリに進呈された試作品なので、元々そんなに数はなかった。増産してもらっている最中だが、次の納品まで持つか微妙だ。

 そこで他の料理との食べ合わせも考えて、ピラフやハヤシライス、リゾットを出すことにした。焼きおにぎりにだけ醤油を少量、ハケで塗って使っている。

 卵があればオムライスもできたのだが、あれは何気に生鮮食品だ。最近はイナサで養鶏が始まって、時々は勇者屋敷にも回ってくるものの数は少ない。

 自前で牛より先に鶏を導入すべきかもしれない、とトールも思っているところだ。


「ならばピラフとやらをもらおうか」


 ベルクートはフットワークが軽い。自分からさっさとピラフを皿へ取り分け、スプーンですくって口へ運ぶ。


「ほお! 美味いではないか。面白い食感だな! うむ! 口の中が慣れてくると、より美味に感じるぞ」


「あ、よかったです。そう言ってもらえると安心できます」


 ラクサ的な美食に慣れているベルクートなら、舌は確かであろう。


「ふーむ。栽培は難しいのか?」


 為政者として違うところも気になるようだ。


「素人の俺にもできたんで、そんなに難しくないと思います……たぶん……」


 歯切れが悪くなる勇者。

 初年から米がやたら豊作になったのは、勇者大好きな精霊達のおかげである。恐らくトール以外の人間がやっても、同じようにはならない。

 その辺りを検証するのもあって、今年はセレストに任せた田んぼもあるのだ。

 だが稲作というものは――日本では全国各地で。

 アジア圏をはじめ諸外国でも盛んに行われていたのだから、飛び抜けて難しいはずはない。


「貴族は新しいものや珍しいものが好きだからな! それに国土の中には、麦や芋の生産に向いておらん土地もある。主に湿地帯や雨の多い場所なのだが」


「ああ、だったら米の方が合ってるかもしれません。連作障害もないんで」


 水田で栽培される稲には連作障害がない。何年でも同じ水田で稲を作り続けることができる。

 小麦はそうもいかない。同じ土地で栽培し続けると病気になりやすく収穫も落ちる。

 芋や野菜にも連作を受け付けない種類があるのは、どうも地球と変わらないようだ。

 セレストによれば農業魔法〈マギ・カルチュア〉には連作障害を解消する効果も含まれているそうだが、やはり作り続けると限界が出てくる。

 そこで魔法を使って土地を癒やしつつ、五、六年おきに休耕したり別の作物を栽培したりするのがラクサの一般的な農業なのだとか。

 また小麦は、湿り気の多い土地には不向きで病気になりやすい。水はけが悪い、あるいが降雨が多い地なら、稲の方が適している可能性が高いと言える。


「おぬしの故郷で主食になっておったような優れた穀物ならば、作れるか試してみる価値はあるだろうよ! 後程で構わん、種子を少し譲ってもらうことは可能か?」


「ええまあ、それはもう。でも俺、自分が食べたかっただけなんですけど……なんか話がデカくなってる感じが」


「このおれに見つかれば当然こうなる! かと言って、おぬしを政治の場に引っ張り出したりはせん。安心せよ」


 ベルクートは話し終わると、王族らしさを失わない程度に……だが速やかにピラフを平らげ、次の料理を探す。


「……む? あちらは何だ? 人が集まっているが」


「あー。あれが例のアレです。米を潰して作った甘味」


 皆殺しと半殺しこと、ぼた餅風であった。炊いた米をついて丸め、大豆に似たラーハ豆のきな粉をまとわせたものと、小豆(アズキ)に似た赤豆のあんこを絡めたもの、二種類を用意したのだ。

 甘党のラン、セレスト、それにネイも真っ先にぼた餅を皿へ取っていた。庶民には珍しいスイーツを楽しみにしていたのが分かる。

 セレストはシャダルムとリンテにも話し掛け、ぼた餅を勧めている。

 リンテは恐る恐る口へ入れたが、すぐに目を丸くして微笑んだ。


「……ふんわりした甘さがちょうどいいですわね。とてもおいしいですわ。それにこの、オモチとおっしゃいましたか? 食感が不思議で楽しい食べ物ですのね!」


 トールとベルクートが近づいていくと、リンテが軽やかな声で言っているのが聞こえる。


「ふむ、華やかな場へ割り込むのは気が引けるが! おれにも味見をさせてもらえんか?」


 気が引けると口では言いつつ、ずかずか歩いていってしまうのがベルクートという男である。なんだかんだ言って彼は高貴なる王太子殿下であり、たいていの傍若無人は許されてしまうのだ。

