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60.満月の夜、餅と団子が(三)

 王太子ベルクート。

 言うまでもなく国王ネマトの後継であり、王女リディアの兄である。年齢はフェンと同じ二十三。

 次の王とは思えないほど気さくで豪快で、「自分なぞ一介の騎士でよかったのに」というのが口癖だ。王子様と表現するには野生味にあふれた人だが、トールは嫌いではない。

 リディア同様、ナチュラルに俺様体質なところはあるが。


「殿下が来ちゃったかー……うわー」


 不敵な笑みと共に接近してくる王太子を見て、トールは色々と諦めた。


「どうすんのさ、トール」


 やや苦い顔でマーシェが質問する。


「殿下は追い返せないだろ。こっそり来たんなら、王族としてもてなす必要はないって意味だと思う。その辺に転がって野宿になっても平気な人だし、好きにやってもらうしかないんじゃ?」


 ベルクートは身体強化魔法を使いこなし、魔王軍との戦いにも部隊を率いて参戦していた武人である。平民の兵士に混じって飲み食いしたり野営したりするのも全く平気だ。

 トールも勇者として何回か一緒に戦ったことがあるため、よく知っている。

 ラクサの王族はこのように、割合に血の気が多い。国王ネマトも若い頃はベルクート同様に暴れていたそうである。リディアが聖騎士になってしまったのも遺伝なのかもしれない。


「まあねえ。あの方なら、ここのぶっ飛んだアレコレを見せても大丈夫とは思うけどさ」


 これまでのトールのやらかし、またの名を雑な奇跡。それらはこの地が中央の目が届きにくいド辺境だということもあって、あまり目立たなかったのだが。

 いないはずの存在――精霊や魔族や、多頭蛇(ヒュドラ)の変異個体が続けざまに現れた今、中央側も放っておけなくなったのだろう。


「わたくし達の味方になってくださるよう祈りましょう」


「シャダルムもいるから何とかなるだろ、たぶん……あれ? フェン、どうしたんだ?」


 フェンも渋い顔を見せている。トールが訊くと、ウンザリした様子で手をひらひらさせた。


「相性のわりぃ魔力が近づいてきやがった」


「殿下とそんなに仲悪かったっけ?」


 人付き合いの悪いフェンは相手が王族でも、ぎりぎり非礼にならないレベルの塩対応だ。口をきくとつい、ケンカを売ってしまいかねないという彼らしい理由もあるが。

 ただしベルクートはそんなものを気にする訳がなく、構いたくなったら構うというタイプである。


「あの殿下とも良くはねーが、また別口だ。面倒なやつがくっついてきてる」


「エレイシャさんがいらっしゃるようですね。あと二人、魔術師が同行しています。恐らくベルクート殿下の護衛かと」


 セレストが相手の魔力を推し量って、トールやマーシェにも教えてくれる。


「なるほど、フェンと相性のよろしくない魔術師ってことかい。まさかトラス副団長じゃないよね?」


「本人じゃねえよ、その嫁だ。あのふわふわ頭、絶対に護衛なんかできねえだろうに何しに来やがった」


「へえ、奥さんの方なんだ。フェン、その人とも仲良くないのか」


 日本で言う「坊主憎けりゃ袈裟まで」だろうか?

