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終末世界でもう一度 ゾンビウイルスで世界は終わりましたが、転生した私は『収納スキル』でスローライフを目指します  作者: 柿の種
第5章 新しい視点を

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Episode1 - 見つけてみよう


「ちょっとお姉さーん!いい加減コレ外してよぉ~……立派な児童誘拐だよ?これぇ~……」

「いーや。離さないし、今もずっと私から逃げるってよりは私をどう殺そうか考えてる人の鎖は外せないなぁ」

「……チッ……」


 住宅地を歩きながら。私は1人の少女を連れて拠点へと向かっていた。

 見た目だけは良く、中身は私達を騙し結果として大量の物資を奪っていった少女……白星蓮華だ。

 とは言え、ただ一緒に歩いているわけではなく。私と白星の間には黒い鎖が繋がれていた。

……いやぁ、こんな道具がポイント交換出来るの……ちょっと疑っちゃうなぁ。この後色々言われるだろうし。

 白星は何度も収納系の異能で鎖の一部を抉り取ろうとでもしているのか、先程から小さく「なんで?」「外れない……」「発動してない?」などといった声が小さく聞こえてきていた。


「ふぃー……ま、とりあえず観念してウチに来てよ。色々君とは話したいと思ってたからさ」

「……私は話す事なんてないケド」

「じゃあ一方的に話して身体に聞いちゃおっかな」

「……お姉さんそういう趣味?前に一緒に居たもう1人のお姉さんがメイド服着てたのってもしかしてお姉さんが着させてたの?」

「いや、あれはあの子の趣味」

「えぇ……」


 どうしてこうなったのか。

 少しだけ私はこの状況になる前を思い出していた。



―――――



『失礼します。柊様、少し宜しいでしょうか?』

「ん、O.S.Bの方か。どしたの?」

『こちらをご覧ください』


 その日にやらねばならない事を終わらせ、とりあえずでベッドの上で寝転んでいた私はO.S.Bに呼びかけられる。

 そのままAIが私の目の前に1枚のウィンドウを表示させた。そこに映っているのは、


「……私の領地?」

『はい。拡大しますね』


 上空から、恐らくドローンによってリアルタイムで映像が送られてきている領地だった。

 私の言葉にO.S.Bがカメラの倍率を操作していくと。

 そこには見覚えのある少女が1人、民家の扉を収納しながら中に入っていくのが映し出されていた。

 私と五十嵐、そしてリン達から業務スーパーの物資を奪っていった少女……白星だ。


『こちら、領地内に侵入し民家を漁るなどの行為を繰り返しているのですが……如何なさいましょうか?』

「成程、成程……おっけ、O.S.Bはこの子が帰ろうとしたらどの方向に帰っていくのかをドローンで追跡して。見つからないようにだけお願い」

『畏まりました。では情報は逐一A.S.Sを通じて送らせて頂きます』

「ありがと。――A.S.S」

『はい、なんでしょうか。柊様』


 ベッドから立ち上がり、ある程度探索用の装備を固めつつ。

 私はA.S.Sのポイント交換システムを呼び出していた。


「この前私がポイント交換見てた時に見つけた、監禁用の道具一覧出してもらっていい?」

『畏まりました。……収納異能持ちを監禁するのですか?』

「いや、一時的に異能を封じる系が欲しいだけかな。監禁系の道具の所にその手のアイテムが固まってた記憶があるからさ」

『成程、では中から数種類ピックアップします』


 A.S.Sに言ったように、別段監禁するつもりはない。

 だが、白星には色々と聞きたい事があるし……その話し合いをする上で、私も持つ収納系異能は都合が悪すぎるのだ。

 物理的な障害は容量にも依るが意味を為さず。その上で、敵対者も異能の射程によっては如何様にも出来てしまう。私も普段の戦闘ではやっていないが、もしも必要であれば……今世で最初に倒したゾンビの様に、【空間収納】を使い相手の身体を物理的に入れ替え(・・・・)する事だって出来るのだから。


