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終末世界でもう一度 ゾンビウイルスで世界は終わりましたが、転生した私は『収納スキル』でスローライフを目指します  作者: 柿の種
第5章 新しい視点を

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Episode18 - 終わった後の話を聞いてみよう


 結果の話をしよう。

 私は今、佐藤が運営している避難所の治療を専門とする異能者の元で御世話になっている。

 私が気を失った後、戦いを見届ける為なのかは分からないがその場に残っていた三峰に救助されたらしく。目を覚ました時には、周囲の……それこそ、私達の事を軽視していたメンバーからも歓声があがったほどだった。

 状況が呑み込めない私に、困った様な笑顔を浮かべた五十嵐が説明してくれたのだが……どうやら、三峰が私の戦いを周囲に喧伝したようなのだ。

……誇張され過ぎな気がするんだけどね。三峰め。

 とは言え、それを訂正するつもりはない。

 気になって聞いてみても、私が【液体操作】以外の異能を使った、なんて内容は確認出来なかったからだ。

 それに、


「柊くん。これが約束の参加物資と……他チームからの譲渡品だよ」

「ありがとうございます……多くないですか?」

「見舞い品の代わりも兼ねてるみたいですよ?それに、助ける条件として提示していた他チームの物資も入ってますからね、そりゃあ多くもなります」


 私が病室として使わせてもらっている部屋には、数多くの物資が運び込まれていた。

 今回の参加報酬に始まり、佐藤から今回の作戦の功労者である私へという名目で贈られた物資、私が他チームの救援をする為の条件として提示した他チームの参加報酬。

 それ以外にも、話を聞く限り他チームのメンバーからお見舞いの様な形で持ってこられた物資が、部屋の外や私達が元々使う予定であった宿泊用の部屋に延々集まっているらしい。


「あぁ……だから白星ちゃんは頑張って収納し続けてるんだ」

「私だけ休めてないのよ!?少しは手伝ってほしいのだけれど!チョーカーの所為でサボろうと思ってもお姉さんの近くから離れられないし!」

「あはは、ごめんごめん。ちょっとそれは無理」

「良い笑顔で言わないで貰っても!?」


 正直、見る限りでは私の【空間収納】にすぐに納める事が出来るだろう。

 しかし、今私の病室には人がひっきりなしに訪れては物を置いていくのだ。そんな状況で収納系異能を使っている様子なんて見せられるわけもない。


「……で、私はいつまでここに拘束されてれば良い感じ?」

「柊先輩、拘束じゃないです。治療ですから」

「いやだってさ」


 私は寝かされていたベッドから、何事もないかのように立ち上がる(・・・・・)


「普通に歩けて、怪我だってない。異能も使えるし戦闘だって出来るんだけど?」


 そう、私は既に完全快復している。

 当然、佐藤の擁する治療系異能者が優秀……だったわけではなく。以前、三峰にも使った治療薬を隠れて服用しただけだ。

 普通であれば後遺症が残っても仕方がない程に傷付いていたらしい私の足、その筋肉もこうして立ち上がったり、歩いたり、何なら先の戦闘と同じ様に全力で走り回る事だって出来る程度には快復している。


「柊さんが快復してるのは分かってるんですが……ちょっとこちらとしては困るんですよ」

「……理由を聞かせてもらってもいいです?三峰さん」


 そんな私の様子に、丁度病室に入ってきた三峰が苦笑しつつ応えた。


「今、この避難所は作戦成功を受けてお祭り状態です。そうですよね、佐藤さん」

「そうだね。極限状態での生活では何かと鬱憤も溜まりやすい。今回はそれを発散する良い機会だ」

「ふむ」

「その上で、柊さんが出ていこうとすると……確実に捕まります。他チームの面々に」

「……あぁー……成程」


 三峰が言いたい事は理解出来た。

 つまるところ、私は今物語で言う英雄の様な状態なのだ。しかも、傷付いて戻ってきたという特典までもが付いている。

 そんな状態だった英雄が、何事も無く元気な状態で皆の前へと姿を現したらどうなるか?

 答えは決まっている。祭り上げられるか、身動きが取れない程に干渉されるかのどちらかだ。

……流石にそんな所には行きたくないなぁ。

 私はまだ良い。最悪、ここの避難所に居る人達くらいの実力ならば異能の組み合わせで逃げる事が可能だろうから。

 しかしながら、五十嵐や白星、そしてリン達を置いていく訳にもいかない。

 つまるところ、


「……何日くらい滞在してればいいですかね」

「こちらはどれだけ居ても問題ない程度には物資があるから、その辺りは自由にしてもらって構わないよ」

「柊さんが負っていた怪我の程度だと……一週間ほどでしょうか。それ以降なら、周囲の興奮もある程度収まっているとは思います」

「了解了解……五十嵐、先行して居住エリアに帰ってもらってもいい?流石に状況を伝えないで更に一週間も出てると心配する人達も出てくるだろうから」

「畏まりました」


 私は五十嵐が急いで病室から出ていくのを見送ると、ベッドへ腰掛け溜息を吐いた。

 その様子に、収納作業に夢中になっている白星を除いた他の面々が苦笑するものの……恐らく私が嘆息した本当の意味は分かっていないだろう。

……こんな衆人環視の中じゃ戦利品の確認も出来っこないじゃん……。

 折角手に入れる事が出来た、4級ゾンビの頭。その中には未だクリスタル核が埋め込まれている状態だ。

 手早く解体してしまいたい所ではあるのだが……そんな事はこの環境では出来そうにない。

 【空間収納】に仕舞ってある為、腐る事がないのが唯一の救いだろう。


「んー……ま、少しばかりの休暇って事で。知らない事も多いし、ちょっとその辺り教えてくださいよ三峰さん、佐藤さん」

「へ?あぁ、はい。私に分かる事なら……?」

「流石に明かせるものと明かせないものはあるけどね。出来る限り協力しよう」


 全力で戦闘した後なのだ。少しばかり休んでも文句は言われないだろう。

 後の問題は……また、先の私が考えれば良い事なのだから。

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