 リンテとセレストもすぐに場所を譲ってくれたので、男二人でぼた餅にありつく。


「これがみなごろ……じゃない、米を完全に潰した方で。こっちは粒が残ってる方です」


 トールだって、新顔で貴族夫人のリンテがいる場では気を使う。マイルドな言い方に変更して説明した。

 日本だとぼた餅は手のひらくらいの大きさで売られていることもあったが、今回はパーティー仕様で一口サイズにしている。ベルクートは「ふむ!」とうなずいて、まず皆殺しこと、よく潰した方のぼた餅を口へ放り込んだ。米が半殺しになっているぼた餅も、続けて賞味する。

 本来、ベルクートが食べる物は毒味がされるものだ。しかし彼は一切、気にした様子はない。皆が同じものを食するパーティーだというのと、やはりトール達を信頼するという姿勢の現れだろう。

 もにゅもにゅと噛んで飲み込んでから、不思議そうに言った。


「……意外と甘くはないのだな?」


「砂糖をケチってる訳じゃなくて……こっちの文化は否定しませんけど、俺、甘過ぎるお菓子はあんまり。このくらいで十分っていうか」


 ラクサや周辺国の菓子は、高級になればなるほど砂糖の使用量が爆増する。王太子であるベルクートが口にする菓子も当然ながら激甘の中の激甘。トールが勇者として、もてなされる場合も同様だ。

 しかし、ぼた餅はトールが考える「普通の甘さ」に味付けしている。ベルクートやリンテ達、ラクサ貴族にとっては薄味に思えるかもしれないが、そこはトールが自分の好みにしてみたのである。


「なるほどな! おれも実を言えば甘いばかりというのは、さほど好かんのだ! これはいいな。リンテ夫人はどう思う?」


 リンテはシャダルムと仲良くぼた餅を味わっていたが、笑顔を浮かべて一礼した。


「ええ、最初は物足りなく思うかもしれませんが、慣れればこの方が美味に感じられるのではないでしょうか? 私は子爵家の生まれですので、高級な菓子は数えるほどしか口にしたことがないのですけれど」


「……しかし、先程のトールのセリフではありませんが。砂糖を出し渋っていると取られかねないのが難点かもしれませんな」


 シャダルムが言葉を付け足した。

 菓子が激甘になるのは、それが高級な砂糖をふんだんに使える資金力に直結するからという。

「どうだスゴいだろ。あまーいだろ。コレいくらすると思う? 我々のカネと権力があればこんなもんよ」

 コレを言葉でいうのは下品であるから菓子で表す。そういう価値観なのである。

 貴族は特に見栄や体面を気にするため、なかなか伝統的な超激甘から脱却できないらしい。


「甘味の少ない菓子を出すと『カネに困っているのか』と疑られてしまう可能性が高くなるが……ふむぅ……内心、いくらなんでも使い過ぎだと思っている者もいそうではありますな」