「準備オッケー。あの子の収納系は……多分触れてないとダメな類だから、身体強化は維持。他は……最悪、手か足斬り落とすか……」


 刀を腰に下げ、最悪の事態になった時用のポイント交換産の治療薬を数本分。

 【植物栽培】によって急速生長させ戦闘に使う用の植物の種が数種類に、数本の水が入った水筒。

 この前の製薬工場でもしなかった、今の私の本気の戦闘準備だ。

……収納系に対策とか出来ないからね。向こうにも言える事だけどさ。

 収納系異能を持っているが故に、相手の異能内に何が納められているのか分からず有効な対策を打つ事が出来ない。もしも拳銃なんかを入れられていればそれだけで一般人程度は何も出来ないだろうし、大質量のモノが入っていれば……それだけでも質量兵器となるのだから厄介だ。


『ピックアップ完了しました。現状保有のポイントで交換出来るのはこの数種類です』

「ほいほい、ちょっとそのまま表示してて。移動しながら見て交換する」

『畏まりました』

「O.S.B、まだ動いてない?」

『対象、動きありません。恐らく民家内の数少ない物資を漁っているものかと』

「了解。ルート案内よろしく」

『『畏まりました』』


 2人分の声に満足しながら頷いて。

 私は五十嵐に見つからないよう、素早く拠点内から外へと出る。今の私の姿は完全武装。変に勘繰られる必要はないし、何なら白星を見つけたなんて言えば……彼女もついてこようとする可能性だってある。

 収納系異能の恐ろしさを理解出来ていないだろう彼女を連れていくのは荷が重く、リン達も難しい。

 なんなら、リン達の方が攻撃方法が肉体接触に偏っている為連れていけないだろう。

 完全に1人。角付きを討伐した時以来の単独行動だ。


「よし、行こう」


 幸いにして、白星が居るのは拠点から近い住宅地。

 どう侵入し、どうそこまで来たのかは気になるが……まずは捕縛から優先するべきだろう。

 【液体操作】によって私の身体が耐えられる限界まで強化して。全力で森の中から跳び出した。

 見られる事のない、見られたとしても何かしらの野性動物だろうと誤認される現状だ。ちょっとくらい全力を出した所で問題はないだろう。

……まずは、捕まえる所から。身体能力は普通の女の子と変わらない筈。本当に問題は異能だなぁ……!

 木々の枝を踏み、空中へと跳び出して。【空間収納】に入れておいた石を空中での足場代わりに取り出しては一瞬の加速の為に使い潰す。

 普段だったら絶対にしない移動方法。空中を飛んでいるかのような跳躍の連続は、流石に見られてしまったら言い訳が出来ない芸当の為に単独行動時しかできないものだ。


「お、これで良いじゃん。『縁結びの鎖』……黒いけどさ」

『愛とは時に黒くも紅くもなりますので』

「……それ、血とか出てるタイプの愛だよね?」


 ポイント交換の中から見つけた1つの道具。

 『縁結びの鎖』という、チョイスも見た目も何か間違っているのが確定している道具を複数交換していると……いつの間にか、私は目的地付近の上空まで辿り着いていた。

……映像だと……あそこか。

 O.S.BからA.S.S経由で送られてきているドローンの映像を確認し、白星が今も物資を漁っているであろう民家の上空へと移動して。

 そのまま自由落下で堕ちていく。収納していた足場代わりの石が無くなった訳ではない。単純に民家へと向かうならば落ちた方が早いと考えただけだ。

 空中から堕ちていくと共に、【液体操作】によって進路上に薄い水の膜を何枚も生成。何度も何度も私の身体がそれに当たる事で勢いを殺していき、


「……いてっ」


 どさ、という小さな音が立ち腰から落下してしまったものの、何とか着地には成功した。

 素早く立ち上がり、民家の玄関の前で立って待っていると。


「ふぅー、大量大量っと!そろそろ寝床探さな、いと……なぁ?」

「やぁ白星ちゃん。この前振りだねぇ?」

「――ッ!」


 上機嫌で家の中から出てきた白星が、私の顔を見るなりすぐさま全力ダッシュで引き返していく。

 その姿に少しだけ笑ってしまいそうになりながらも、逃がすわけにはいかない為にその背中を追いかけ始めた。

 鬼ごっこの始まりだ。

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