 不思議そうなトールに対し、フェンは溜息をついた。


「物凄く面倒な奴だ。腕はいいんだが素行が悪い」


 どこかで聞いたような話である。


「あのさあフェン。俺の国にはブーメランって言葉があるんだけど、こっちでも意味通じるよな?」


「うっせぇぞ。お前が一番ボロを出しそうだから言ってやってるんだろうが。マーシェ、セレスト、これからガキみてえになったトールがもう一人増えると思え」


「俺みたいって何だよ、そのたとえ方?!」


 勇者は全力で抗議した――しかし女性二人は何やら顔を見合わせてから、


「そういうことかい」


「心しておきましょう」


と口をそろえた。


「俺の扱い酷くないか?!」


 トールがいつものぼやきをこぼしたところで、シャダルムと王太子一行が到着したのである。



✳︎✳︎✳︎



「よう、トール。すまんが少し世話になるぞ! セレスト、マーシェ、相変わらず美しいではないか。フェニックスも不機嫌なツラは前から一緒だな! 息災で何よりだ!」


 馬を降りたベルクートが声を掛けてくる。


「お久しぶりです、殿下。ご挨拶申し上げます」


 トールが代表して言った。

 敬語や礼儀作法の苦手なトールだが、このくらいはできる。

 それにベルクートが作法にうるさくないのは分かっている。彼は案の定、にやっと笑って「堅苦しいのはよせ!」と言い放った。


「礼儀だの何だのが鬱陶しいから、逃げ出してきたようなものだぞ! おぬしまで取ってつけたようなことを申すな」


「はは。えーと、お手柔らかにお願いします?」


「うむ! 何でもおぬし農家になっても、めちゃくちゃだそうではないか! 一度見ておきたいと思っていたのだが、表だって動くと余計な憶測を呼ぶのでな。シャダルムに無理を言って同行させてもらった」


 ベルクートはばさっと外套を翻して背後を指す。

 大きな馬車が停まっており、シャダルムにエスコートされて小柄な女性が降りてきた。

 シャダルムは丁寧に妻の手を引いて、こちらへ歩いてくる。


「トール。それにみんな、急な到着になってすまない」


 大きな身体を縮めて謝罪する熊男。

 シャダルムの立場と性格から言って、ベルクートの同行は断れまい。秘密裏に王太子を連れてくるのも神経を使ったはずで、トールは責める気にならなかった。

 全く見知らぬ相手ならともかく、気心の知れたベルクートだというのもあるが。


「殿下がいるんじゃ当然だろ、大丈夫だって。よく来てくれたな、シャダルム。リンテさんも歓迎するよ」


 トールは、こちらは初見の相手にも挨拶する。

 リンテはシャダルムの半分以下しかなさそうな、ほっそりした女性であった。確かに、以前に会った兄のクリスそっくりな線の細い美貌である。

 だが両目はキラキラと輝いていて、勇者やら王太子やら、気の弱い人なら卒倒しそうな面々に囲まれても物怖じせず、優雅に淑女の礼をした。


「シャダルム様の妻となりましたリンテでございます。皆様どうぞよろしくお願いいたしますわ」


「ああ。こっちこそ」


「はい」


 リンテはシャダルムに連れられて、セレスト達にも一人ずつ挨拶をしに行く。

 入れ替わるようにトールの前へ、別の一団がやってくる。

 先頭にいるのはエレイシャ。後ろの二人も彼女と同じ魔術師団のローブ姿である。


「ご無沙汰しています、トールさん」


 最初にエレイシャがお辞儀をした。


「突然の話で大変恐縮ですが、今回は私と、師団の魔術師二名がベルクート殿下の警護で同行させていただきます。まず、こちらが中級魔術師のターム」


 魔術師の一人が、無言で軽く頭を下げた。背が低く、少々くたびれた風貌の中年男性だ。


「以前から殿下の護衛を務めていますので、面識があるかもしれません」


「ああ。何度か会ったことある」


 タームは四十歳ほど。陰気で口数は少なく、親しく口をきいたことはないが、隙のない仕事をする人という印象だった。


「それから、私の友人でもあります上級魔術師マイカ・ハウスト」


「よろしくぅ」


 マイカはフェンが評していた通り、クリーム色の縮れた髪をふわふわと揺らしている女性魔術師であった。ショートヘアなので色合いと言い質感と言い、まるでヒヨコだ。女性としては背が高く、細身で中性的な印象がある。

 スッとフェンが近寄ってきて、トールの横に並んだ。

 マイカが途端、にこっと笑み崩れる。


「あ、フェニックスじゃん。ねえねえねえ! このお屋敷の防衛魔術陣ってキミと聖女ちゃんでしょ? あれどうやったの? ちょっと解析していい? むしろ作動させてみてもいい?」


