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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第五の部 学園生活順風満帆なお話
243/248

第二百四十七話 やはりジーニアスの生徒は優秀らしい


 もう二つほど班と接触するが、幸いにどちらも狩人ハンターと合流しており、動揺や焦燥はあれどどちらとも意外なほど冷静に行動を開始していた。明らかな異常であると判断した時点で撤収の判断を選べていたのは、やはりジーニアスの優秀な生徒である。


 切迫しているため、長くは無理だが要点をまとめた情報交換を行う。互いの無事と検討を祈ってから別れ、俺は空を飛び回る。


 そうしているうちに、遠目でもわかる激しい戦闘が起こっているのを見つける。


 魔力翼の推力を強めて急行してみれば、カディナ達の班であった。


 人数からして他の班と合流したようだが、かなり悪い状況に追い込まれている。


 カディナとラピスが前線に立って果敢に戦っているが、魔獣の数は十を超えている。無事な他の面子も戦闘に参加しているものの、野生から来る剥き出しの殺気に完全に及び腰になっている。今はどうにか堪えているが、時間をかければ負傷者が生じかねない。


 ミュリエルが攻撃に参加していないのは、カディナ達の後ろ側で広い土壁の囲いを魔法で投影しているからだ。その内側にはミュリエルの他に負傷した幾人かが力なく座り込んでおり、応急手当てでさらに数人の人手が割かれている。


 集った魔獣のうちの何匹かは、聳り立つ土壁に牙や爪を突き立てている。今にも崩れ落ちるほど柔な造りでは無いようだが、このままではかなり不味い。


 魔法を維持するということは、その間に使い手は魔力を注ぎ続ける必要がある。防御魔法以外にも各属性に防御手段に用いる魔法は存在するが、どれも短時間の使い切りだ。長時間の投影は、加速度的に魔力を消費していく。


 この距離からは見えないが、ミュリエルの内心に焦燥が浮かんでいるのは想像に難く無い。外の友人達が魔獣を全て倒すまでに魔力が足りるか。そしてカディナ達もそうしたミュリエルの状態を把握しているからこそ、焦りが生じて本領を発揮できないのだ。


 であれば、俺がやることは単純だ。


 推力を切り、慣性に身を任せながら、左腕鎧に魔力を充填し射撃形態に移行。


魔力機関銃プレッシャーマシンガン!!」


 自由落下しながら魔力の弾丸を斉射。土壁に纏わりついている魔獣に向けて斉射する。仕留めるには届かない威力ではあるが、魔獣が壁を引き剥がす程度の脅威にはなったようだ。


「「「リース!?」」」

「話は後だ! ミュリエル!!」


 ラピスとカディナの声に待ったを掛け、岩碧越しに大声で投げかける。

「守りは俺が引き受けるから、迎撃に専念しろ!!」

「ん、了解」


 壁を崩したミュリエルは、無表情ながらも呼吸が乱れ汗も流している。それでも俺の顔を見ると軽く手を掲げた。俺はその手のひらと軽快に交代(タッチ)し、即座に広域結界スフィアを投影する。


「後ろは俺に任せな! 虫の一匹も遠さねぇからよ!」


 ラピス、カディナ、ミュリエルは三者三様に頷くと、半透明な魔力壁の向こう側で、魔獣にむけて大規模な投影を開始した。


 魔力を即時に回復できる俺であれば、頑強で堅牢な防壁シールドの結界を長時間維持できる。それは、決闘やら常日頃の鍛錬を共にしてきた彼女達であれば誰よりもよく知っていること。だからこそ、怪我人達の守護はもはや気にせず全力で攻撃に専念できる。


 ──俺が合流してからものの五分ほどで、付近の魔獣は討伐完了した。


 後続も一旦は心配しなくて良さそうであった。とはいえ、魔獣の亡骸がそこら辺に散らばる地点で話をするのもよろしく無いので、少し離れた位置に腰を下ろす。


「助かった。あのままだと、ちょっと魔力の残りが心配だった」

「むしろ、あれだけでかい壁を投影し続けられたお前さんに驚きだよ」

「密度を減らしつつ強度を維持するように作ったから。これもリースのおかげ」


 どうやら俺の六角形(ハニカム)防壁シールドの仕組みを属性魔法にも取り入れたらしい。さすがはミュリエルである。


 贔屓のつもりではないが、やはり一番に親しい友人達が無事で、ほっと旨を撫で下ろしてしまうのは許して欲しい。


「それで、状況はどうなっているんですか?」

「仔細はぶっちゃけ、全くわからん」


 忌憚なくはっきり言うと、問いかけてきたカディナはガックリと肩を落とした。もっとも、ここで下手な憶測を述べて間違った判断を下すよりはマシだ。彼女もそれを理解したようですぐに気を取りなおした。


 俺は簡潔ではあるが、アルフィと共に感じた違和感や、直後の『咆哮』。そこから生徒の避難誘導のために飛び回っている旨を伝える。


「…………やはり、私の勘違いではなかったと」

「じゃぁお前も」

「あの咆哮で環境が急変したのは確かですが、それよりも前から森の中に妙な空気が漂っていました」


 俺とアルフィ。二人の意見が一致した時点で濃厚であったが、ノーブルクラスでも随一──つまりは学年内でトップの風使いがいうのであれば確定であろう。


「補足させてもらうと、その前段階から、森のもっと奥深くを縄張りにしてる魔獣が出現していた。ついさっきの魔群れにも何体か紛れてた」

「そいつは俺の方でも確認してる」


 魔獣が異常行動を取り始めたのは、あの咆哮よりも早い段階であったのは間違いなさそうだ。


 ただ、そいつについて詳しく考察するのは後回しにした方が良いだろう。



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大賢者pop
― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 防御魔法以外に取り込んだのか ミュリエルすげぇー
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