第7話 ライバルたち
夕食の時間になったので私たちは0時の部屋に集まった。やっぱり主さんはいらっしゃらない。気難しそうな顔をする2人の男性がすでに席に座っていた。私たち以外のお客さんね。
ひとりはひげを生やして、筋肉質のワイルドな中年男。もうひとりは、やせ形の眼鏡をかけた秀才風の青年。
「はじめまして、ミリアと申します」
私に続いてグレースさんが自己紹介しようと口を開きかけたが……
「別に名前なんて聞きたいわけじゃねぇ。お前らに名乗る筋合いもないしな」とアウトローな強い言葉で止められてしまった。やっぱりこの中年は嫌な感じ。
「はは、手厳しいな。僕は名乗りますよ。アイルと言います。私は学者でして、ここの塔の研究を主に依頼されたんですよ」
秀才君はイメージ通りの優しそうな声だった。
「私たちは、探偵よ。この2人は相棒で、私はさっき会ったばかりの同業者だけどね!」
マーラさんは力強くしゃべる。このオタクめ。勝手にペラペラしゃべらないで!!
その声に圧倒されたのか。2人の男性はぽかーんとしていた。
「探偵?」
秀才君は、気の抜けた声で問いかけた。
「そうよ。知っているでしょ、王太子殿下の事件。あの事件を解決したのが、何を隠そうこのミリア様なんですよ。私も事件の場に同席していましたが、捜査のプロすら驚愕する推理力で難事件を解決してしまったんです。ミリア様に解けない謎なんてありません!!」
どうして、私以上に自信満々に私を語るの。やめてよ、グレースさん。恥ずかしすぎる。
私が顔を赤らめていると、「ああ、そういうことですか」と秀才君が、「なるほどな」と中年さんがそれぞれ納得していた。
「お待たせしました。食事です」
執事長と1人のメイドさんが食事を運んできてくれた。豪華な食事だ。内陸部なのに、魚料理まである。ここまで魚を運んできたということは優秀な魔術師がいるということね。数少ない氷魔力の使い手がいなければそんなことできないもの。氷魔力と言えば、元婚約者の件が思い出された。彼、もともとは向こうの世界での私の推しだったのよね。
世間知らずで見栄っ張りだけど、素直なヒロインに感化されて、王族の責任に目覚めていく。殿下のルートは本当はそうなるはずだったのに。
そんなことを考えていると、部屋の中央に飾られていた絵がモニターのように切り替わる音がした。映像魔力を宿した魔力道具だったのね。
「ようこそ、皆さま。時計の館へ」
女の人の声が聞こえる。あの女の声だ。