 挨拶も何も全部すっ飛ばされていた。


「いきなりか。断る。いじくり回した挙句に絶対ぶっ壊すだろうが」


「えー、じゃあ強度どのくらい? 魔力反応の(しきい)値どうなってんの? あと聖女ちゃんとの魔法のつなぎ方って」


「……分かったかトール。こういう奴だ」


「ああ、うん。なるほどな……」


「しかもコレはまだマシな方だ」


「ハァ。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


 肩をすくめるエレイシャ。彼女は王太子の護衛というよりマイカのストッパー役なのかもしれない。

 マイカは興味のあるものに、ためらいなく突進してしまうタイプ……真理と深淵を追究する、根っからの魔術師とも言えるだろうか。だが同業のフェンもエレイシャもタームも呆れ顔なので、度を越して熱心なのは間違いない。

 魔術師同士では珍しく、副団長トラスと結婚して四、五年経っているというが――


「面白いくらい何にも進歩してねえな」


 久しぶりに顔を合わせたというフェンは、ばっさり言ってのけた。


「私も同感です。年を重ねて結婚までした割に、人妻らしい落ち着きは皆無ですよ」


 長年の友人だというエレイシャもこの言いようである。


「フェニックスもエレちゃんも辛辣ぅー」


「ちゃんと上級魔術師としての力量はありますので、何かあれば使い倒していただいて結構です……さあマイカ、荷下ろしを手伝いに行きますよ」


「あ、ちょっと……エレちゃん、きびしー」


 エレイシャはずけずけと突き放し、まだ何か訊きたそうなマイカを引きずるように馬車の方へ戻っていく。


「楽しくなりそうだな! よしなに頼むぞ!」


 魔術師達を興味深そうに眺めていたベルクートは豪快に笑った。

 トールもつられて笑顔になる。


「予想外だったけど……まあいいか。殿下、今日……はもう遅い時間だから明日、歓迎パーティーしますけど。いいですか?」


「おう、無論だ! うまいものをたくさん用意してくれよ」


「殿下の口に合うか分からないですが、頑張ります」


 高貴な身分のベルクートだが、作法にも形式にも、細かいことにこだわらない。彼は庶民的な食べ物も大好きだ。お忍びでもあるから、畏まる必要はないだろう。

 ……と言っても勇者は料理をしたらいけないので、できることは限られている。


「あ、そうだ」


 ふと思いついて、トールは言った。


「俺の国の料理を再現して振る舞おうかと思ってるんですけど。殿下は皆殺しと半殺し、どっちが良いですか?」


「……待て待て! トールよ、何の冗談だ?!」


 豪胆で鳴らすベルクートも、さすがに真顔になる。

 トールは良い笑顔で畳みかける。


「料理です、料理。俺の故郷だと、そういう料理があるんですって」


「なん、だと……」


 勇者は突如襲来した王太子に、ささやかな意趣返しをかましたのであった。



✳︎✳︎✳︎



 翌日は朝からパーティーの準備である。

 勇者屋敷は未だ人手が少ない。トールと仲間達が総出の一大イベントになっていた。

 ネイとランはもちろんのこと、セレスト、マーシェも料理を準備している。料理好きなセレストに隠れがちだが、冒険者稼業が長かったマーシェも料理は得意で手際が良い。

 面倒くさがりのフェンも手伝いに駆り出され、大量の食材を切ったり煮たり焼いたり、米を炊いたりしていた。言われたことは言われた通りにこなすので、料理に関してはこういうサポートの方が向いている。一人で十人分ぐらいの活躍を見せているようだ。


