47話 大事な大事なラブレター
執筆中は椅子に座って書くんですが最近腰が痛い……。
年なのだろうか?
11月6日に改稿してます
47話 大事な大事なラブレター
案内され中に入った部屋は執務室のようだった。
奥には執務用の机があり部屋の中央には面会用のテーブルとソファが置いてある。言ってしまえばリカルデで見たギルマスの部屋とそう変わりはない。
違いがあるとすれば壁一面に本棚が所狭しと敷き詰めてあり、執務用の机にも本棚から抜かれたであろう本が積み上げてある点だろう。……爺さんが脳筋だと言ってるわけじゃないよ?
「やぁやぁ、わざわざご苦労だったね。まずは座ってよ。話はそれからにしよう。」
声の主は俺の眼前にいる見た目青少年だが……一目で見でわかる、イケメンだ。くそったれ。
「…?どうしたんだい?そんなに睨んで?」
おっと俺たちの怒りが漏れていたか……。皆も落ち着いてくれ。
「いえ、失礼しました。」
「そうかい?」
一言断ってからソファに腰掛ける。
というか最初に見たときは顔に視線がいってしまって気がつかなかったが、こいつエルフじゃねぇか。イケメンなのも納得だ。
「さっきも言ったけどわざわざご苦労様。僕はここのギルドマスターを勤めてるケルヴィンだよ。よろしくね。」
「先ほどは失礼しました。私は冒険者のハヅキと言います。」
「いやいや、僕は気にしてないしいいんじゃない?口調ももっと気楽な感じでいいんだよ?」
「ありがとうございます。ですが私は若輩者ですので。」
俺のそっけない返しにケルヴィンは苦笑いだがこれが普通だろう。お偉いさんが楽にしなさいなんて言っても誰も来は休まらないのと一緒だよ。
「ははは。ボルに聞いた通り用心深いというか珍しいね、君は。」
ボル?誰だそれは?バルとベルとブルと一緒に配合したらバ◯ルボブルにでもなるのか?……いや言ってて訳分からなくなった、誰がこのボケ分かるんだよ。
俺の疑問が顔に出ていたのだろう、ケルヴィンは聞いていなかったのかとばかりに首を傾げた。
「あれ?聞いてなかったのか。僕とボル……リカルデの街のギルドマスターのボルチーニは昔同じパーティーで活動していたんだよ。彼とは同い年でねぇ……懐かしいなぁ。」
爺さんの仲間かよ。しかも同い年って。
かたや見た目筋肉ダルマの爺さん、かたや見た目好青年のイケメン爺さん。……現実は残酷だなぁ。爺さん強く生きろよ。
「そういう事だったんですか、その聞いた通りとは?」
「君がBランクに特例昇格するってなる前からボルには話を聞いてたんだよ。将来有望そうな奴がいるって。実際はそんなレベルじゃなかったみたいだけどね…。まさか一人でゴブリン・ハイロード、しかも亜種個体を討伐できるなんてね。さすが皇帝殺しだね。」
「いえ、たまたまですよ。それにその場には仲間もいましたから一人でというわけでもないですし。」
爺さんめ余計なことを…。つーかそんな通話みたいなことが出来るなら俺に手紙を運ばせるなんて事しなくてもいいじゃねぇか。
「謙遜も過ぎれば嫌味だよ?まぁいいや。で、手紙を預かったって聞いたけど?」
さっきまでの冗談交じりの雰囲気から一転、剣呑とした空気をまとい詰問してくる。アップダウン激しいな。
ケルヴィンが俺に話を振ったところで空気になっていたアリアが例の手紙を手渡した。
「うん、ありがとう。」
ケルヴィンは一言だけ言って渡された手紙を読み始めた。数秒の沈黙の後ケルヴィンは顔をしかめ大きくため息をついた。
「はぁ。念のために聞いておくけど、ハヅキくん。君この手紙の中は見てないよね?」
「男の恋文を除く趣味は持ち合わせていないので。」
俺は先ほどの意趣返しに心外だとばかりに肩をすくめ大げさにリアクションする。するとげんなりとした顔でケルヴィンは顔を横に振った。
「あぁ、君はあの通り名は好きじゃないんだっけ?ごめんごめん。謝るからその例えはやめてくれないかな?鳥肌が止まらないよ。」
先ほどの剣呑とした空気は何処へ行ったのか、おちゃらけた雰囲気が帰って来た。……シリアスさんは早退ですか。
「いやぁ、たまには真面目にしようと思ったけどやっぱり無理だね。僕には向かないや。」
それでいいのかギルドマスター……。あぁ、アリアが頭抱えてら。
「……手紙にはなんと?と伺った方がいいんですかね?」
「うーん、やめた方がいいかなぁ。かなり面倒なことになってるのは事実だから。だってわざわざ通信魔石じゃなくて手紙をよこしたんだよ?万が一傍受されないために。それともハヅキくんも手伝ってくれるのかい?」
「……ここには前に世話になった人の友人に挨拶に来た。それだけなので。」
通信魔石が何なのかは分からないが要は携帯電話みたいな物だろう。で、それだと内容を傍受される危険があって、知られると不味い内容だから手紙にしたよって?
……あーあー、聞こえない聞こえない、何も聞こえない。知らぬが仏、触らぬ神に祟りなし。そんなやばそうな話なんて俺の預かり知らぬところでやって下さい。そして巻き込まないで下さい。
「ははは、君は正直だね。まぁ、これは皇国と王国の問題っていうより、人間たちと魔族との戦争って話だから大丈夫だよ。」
言っちゃったよこの人!聞かない方がいいとか言いながら言いやがったよ!どっちにせよ俺にとってはノーセンキューなお話だよちくしょう。
俺の荒ぶる心の叫びを押さえつけ必死に取り繕う。……顔が引きつっていたのは見逃してほしい。
「さ、最近は耳の調子が悪くてですね……。長居するのも悪いのでこの辺で失礼しますね。」
「ははは、ごめんごめん冗談だよ。そういえば仲間を待たせてるんだったよね?女性を待たせるのは良くないし行ってもいいよ。話は終わってるしね。」
俺の様子を心底おかしいと気持ちよく笑ってケルヴィンは立ち上がる俺に手を振った。そして俺がアリアに先導され部屋を出ようとした時、忘れていたと言わんばかりに言った。
「しばらくこの街で活動するんだよね?何かあったら僕の所に来なよ。少しは役に立つと思うからさ。」
仲のいい友達と別れるように手を振るケルヴィンに言い知れない不安を抱えながら俺は部屋を後にした。
ーーー
「ふぅ。」
彼は誰もいなくなった部屋で息をついた。
「……魔族と人間ね。欲望に塗れてしまえばどちらも変わらないだろうに。」
先ほど受けた手紙を手に彼は一つ愚痴る。
それは言葉を持たない侵略者に対してなのか。
それは衝動にかられる亡者に対してなのか、誰からも答えは帰ってこない。
「ほんと碌な事しかしないよねぇ。何を考えてるんだか。……全ては神の御心のままに…なんてさ。」
彼の手の中にあった手紙は意味を持たない灰とかし役割を終えた。
「まったく、ボルは勝手に話を進めるからなぁ。僕は早く可愛い女の子と一緒に隠居したいよ……。」
ーー『託宣が降った。そう遠くない未来魔族が大きく仕掛けてくる。その時に皇国は王国にちょっかいをかけるみたいだ。追伸、こいつを届けてくれたやつの手助けをしてやってくれ、それが今回の報酬になってるから。』ーー
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