41話 残業代それすなわち崇高な存在
お待たせしました、34話です。
このお話ですが少し長くなったので2部に分けてます。
続けて投稿するので変なところで切れてますが気にしないでくださいw
11月6日に改稿してます
41話 残業代それすなわち崇高な存在
俺たちが練習場に入ると既に練習場の一角に人の群れが出来ていてかなり賑わっていた。
「……あの中で決闘をするのか。」
人の群れは円形に出来ていて、おそらくその中で馬鹿貴族様が待っているのだろう。
はっきり言って行きたくない。
いや、誰だって好き好んで決闘なんてしたいとは思わないだろうけどさ、俺が言いたいのはそうじゃなくて、あんなに人で囲ってたらいじめられてるみたいで精神的にきつい。
なんか『かごめかごめ』を思い出す。……あれ苦手だったんだよなぁ。
そんな感じで人ごみを眺めていると、人混みを割って爺さんがこちらに来た。
「遅かったな。」
「遅かったな、じゃないですよ。どういうつもりですかね。普通は止めるもんじゃないんですか。」
「いや、悪いとは思うがな少し利用というか頼みごとをしようと思いついてな。」
そういうと爺さんはニヤリと笑った。
あぁ、嫌な予感しかしない。
「少しあの坊ちゃんを懲らしめてやってくれ。昔から態度がでかかったがここ最近は更に酷い。冒険者なんて粗忽者の集まりみたいなもんだが、さすがに度が過ぎてるからな。ここらでお灸を据えてやろうということだ。」
ですよねー。
てかそもそも俺にメリットが全くないんだけど。向こうは俺のこと殺しに来るくせに俺は殺さずに適当に痛めつけろってことだろ?それじゃ割りに合わなさすぎるよなぁ。
あっ、ちなみにメリットってシャンプーのことじゃ……すみません。反省してます。
「……報酬は?」
そんなに睨むなよ爺さん。こんな面倒事を押し付けられたら貰うもんもらわないと俺だってやってられないんだよ。
「全く油断も隙もねぇな……なら金貨2枚でどうだ?」
「わかりました。その依頼受けました。」
しかしお灸ねぇ……。昨日の一件じゃ足りなかったのか?
……昨日か。よし、昨日みたいに殺気だけで………。
「あぁ、昨日のことを聞いたんだが今回はしっかりと武器を抜いてくれよ。でないとあの坊ちゃんも納得しないだろうからな。」
「……分かりました。」
ま、まぁ、あれだ。例えるならショートカットキーを一切使わずに書類を作れって言われただけだし?報酬はきちんともらうし?ただの『残業』が『命がけで取引先のご機嫌取りをしながらの残業』に変わっただけだし?
………なにその拷問。やばすぎるだろ。この例えはやめよう、胃に穴が開く。それに分かりにくい。
俺は爺さんの後に続いて人混みの中心へと進む。
ララも途中までは付いて来ていて、決闘の邪魔にならないようにと人混みの中に紛れて応援してくれている。
まぁ、ララの周囲だけ異常に人が寄らずポツンと孤立している状態で紛れていると言えるかは知らないが。
そして正面を見ると何故かドヤ顔で腕を組み仁王立ちしている馬鹿貴族様がいた。
「遅かったな!僕にビビって逃げ出したかと思ったぞ!」
ウワーコワイナーチビッチャウナーニゲダシタイナー。
一体その自信はどこから来るのだろうか。俺も見習うべきか?……やめておこう。
俺は魔眼で再度彼の強さを確認するが……ステータスもレベルも低いなぁ。そこらの新人冒険者より弱いんじゃないか?
俺は内心ため息を吐きつつ爺さんが取り仕切るのを待つ。
「ではこれから、冒険者ベレッチェ・ドゥーイ・コンフィと冒険者ハヅキの決闘を始める。」
爺さんのその一言で周りの連中も騒ぎ立てる。……一体なにが面白いんだ?これから始まるのはただの決闘だぞ?いや、だからか?
「制限時間は5分。代理は不可。1対1の戦闘とする。質問はあるか?」
俺も馬鹿貴族様も首を横に振り戦闘態勢に入る。
成り行きで始まった茶番じみた決闘とはいえ、使う獲物はどちらも真剣だ。下手に切られたりすれば死にかねない。
そう、死ぬかもしれない。その事実が俺の頭を切り替え、どこか抜けた感覚を張り詰めた緊張感で塗り替えて行く。
そして緊張感で満たされると同時に決闘の開始が宣言された。
ご視聴ありがとうございます。
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