「よく、そんなことまで器用にやりますね……」


 フェンの前に置かれた林檎が、無詠唱の魔術による高速の風の刃で飾り切りされていくのを眺めつつ、巻き込まれたエレイシャがぼやく。

 貴族令嬢の端くれであった彼女は、魔術師になってから料理を覚えた。「腕は極めて人並みです。まずくはございませんが、特段に美味とも言えぬものができます」という理由で、フェンと同じ下ごしらえをこなした後は盛り付けを担当している。


「フェニックスぅ。その林檎なに? 八等分してるのは分かるケド? なんで皮が半分だけ残っててリボンみたいにヒラヒラしてんの?」


 尋ねたのは、同じく手伝いに巻き込まれたマイカだ。

 フェンはぶすっとしたまま「知らねえ。トールに訊け」と答え、次の林檎を切り始める。


「あいつの国だと林檎はこうやって切るんだって、うるせえんだよ」


「あはっ、妙にカワイイじゃーん。で、切った林檎をそっちの水に漬けてるのは?」


「理由は分からねーが塩水にくぐらせると茶色に変色しねえからだ」


「えーっ?! なんでなんで?!」


「訊いても説明がそもそも理解できねえ。やめとけ」


「フェニックスが分かんないってホント? 勇者君なにげに凄いんだぁ」


 勇者の祖国で「うさぎ林檎」と呼ばれていた、たわいない飾り切り一つ取っても魔術師達は大騒ぎであった。


「いいからお前も手を動かしやがれマイカ」


「うー。お料理は……苦手だよ……」


 ヒヨコ頭がうなだれる。マイカは上級魔術師だが、こういう作業は不得意なようだ。使い終わった調理器具の洗浄――つまり皿洗い担当だった。


「マイカの気分屋は直っておりませんね。無理に手伝わなくても構いませんが?」


「ううん、やる。なんか……楽しいし」


 マイカは気を取り直したのか、にこりと微笑む。

 油汚れや、こびりついた米粒は魔法だけでは落ちにくい。魔術で出した熱湯に漬けてから、清浄魔法で綺麗にしていく。


「――うわ! 色んなものが宙を飛んでるな」


 魔術と魔法が飛び交う騒がしい厨房に、勇者がひょいと顔を出す。


「みんな、料理の進行どう? エレイシャさんとマイカさんもありがと」


「あ、トール様! 順調ですぅ! ここにあるお料理はもうできてるので、お願いできますかぁ?」


 頬を赤くして走り回っているランが答える。


「了解、出来上がったやつは運ぶぞー」


 トールは完成した料理を理不尽な勢いで空間収納へ仕舞い込み、風のように再び姿を消す。


 調理に向かない勇者は会場設営係であった。

 空間収納から出して配置してしまえばいいので、勇者のスキルが役に立つのだ。

 会場になった屋敷の大広間――ちなみに増改築されて広くなった部分だ――にテーブルを運び込み、食器やグラスも綺麗に配膳してある。

 もともとシャダルムとリンテのためのざっくばらんな場だったため、料理は大皿に盛っておいて各自で取る立食形式にしていた。飛び入り参加となったベルクートや魔術師達も気取らない方が喜ぶだろうと思い、変更はしていない。

 運んできた料理も会場で順番に出し、サクサクと並べていく。


「おぬしら、妙なところで多芸だな……トールは勇者を辞めても荷運びでやっていけるのではないか?」


 開始前から押しかけてきたベルクートが、冗談めかして言う。側には影のようにタームが控えていた。


「俺は農家がいいです」


 トールは即答した。

 王国内で、勇者を次の国王に据えるべきだという意見が結構あるのは把握しているが……トールにしてみれば笑い事ではない。

 いわゆる兄貴肌のベルクートは王に向いていると思うし、そのまま即位してもらいたいのである。


「せっかく米が作れるようになりましたし。あ、この白い粒々の食べ物が米です。殿下にも話したことありましたよね」


 運んできた焼きおにぎりの皿を指さす。

 米料理もさまざまな種類を用意していたが、一番シンプルで分かりやすいメニューがこれだ。


「うむ、おぬしが食いたいと煩かったアレだな」


 かつてトールが「米が食べたい」としょっちゅう愚痴っていたのを、ベルクートも聞いていた。王太子の権限を使って、ラクサ周辺に米らしき作物がないか調べてくれたこともあった。残念ながら見つからなかったが。