 そう言うシャダルム本人も、皿にいくつもぼた餅を載せており、話し終えるとパクパク平らげてしまう。気に入っているのは明白であった。


「……私はよく潰したモチとアンコの味が一番美味いぞ、トール」


「おー、そうか。作ったのネイだと思うから、あとで伝えとくよ」


 律儀に感想も言ってくれるのが、気の優しいシャダルムらしいところだ。


「でも、なんかもったいないなぁ。このぼた餅もそうですけど、俺の国では逆に、少しだけ塩入れたりしますよ? その方が甘さが引き立つって言われてます」


「興味深いな! あとでその話も聞かせてもらうぞ!」


「しまった。藪蛇だった……!」


 王太子に追及されるネタを、うっかり自分から提供してしまった。

 頭をかくトールに、別の声が飛んでくる。


「勇者くぅーん。コレ! ちょっとコレ教えて!」


 弾むような足取りで寄ってきたのは、魔術師マイカであった。


「マイカさん?」


 何か訊きたいことがあるようだ、とトールは立ち止まった。



✳︎✳︎✳︎



 一方――。

 フェンは大広間の隅に酒だけ持って引っ込んでいる。

 目立たないように隠れている、と表現してもいいだろう。

 何やら面白くなさそうな顔をしており、セレストがそっと近づいていっても機嫌の悪さは変わらない。


「……どうかしたんですか、フェン?」


「別にどうもしねえ。マイカのやつに見つかるとうるせえんだよ。自衛だ、自衛」


 小声で喋っているところへ、マーシェも足音を忍ばせて近づき、声をかける。


「あの人、そこまで素行が悪いかねえ? 仕事好きというか研究熱心なだけじゃないの?」


 マイカ・ハウスト。

 どんな問題児かと思ったものの、容姿も言動も取り立てておかしなところは見当たらない。挨拶をすっ飛ばして魔術の話をした程度、だ。年の割に子供っぽい――聞けばマーシェの一つ上だった――部分こそあれど、ここには礼儀作法にうるさい人間が存在しない。愛嬌で済むレベルの話である。


「……言っとくが、さっきのはかなり軽い方だからな。あいつは熱心になりすぎんだよ。研究塔の魔術師はとにかく知りたがる。相手にほぼ遠慮もしねえ。マイカはその典型だ。人の迷惑を考えずに根掘り葉掘り聞いてきやがる」


 フェンは思い切り顔をしかめる。


「しかも前のめりになると距離感を間違える。研究対象が人間だと特にだ。質問責めにするくらいならともかく、放っておくと一室に引っ張り込んで閉じこもって何時間も出てこねえ、とかな。相手が男でもそれをやるから、何回か問題を起こしてる」


 密室で男女が二人きりになるなど、ラクサの貞操観念から言って論外。ただならぬ間柄だと宣言したも同然なのだが。

 ーー研究に熱中し過ぎると寝食さえ忘れることも珍しくなく、常識も何もかも脳内から吹っ飛ばしてしまう。それがマイカの最大の悪癖らしい。


「あちゃー、そういうお人か。悪気はないけど迷惑って訳だね」


「確かにトール様とその点が同じですね……」


 マーシェもセレストも、勇者を引き合いに出して納得する。

 トール本人がここにいれば「俺はもうちょっとマシだろ!」と文句を言うに違いないが。


「そのトールが特に危ねえ。ニホンのことをポロッと言っただけでマイカに食いつかれるだろうよ」


「確かに、厨房でも林檎の話をしてたねえ」


「好奇心の塊だからな。今まではトールの魔王討伐の邪魔になるようなことはしねえってことになってたが、そういう言い訳はもう使えなくなってる。また面倒なのがマイカはそこそこ有能だ」


 見た目と喋り方はふわふわながら、マイカもまた上級に相応しい実力を持っている。

 ただし専門が魔術装置の研究だったため、勇者の異世界召喚に関わっていて魔物の討伐に出ていなかった。そのため実戦で攻撃魔術を磨いてきたフェンに戦闘面では及ばないが、こうした調査研究となると手強いのだという。


「なるほど、マイカはニホンのことを知りたいだけ、なんだろうけどね。その調子でトールにベタベタされたら確かにマズいわ」


「ふわふわ頭も結婚してマシになったと思いたいが、まあ望み薄だな。エレイシャがいるからどうにか、ってところか」


「ふう、用心しなくちゃいけないねえ。殿下もいらっしゃるし気が抜けやしない」


 マーシェはグラスを傾けて、ワインで喉を湿らせる。

 酒は美味いが酔ってばかりもいられない。飼育員は苦労が絶えないのだ。


「――ちなみにフェンは、マイカさんの研究対象になったことがあるんですか?」


 こちらは果実水(ジュース)を飲んでいたセレストが、不意に言い出す。

 フェンは半眼になった。


「あいつだけはねぇわ」


「……本当でしょうか」


「無いっつーの」


「痛い目を見たことがあるから、マイカさんを避けているのではないですか?」


「トラスと相性の良い奴だぞ。ねぇよ」


 ピリッと両者のまとう魔力が揺れて、険悪になった。

 今にもケンカが始まりそうである。

 だがマーシェは、溜息一つであしらってみせた。


「仲良いよねえ、あんた達って」


 このぐらい日常茶飯事だ。

 セレストとフェンは、討伐の旅の間も言い争いが多かった。


(魔力の相性が悪いんじゃなくて、性格の問題みたいだけどねえ)


 魔法使いには魔力の相性というものがある。

 ただし、さほど気にしない者の方が多い。

 フェンとトラスは互いに極悪らしい。

 一方でセレストは、どんな相手でもほとんど気にならないという。

 勇者のトールも魔力は多いものの、異世界人で色々とイレギュラーだからなのか「相性? そんなのあるんだ。や、これっぽっちも分からない」と言っていた。

 彼等のような大魔力の保有者でも、このように差がある。


(マイカも魔力が多いみたいだけども……気にしてなさそーだよねえ。フェンが特別に細かいんだろうさ)


