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幼女になった若返りの大聖女は、孤高のひきこもり研究三昧ライフを送りたい!!  作者: 高井うしお


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23話 説得

 カイとパーシヴァルの酒宴が終わる頃にはすっかり深夜になっていた。


「おい、シルヴィエ。大丈夫か?」


 玄関までパーシヴァルを送り出して帰ってきたカイが続きの間を覗き込むと、そこにはシルヴィエが床で眠り込んでいた。

 子供の体力のシルヴィエにはこの時間まで起きているのは難しかったらしい。


「シルヴィエ、寝ているのか」

「う……ン……」

「今日は泊まっていけ」

「分かった……」


 寝ぼけまなこのシルヴィエを抱いて、今日の話を聞いて彼女はどう思っだろうと考えた。


「シルヴィエ。どうするつもりだ?」


 カイはまた眠りに落ちたシルヴィエを抱いてそう呟いた。




 そして朝になり、シルヴィエは授業の前に一度家に帰ることにした。


「カイ、世話になったな」

「……で、どうするつもりだ」

「ユリウスを止める。それしかないだろう」

「どうやって?」

「ユリウスにもう一度会う。しかたない。自然消滅するもんだと思った私が甘かったんだ」

「そうか……」


 カイは心配そうな顔をしていたが、シルヴィエの気持ちはもう決まっていた。


「そんな顔をするな。カイ。私は大聖女だぞ」

「俺の知ってる大聖女様はそんなに器用じゃないから心配するんだよ」

「そうだな……確かに私は人の感情の機微には疎いかもしれん。でも自分のことだ。自分でけりをつける」

「……ん、分かった。応援する」


 こうしてシルヴィエは再びユリウスと会う為に動いた。

 まずは授業を終えた頃、そっと裏庭の秘密の待ち合わせ場所に手紙を置いた。

 

「これを見たら週末にはユリウスはきっと姿を現す」


 昼下がりに会って話がしたいとだけ書いたメモだ。もしかしたらユリウスは気付かないかもしれない。

 でも、ユリウスを呼び出す方法を自分はこれしか持っていない。

 そんなか細い繋がりなのに、ユリウスはひたすらにシルヴィエを探している。

 いや、それしかないから無茶をするのかもしれない。


「とにかく醜聞を負うような真似だけは止めさせないと」


 いくら貴族の奥方や愛人を探ったところで、シルヴィエ……「リリー」はそこには居ない。

 一刻も早く自分のことなど忘れることが、ユリウスの幸福なのだと分かって欲しい。

 シルヴィエはただそう願いながら週末を待った。




 ――そして週末がやってきた。

 昼前には「リリー」の姿に変化したシルヴィエは、じっと姿見の中の自分を見つめる。


「しっかり頼むぞ」


 そう自分に語りかけて。

 そうしてシルヴィエは家を出た。真っ直ぐに王城の裏庭に向かい、あの東屋を目指す。


「居た……」


 シルヴィエの視線の先に、あの青年の姿があった。

 瑞々しい若さに満ちていたその表情は暗く、憔悴しきっているように見える。

 そんな姿に、シルヴィエは声をかけるのを躊躇った。

 そうしているうちに、ふと顔を上げたユリウスがシルヴィエに気付いた。


「リ、リリー……!」


 その途端にユリウスの陰鬱な表情がぱっと輝いた。

 シルヴィエはその笑顔が眩しくて思わず目を逸らしてしまった。


「ユリウス……久し振り」

「メモを見たよ。リリーから会ってくれるとは思わなかった」


 ユリウスはつんのめりそうになりながら、シルヴィエの元に駆け寄った。


「どうして?」

「どうしてって……ユリウス、自分に立っている噂を知らないのか?」


 シルヴィエがそう聞くと、ユリウスはぎくりとでもしたような微妙な顔をした。


「それは……知ってる……」

「だったら分かるな。ユリウス、貴方を止めにきた」

「……でも」

「いくら貴族の家を訪ね歩いても、私は見つからない。無駄なことはやめなさい」

「そう……だろうとは、薄々思っていた」

「そうか」


 うなだれているユリウスに、シルヴィエは東屋を指差した。


「座らないか」

「ああ」


 大人しくベンチに腰掛けたユリウスの隣に、シルヴィエも座る。

 金の髪に縁取られた、憂いを帯びたユリウスの横顔。

 シルヴィエは見つめながら、そっと彼に話しかけた。


「……なんでまた、人妻やら愛人なんて話になったんだ?」

「それは……その王宮の夜会でも他の夜会でも君を見ないし。それに……君にそっくりな女の子を見たんだ。それで……」

「女の子……」

「君と同じ白銀の髪に紫の瞳だった。あの子が君と無関係とは思えない!」


 そう言ってユリウスはシルヴィエの肩を掴んだ。


「ユリウス……私は貴方に幸福になって欲しい。君の輝かしい未来の汚点にはなりたくないんだ」

「汚点……? 君の何が汚点だというんだ。君はこんなに綺麗なのに」

「……それは……とにかく私を探すのはやめなさい。私はもうユリウスには会わない」


 そう言ってシルヴィエはユリウスの手から逃れようと、体を離す。

 すると逆にユリウスは両手でしっかりとシルヴィエを抱擁した。


「嫌だ……!」

「子供のような我が儘を言うな、ユリウス」


 シルヴィエはそんなユリウスに言い聞かせるようにしたが、彼は首を振ってぎゅっとシルヴィエを抱きしめた。


「駄目だというなら……いっそこのまま……君を攫って……」

「ユリウス!」


 シルヴィエはユリウスの激しさに動揺した。

 そして、そうしながらも心のどこかでユリウスの言葉を喜んでいる自分もいる。


「それは駄目だよ……ユリウス……」

「どうして……」


 ユリウスの碧玉の瞳にはうっすらと涙さえ浮かんでいる。

 ああ、もう駄目だ。無理だとシルヴィエは思う。


「ユリウス……聞いて欲しい」


 シルヴィエは意を決した。

 この真っ直ぐで一途な青年を納得させるには、嘘を重ねた今の自分では説得し切れないと。


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