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終末世界でもう一度 ゾンビウイルスで世界は終わりましたが、転生した私は『収納スキル』でスローライフを目指します  作者: 柿の種
第5章 新しい視点を

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Episode7 - 概要を聞いてみよう


「改めて。今回のこの作戦は、私が認識している限りでは本物の佐藤元首相が立案したモノです」


 三峰は荷物の中から複数の紙……ここ周辺の地図や、他にも都市部を思わせる地図が机の上に置かれていく。


「暴漢……柊さん達はゾンビと呼んでいる者達が、これらのエリアに集中的に出現、破壊活動を行っている為、被害がこれ以上拡大しないようにする為の作戦である……と私は聞いています」

「成程、成程。さっき聞いた通りですね。続けてください」


 三峰は先程交わした簡易的な契約書の内容に従っているのだろう。

 先程、簡単に教えてもらった作戦内容の概要を改めて話しつつ、あくまでも自分の主観に基づいた認識である、と言葉を付け加える事で裏があった場合の保険としている。

 とはいえ、だ。

……このタイミングで三峰さんに話が行くのは分かる。けど、なんで私達の所に……?

 言っては悪いが、あまりうちの拠点や居住エリアについては周囲の避難所などには知られていないはずだ。

 三峰の避難所には知られていてもおかしくはないが、それ以外の避難所とは関わった事はない。

 間接的に、という話をするならば音鳴などの住人を保護したのがそれに当たるのかもしれないが……それにしたって、避難所所属の面々とは面識が無い筈なのだ。


「そこで、柊さんと五十嵐にはこの作戦に参加してもらいたいと考えています。貴重な戦力であり、かなりの実力者であるのは間違いありませんから」

「……質問です。五十嵐はまだ分かりますが、私に白羽の矢が立った理由は?自慢じゃないですが、この拠点の事や私の実力に関してはあまり周りの避難所に知られていないかと思うんですけど」

「あぁ、それは……すいません。私が推薦しました」

「あぁー……成程ぉー……」


 目の前に犯人が居た。

 三峰は私が軽く天を仰いだのを見て、少しばかり狼狽え始めてしまう。


「あ、あの、まずかった……ですかね?」

「いえ、まずいかまずくないかで言えば……まぁ半々くらい?ですかねぇー……ちなみに、さっきも聞きましたが参加報酬などはありますか?」

「は、はい!少なくとも普通の避難所ならば1ヵ月は賄える食糧と、生活用の物資が配分されます!で、今回は以前助けていただいた事もあって、私の分の配分も柊さん達に流そうかと」

「ふぅむ……」


 参加報酬だけで見るなら参加した方が良い。これは断言出来るだろう。

 普通の避難所で1ヵ月、となれば……うちの居住エリアだけで考えるならば、3ヵ月程度はそれだけで賄う事が出来るはずだ。普段消費しているものの質を無視すれば、だが。

 だが、掃討作戦という事は、だ。ゾンビとの戦闘をしなければならない。

……三峰さんには【液体操作】は見せちゃったしなぁ。それは使うにしても……3級とかが出て来ちゃったら面倒臭い、か?

 最悪、バレないように使えばいいだけの話ではあるが……それにしたって制限が多いのは確かだ。

 物資に関しては残念だがここは断った方が、


「あ、掃討作戦に成功した場合、成功報酬として更に物資が増えますよ」

「よし、やろうか。五十嵐準備を」

「柊先輩!?さっきまでの慎重さは!?」

「五月蠅い!物資が増えるならやらない意味はないでしょうに!ちなみにその成功報酬は、参加人数によって増えたりします?」

「えっ、あぁ、はい。増えます、よ?」

「よし、白星ちゃんも参加ね!」

「はぁ!?お姉さん何言ってるの!?」


 正直、バレなければいいというだけならば幾らでも方法はある。

 制限がある?面倒臭い?知った事か、そんなのは未来の私が考える事だろう。

 物資は多い方が良い。これは確かなのだから。


「よし!じゃあ三峰さん、この作戦はいつから?私達だけでやっちゃっても良い奴?」

「いえ!一応3日後に指定地区に集合、そこから各地の掃討目標地域へと移動する形になります!」


 何やらこちらの勢いに乗せられてしまったのか、三峰も勢いよく答えてくれたものの。

 彼女が指し示した場所を見た私は、思わず眉を顰めてしまった。


「……ふむ?ここってこの作戦目標のどこにも近いわけじゃないですよね?」

「何やら集団でテレポートが出来る超能力持ちの人がいるらしいです。その人の能力を使って、近場にまでテレポート、そこからは通信機器を使い時間を合わせて作戦を開始するみたいです」

「へぇ、テレポート」


 転移能力は前世でも見た事はない。

 それだけ希少かと言われれば……恐らくは違うのだろう。

……転移って色々夢がある能力だけど……怖いもんね。それこそ土に埋まったりとか。

 リアル『いしのなかにいる』を体験する可能性があるのだ。それも自分の身体で。

 制御が簡単とか、そういう話ではなく。単純に転移した先に何があるのか分からないのが怖すぎて使えない。

 そんな異能に身を任せる必要がある……というだけで、ちょっと作戦に参加すると言ってしまった事を後悔してしまう。


「……一応、柊さんの懸念は分かりますが……私が確認した所では望遠の超能力持ちや、ドローンなどを使ってテレポート先の安全を確認してから使うようですよ?」

「あぁ、それならまだマシですね。出来ればちょっと空中に転移してもらう様に言っておこうかな……」

「まぁ、怖いですもんね。テレポートした先が地面の下とか樹の中とか……」

「分かってもらえてるようで何より。……で、こんな所ですか?今日は」

「そうですね」


 彼女が席から立つと共に、私達3人も共に立ち上がり居住エリアの外まで見送りに行く。

 1人でここまで来たのだ、帰りも別に護衛など必要無いだろう。

 この前の製薬工場も、何かしらの理由があってあそこまで追い詰められていただけだろうし……普段の三峰であれば、3級にでも出くわさない限りは1人で十二分に行動出来るはずだ。


「それでは、また3日後に」

「はい、お元気で」


 言葉は短く。

 異能を使って身体能力の強化でもしたのか、あっという間に見えなくなる背中を目で追いながら……私はこれからの事について考える。

……勢いでオーケーしちゃったけど、掃討作戦って事は……他の人も居るんだよねぇ。どうしようかな、本当。

 実力を隠すのは今更だ。

 しかしながら、その上で他の……ほぼ知らない面々と共に行動しなければならないとなると……少しばかり方針を考える必要が出てくるだろう。


「じゃ、五十嵐。すぐにでも準備を開始して。行くメンツはさっき言った通り、私、五十嵐、白星ちゃんの3人。後は……リンと何匹かのわんこ達もかな」

「はぁ……畏まりました。わんちゃん達は製薬工場の時と同じ振り分けで?」

「そうだね。そっちの方が良さそうだ」

「ちょ、ちょっと!お姉さん達!?私行くとは言ってないのだけれど!?」


 私と五十嵐がすぐに打ち合わせを開始すると、白星が慌てた様に騒ぎ始めた。

 しかしながら、


「いや、白星ちゃんは私から離れられないんだから強制参加だよ?」

「それに、白星ちゃんの異能は便利ですから。食糧に……一応、白星ちゃん自身も使える武装なんかも入れておきましょう」

「くぅ……私も居住エリアで普通に生活したかったのに……!」


 悔しがっている白星を2人して無視しつつ。

 私と五十嵐は拠点に帰りながら、今後について話し合う。

 これから3日後……かなり忙しくなりそうだ。

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