「見た目は麦に似ているか?」


「そうですね。料理は日持ちしませんけど米そのものはたくさんあるんで、気に入ったんなら差し上げます。持って帰ってください」


「ふむ……」


 ベルクートは思案顔になり、ちょいちょいとトールを手招きすると、耳元でこっそり言った。


「実はサブリナが身籠っている」


 サブリナは王太子妃、つまりベルクートの妻だ。おめでたというやつであった。


「へー! おめでとうございます」


「シッ、大きい声を出すな。微妙な時期でな、公式の発表はまだだ。今、すっかり食欲が失せてしまって困っていてな」


 妊娠初期の悪阻(つわり)が酷く、食事が取れないのだという。

 特に肉類やパンなどの匂い、食感を受け付けなくなってしまい、野菜もほぼ駄目。わずかな果物くらいしか口にできないため、サブリナ本人もだが周囲も気を揉んでいるらしかった。

 何しろ普通の妊婦ではなく、お腹の子は世継ぎかもしれないのである。ベルクートは結婚して数年経っているが、彼が戦地を飛び回っていたこともあってか子供がまだいなかった。


「サブリナ様が米なら食べられる保証はないですけど……」


 トールはただの男子高校生だったので、妊娠出産の知識はほとんどない。

 米も粥や雑炊、リゾットなど軟らかく調理すれば食べやすくなるが、確か悪阻中はご飯の匂いが苦手になってしまう人もいる、と聞いたような気がする。あまり自信はなかった。


「分かっている、物は試しというやつだ。おれもよく知らなかったが、男が思っている以上に繊細な状態のようでなあ。もし食べられなくても、おぬしの責任ではない」


 鷹揚にうなずくベルクート。

 彼とサブリナは幼い頃から婚約者として過ごし、成人後に結婚した。つまり恋愛結婚ではないそうだ。

 しかし食欲のない妻のために食材を持って帰ろうとするくらいなのだから、夫婦仲は良いようであった。


「じゃあ、お帰りの時に渡します」


「頼んだ。タームに預けておいてくれ。……さて、そろそろシャダルムと奥方も来る頃合いだぞ!」


「あ、本当だ。残りの料理を運んできます、もう少し待っててください」


 勇者はさっと大広間を出ていった。


「……なんでも自分でやってしまうところが、あやつの長所であり短所よな」


 ベルクートは独白する。

 王家に生まれたベルクートは人に傅かれて育ち、人を使うことに慣れている。何なら下々の者に仕事に与えることが仕事、と割り切ってさえいるが、トールは明らかに逆だ。


「……ある意味で大変贅沢な宴ですな」


 護衛に徹していたタームが、ぼそっと言う。ベルクートは明るく笑った。


「ははっ! 世界を救った勇者とその仲間達が、手ずからもてなしてくれるのだものな。おれは恵まれていると、幾らか自惚れても良かろう。まあシャダルムのおまけではあるが」


 貴族的な絢爛さや見栄の張り合いは一切ないが、ここには別のものがある。金や権力では手に入らないものが。不自由ない高貴な身分に在るからこそ、ベルクートはそのことを熟知していた。


「おっけー、これで完了っと!」


 厨房を往復した勇者が、出来上がった料理を残らず運び込む。

 調理を終えたセレストやマーシェ、魔術師達もやってくる。シャダルムとリンテも合流し、会場は一気ににぎやかになった。

 パーティーの始まりだ。


トールは高校生で召喚された上、勇者は礼儀作法を問われないため王太子相手でも口のきき方はなっていません。馴れ馴れしい一方で勇者の割に腰が低いという、よく分からない状態です。本人は精一杯丁寧にしているつもり。

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