 マーシェがみるところフェンの人付き合いが悪いのは、相性の問題が根底にあるからだった。この稀代の天才は、こと魔法や魔術に関してだけは神経質にできていて――トラスはもちろん、自分以外の魔法使いが近くにいるとどうも落ち着かないようなのだ。セレストやトールは恐らく、例外的に平気なのである。


(絶対に自分から言わない辺り、難儀なやつ)


 飛び抜けた天邪鬼でもあるフェンが、それを分かりやすく態度に出す訳がない。

 ……しかし最近は、ちょっと雰囲気が変わってきたと感じることもある。

 例えば今のように。


「二人とも素直じゃないんだから。でもパーティーの間は騒ぎを起こさないでおくれよ?」


「…………」


「――…………」


 魔法使い達は何やら不自然に沈黙してしまった。

 にまにまとマーシェは笑って、さっさと背中を向ける。


「んじゃ、あたしはここらで退散するよ」


 弓使いは大変目が良く、勘が鋭い。

 ついでに逃げ足も非常に早い。

 馬に蹴られる趣味はないのだ。


「やれやれだよ。で、うちの勇者サマは……」


 速やかに離脱してから、ぐるりと大広間を見渡した。

 だが。


「……トール?」


 なぜかイクス、イースと談笑している王太子ベルクートはすぐに見つけたが、その傍らに勇者の姿はなかった。

 マーシェの眉がくいっと寄る。


「ちょ、殿下を放って何やってるんだい?! まさか――」



✳︎✳︎✳︎



 時間を少しだけ遡る。


「マイカさん?」


 立ち止まったトールの鼻先に、ずいっとフォークが突き付けられた。

 先端に林檎が一切れ刺さっている。


「この林檎さー、ちょっとカワイイし凄いよね?」


 そう話すのは魔術師マイカである。


「え、ああ。うさぎ林檎」


「ほえ? うさぎ? どの辺が?」


「赤い皮が残ってる部分、うさぎの耳に見えません?」


「おおおー! 言われてみれば。おもろー!」


 興奮したように、うさぎ林檎をふりふりするマイカ。


「それでね! ちょっと訊きたいことや話したいことあるの。こっちこっち!」


 マイカはごく普通にトールを引っ張っていこうとするので、彼は少々慌てた。


「待った! 俺は今、殿下のお供をしてるんで」


 トールはこの地の領主として、貴賓となったベルクートの接待を担当しているのだ。礼儀作法がだいぶ怪しいせいで、そうは見えないかもしれないが。

 そもそも、マイカにしても王太子の護衛ではなかったのか。自由すぎる。

 ベルクートの後ろにひっそり立っているタームに目をやると、かすかに首を横へ振られた。諦めているのか呆れているのか。中年魔術師は黙して語らず、とりあえずマイカの行動を止める気はなさそうだ。


「では、この場は我等に任せるがよい」


「たまには手伝ってやろうぞ」


 そこへイクスカリバーとイージィスが現れた。

 この両名の本体は武器防具。飲食の必要はないのに、なぜか酒好き、宴会好きだ。

「食べ物の横取りはせぬ。酒だけ少し分けてくれ」ということで、酒のグラスを手にしている。


「ほう! これはこれは」


 美女の登場でベルクートは気を良くしたのか、おおらかに手を振った。


「よし構わん、行ってこい。護衛はタームがいるからな! しばらく適当にやらせてもらう」


「はあ。それじゃ、少し失礼します」


 そう言われてしまえば致し方ない。

 イクスとイースは酒好きといっても一切酔わないので、もし何かあればベルクートを守ってくれるはずだ。妙な方向でちょっかいを出さないか、が少々不安だが。たぶん大丈夫だろう。

 トールはマイカについて歩き出した。

 マイカの悪癖、素行が悪いと言われる理由をトールは知らない。

 異世界から来た勇者が研究対象になり得ることも、だ。


「ちょこっとオハナシするだけだから、ね?」


 彼女が全く色気のない様子だったため、すっかり油断していたのである。


二人とも大人なので大丈夫ですよ(何が)

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[一言] 研究者に餌をやってはいけません。野生動物以上に危険です…
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