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幼女になった若返りの大聖女は、孤高のひきこもり研究三昧ライフを送りたい!!  作者: 高井うしお


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26話 協力者

「ふぇっくし!」

「どうした。風邪か? パーシヴァル」

「いえ、何か急に寒気がしまして」


 パーシヴァルは何か嫌な予感を感じながら、姿勢を正した。


「なら早めに帰れ。今日は明後日の慰問の行程の確認が済めばいいから」

「……それでは、お言葉に甘えて」

「ああ。大事にな」

「はい。では下がらせていただきます」


 そう言い残して、パーシヴァルはユリウスの執務室から出た。

 すると、待ち伏せでもしていたのかすぐに声をかけてくる者がいる。


「やぁ、パーシヴァル殿」

「カイ殿……」

「ちょっと相談があるんだ。一杯どうかな?」

「え……ええ」


 パーシヴァルは悪寒の原因はこれだったか、と思いながらカイの言葉に頷いた。




「それでは乾杯」

「乾杯」


 カイとパーシヴァルは場所を移し、カイの館の応接間でまた杯を交わした。


「悪いな、いつも俺の家で。街に出て飲むのも好きなんだけど王都じゃ俺の顔は知られてしまっているから」

「いいえ。こちらこそ……私の部屋は王子の寝室の程近くですからね」

「おや……」

「どうせユリウス王子のことなんでしょう?」

「話が早くて助かるよ」


 そう言ってカイはにこりと笑う。


「先日は失礼した。王がユリウス王子の噂を案じて、なんとかしてくれと言われてな」

「ああ……おかげで助かりました。『リリー探し』は無くなりましたから」

「その代わりにちょっとこっちが困ってる……実は……」


 カイはパーシヴァルに「リリー」の正体が幼女化したシルヴィエであること、そしてその正体を知ってもなお恋心を隠す事なく彼女の元に現われたことを伝えた。


「はぁ~……それは……すみません」


 パーシヴァルにとってユリウスは身分の差こそあれ、身内のようなものだ。

 誰よりも理解していると思っていたユリウスの突飛な行動に、パーシヴァルは深いため息をついた。


「このままでは、王家も困るだろう」

「……まだ人妻と火遊びしてくれていた方がマシかもしれません」

「幼女だもんな……」

「ええ……」


 今度はどんな噂が立つのやら、とパーシヴァルは頭が痛くなった。


「シルヴィエは何度も拒絶しているんだ。でもユリウスは聞きやしない。十年待つと言っている。でもな、変化したのは魔力の影響なんだ。ずっと幼女かもしれないし、突然に老女に戻るかもしれない」

「……王子には王家の存続の為に伴侶を得て貰わねばなりません」

「だろ。だから協力してくれ」


 カイはそう言って、ぐっとグラスの中の酒を呷った。


「それはこちらも頼みたいくらいです」

「よし、パーシヴァル殿……いや、パーシヴァル。今日からあんたは俺の戦友だ」

「……光栄です、カイ」


 こうしてカイとパーシヴァルは固く手を握り合った。




「……茶会?」

「ええ、王子主催の茶会を開きましょうと申しました」

「なんでまた」


 次の日、シルヴィエの元にまた向かおうとしていたユリウスは、パーシヴァルに呼び止められて急にそんな提案を受けた。


「ご自分への噂はご存じでしょう、殿下。一日も早くイメージを払拭する為に、ここは一つ茶会など催すのはいかがかと」

「ふむ……それを言われると……俺も立場が弱いな」


 何度も止めるパーシヴァルを無視して、ユリウスはリリーを探した。

 おかげで彼には相当な心労をかけたとは自覚している。


「……分かった。ここはお前の顔を立ててやろう」

「ありがとうございます。出席者の選定はこちらでしますので」

「うむ。頼んだ」


 ユリウス王子が頷いたのを見て、パーシヴァルは内心ほくそ笑んだ。


「計画通り」

「ん? 何か言ったか?」

「いえ。なんでも」

「では、私はルーカスとレオンの様子を見てくる」

「はい、行ってらっしゃいませ」


 ユリウスは鼻歌交じりに部屋を出て行き、パーシヴァルは早速、カイとの計画実行の為に動き出した。




「シルヴィエ! おはよう!」

「また来たのか!」

「弟たちの様子を見に来ただけだ」

「ぐぐぐ……」


 ユリウスは早足で子供部屋に向かい、シルヴィエにさっそく邪険にされていた。


「シルヴィエ、耐えろ。しばらくの我慢だ」

「カイ……」


 イライラしているシルヴィエに、カイはそっと囁いた。


「何か考えがあるのだな。……いいだろう」


 どういうつもりなのかは後で聞くことにして、シルヴィエはぐっと堪えてニコニコと弟たちと一緒にいるユリウスを見た。


「せっかくだ。ルーカスとレオンに見本を見せてやってくれ」

「ああ。いいよ」

「部屋は壊すなよ」

「了解」


 ユリウスは弟たちを椅子に座らせ、その前に立った。


「いいかい。ルーカス、レオン。王家の者の魔力が一般より高いと言われているのは知ってるな」

「「はい、兄様!!」」

「それはこの国を作った偉大な魔法使いの末裔であるとか……諸説ある。それはそうとして大事なのはその魔力をどう活かし、どう制御するかだ。王家の者がふいに他人を傷つけたりしてはならない。だからシルヴィエ先生がついて魔法を教えてくれる訳だ」

「わかりました」

「わかりましたー!」


 ユリウスは優しく、そう弟たちに語りかける。

 それはかつてシルヴィエが何度もユリウスに言い聞かせた言葉だった。


「今から魔法のコントロールの術を見せる。これくらいは軽く出来なくては困るぞ」


 そう言ってユリウスは手のひらをスッと胸の前で重ねた。


「まずは基本の水魔法……」


 ユリウスの手のひらから水があふれ出す。それは一滴もこぼれることなく、ほぼ真球に近い形を取った。


「綺麗……」

「すごいね、兄さま」

「体内の魔力を良く練って、統制を取るんだ。これだけじゃないぞ」


 そう言って、今度はその水球を大きくした。ただ大きくしたのではない。水と水をまるでレースのようにつなぎ合わせ、全体の水量を変えずに大きくした。


「さあ、仕上げ」


 フッとそこにユリウスが息を吹きかけると、その水球がピキピキと音を立てて氷り、手のひらの上に乗った。


「こんなもんだ」

「凄―い! かっこいい」

「兄さまみたいにできるかなー」


 ルーカスとレオンはその巧みな魔力コントロールに思わず拍手を送った。


「どうやら腕は鈍ってないようだな」

「ふふ、お眼鏡に適ってよかった」


 魔力のコントロールは地道な基礎訓練が必要だ。だけど派手な攻撃魔法と違って軽視されがちでもある。

 ユリウスはシルヴィエの手を離れても、それを忘れなかったようだった。


「たいしたもんだなぁ」


 カイもその様子には少々驚いた。

 ただのハンサムなお坊ちゃんというだけではないのだ、と認識を改める。


「それじゃあ、そろそろ執務があるから。シルヴィエ、また来るよ!」

「だから来んでいい!」


 そんなカイの内心など知らないシルヴィエは、ユリウスをぎゅうぎゅうとドアの方向に押し出すことに夢中だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 苦労人が二人……w しかしお茶会でどうするつもりなのだろう…… 問題は山積みだ~w
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