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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第五の部 学園生活順風満帆なお話
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第二百二十五話 剣と盾


 だいたい、婆さんとの鍛錬のみならず、故郷の村にいた頃は隙をみて、アルフィと魔法あり(ガチンコ)でなんとも喧嘩してるのだ。痛みを我慢する術なんて経験則で心得ている。


『そして更に、エディ・ジルコ選手ともに本日が初の決闘ということもあり、リース選手はハンディを背負って対するとのことです。具体的には、先日にお披露目された強化(エンハード)を含め、超化エクステンド進化エヴォルトの使用を禁止するようです。これについて、先生のご意見は』

『魔法使いとしては忸怩たるものを感じてしまいますが、リースくんは学年主席。学年前半の初期なら知らず、半ばも過ぎたあたりでの決闘初参戦者ともなれば、このくらいの条件はあって然るべきでしょう』 


 ──と、解説役の教師がもっともらしい言葉を並べているが、実際にはこれもてんで出鱈目である。変則マッチに至った経緯と同じく、あーだーこーだと屁理屈をパン生地のようにこねくり回して、俺の持つ三つの『切り札』を封じに掛ったのだ。よくもまぁあれだけ湾曲した理屈を堂々と述べられるのかと感心し、気がついたら話が通ってしまったのだ。


「それでは──始め!」


 ちなみに本日の決闘、解説も立会も馴染みの先生ではなかった。別に毎回、彼らが俺らの決闘を担当してくれているわけではない。


「くらえっ!」

「うらぁっ!」


 開始の合図と同時に、エディとジルコが同時に魔法を投影。前者は風属性、後者は火属性だ。俺は即座に両手に手甲ガントレットを投影し、それぞれを殴りつけて打ち払う。


「──なんだ?」


 手甲ガントレット越しに伝わる感触にいささか眉を顰めるが、こちらの都合などお構い無しにエディたちは魔法を穿ってくる。対戦相手であれば当然なのだが、無抵抗に浴びているわけにもいかず全てを叩き落とす。。


「そこで亀の様に動かないつもりか!」

「はいはい。ご期待にお応えして行きますよ──っとぉ」


 迫る魔法の風の刃を手甲ガントレットの裏拳で払ってから、俺はエディの方へとつま先を向けた。挑発を口にしたはずなのに、己がいざ狙われているとなると歯噛みをするエディ。


「させませんよ!」


 俺の気が逸れたところで、ジルコが中級魔法を使用。投影された炎槍(フレイムランス)が俺めがけて一直線に飛来する。照準は合っているが少しばかり正確すぎで、殴り落とすのは難しくない。


「離れろぉっ!!」


 足を僅かに止めたところで、エディも風槍(エアロランス)を投影。決闘経験は初めてというが、ジルコ──そしてエディも中々の速度だ。風で形作られた槍を、両腕を交錯して受け止める。痛みはないが、俺を後退させるには十分な圧力であった。


「──やっぱりなんか」


 手甲ガントレットを隔てているとはいえ、やはり魔法を防いだ両腕にどうにも違和感を覚える。自身の投影に陰りがあるとか、あるいはどこか肉体の調子がおかしいとかではない。この感覚はもっと別の理由だ。


「──フッ!」


 こちらの動きを再度封じようと二人が魔法を投影するが、俺も同タイミングで投影を完了。エディらの掲げた手に魔法陣から風と炎が解き放たれた頃にはすでに目標地点に何も存在せず、俺の体は垂直高らかに跳び上がっていた。


 更に続けて跳躍ステップを投影。狙う先は──ジルコだ。


「うひっ──く、くるなぁ!」


 エディに比べれば気が弱いのか、俺と目が合った瞬間に情けない声をあげるとやたらめったらと魔法を投影する。悲鳴混じりでありながら、投影速度も威力も必要十分以上の水準に立っている。少なくとも、空中から強襲する俺の勢いを抑え込み、狙いを逸らすに事には成功していた。


 手甲ガントレットが僅かに外れ、ジルコのすぐ脇の地面を叩き割る。破片と及び腰が重なってジルコはその場で尻餅を付くと、それを見逃してやるほど俺もお人好しではない。このまま追撃を重ねようと拳を振り上げるが、相方は黙って見ていない。


「脇がお留守だぜ!」

「不意打ちする気なら叫ばない方がいいぞ」


 ジルコに狙いを定めた時点でどうやら走り出していたのか、距離を詰めたエディが風槌衝(エアロ・ハンマー)を叩き込んでくる。俺は残った最後の魔力で三度目の跳躍ステップを行い、一気に距離を離すと眼前を風の衝撃が通り過ぎる。


「ジルコ、合わせろぉ!」

「命令しないでください!」


 俺が離れていく最中に、二人は同時に魔法を投影する。

 浮かび上がった魔法陣は、双方共に上級魔法。


「『剛炎刃(フレイムブレイド)』!!」

「『暴風刃(ストームブレイド)』!!」


 同時に放たれたのは、炎の刃と嵐の刃だ。


 俺は体内に残ったなけなしの《魔力》を掻き集め、手甲ガントレットの上に防壁シールドを重ねがけして防御の構えを取った。


 文字通り、魔法(けん)魔法たてが真正面からぶつかり合い、衝撃と魔力が派手に飛び散った。


「やはり耐えるかよ」

「曲がりなりにも主席の座に位置するだけはありますね」


 悔しげなエディと、落ち着いた物腰のジルコ。口調から性格まで対照的な二人では合ったが、だからこそウマが合うのかもしれない。それは日常的な意味もあり、また決闘でも良い方に作用している。


 なるほど。場の流れで決闘になった形ではあったが、完全に行き当たりばったりな無策というわけでもなかったらしい。


 率直な感想としては、エディとジルコの実力は決して低いものではない。魔法の威力や投影の正確性、速度についてはジーニアスの生徒に恥じないものを有している。結果的にではあるが、実力では至らない分を人数差で埋めつつ、かつ俺の弱点を上手い具合に突いてくる。



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