表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バートリ家の吸血姫(※誤解)とワラキア小竜公のありえない婚礼  作者: 江本マシメサ
第二章 ワラキア公の花嫁

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/50

ゾフィアの心配

 ワラキア公国で迎える二日目の朝――私はブラッド様を抱きしめた状態で目を覚ます。

 昨晩もブラッド様は寝台の端っこで丸くなっていたのだが、温もりを求めて私のもとへと転がってきたのか。

 それとも私が抱き枕を欲し、無意識のうちに胸に抱いていたのか。

 どちらにせよ、寝起きのよい朝というのはたしかである。

 ブラッド様はいまだ夢の中だ。変化魔法で多くの魔力を失ったため、眠りが深くなっているのだろう。

 竜の体が熱がこもりにくいのか、私が離れてすぐ、鱗が冷たくなってしまった。

 気の毒に思い、これまで私が被っていた毛布を巻き付けておく。

 小さな体を毛布でぐるぐる巻きにすると、余計に赤ちゃんみたいである。

 元の姿に戻ったら、二度と見られないだろう。

 存分に愛らしい姿を堪能させていただく。


 時間も忘れて見入っていたようだが、気配を消したゾフィアが入ってきていたようで、「エリザベル様?」と声をかけられてハッとなる。


「ゾフィア、おはようございます」

「おはようございます。その、何をなさっていたのですか?」


 私は小さな声で「ゾフィア、ご覧になってください」とブラッド様の寝顔を紹介する。

 かわいい、と言うかと思ったのに、ゾフィアは思いっきり顔をしかめていた。


「エリザベル様、こちらへ」


 そう言って、衣装部屋へ私をいざなう。

 ゾフィアは扉をぱたんと閉めた。

 ドレスを一緒に選びたいのか、と思っていたのだが違った。


「エリザベル様、よく、あのお方がかわいいなどと言えますね」

「どこからどう見ても、愛らしいとしか思えないのですが」


 ゾフィアは額を押さえ、「ああ!」と嘆くような声をあげた。


「エリザベル様、思い出してください。相手はあの、串刺し公ですよ!? かわいいものですか!! 串刺し公であることを差し引いても、あの姿はただのでかいトカゲです!! 恐怖でしかありません!!」


 ゾフィアは一息で言い切り、はあ、はあと肩で息をしていた。


「その、ゾフィアの気持ちを考えもせず、わたくしの気持ちを押しつけてしまって、申し訳なかったですね。これからは、一人で愛でることにいたしますので」

「エリザベル様……!」


 私の言葉を聞いたゾフィアは、ガクッと脱力するように肩を落とした。


「気持ちの押しつけは、私も同じでした。エリザベル様、申し訳ありません」

「謝らないでくださいませ。誰にだって、苦手なものがありますから」


 私はムカデやクモなど、脚の多い虫が苦手なので、ゾフィアの気持ちも理解できるのだ。

 そもそも、爬虫類だって得意ではないのに、ブラッド様はかわいく見えてしまうから不思議だ。


「いえ、その、一つだけご確認したいのですが、エリザベル様はあのお方を恐ろしい、と感じないのですか?」

「はい、まったく」


 信じがたい、という表情でゾフィアは私を見つめる。


「バートリ家が吸血鬼と誤解されているように、ブラッド様も風評被害のように思えて」


 だから私は、他人の噂になんて流されず、自分の目で見たブラッド様を信じたい。

 そう訴えるも、現実的なゾフィアは真顔で聞いてみた。


「串刺し公の噂は本当か嘘か、ワラキア公に確認されたのですか?」

「いいえ」

「では、一度聞いていただけますか?」


 本人が否定したら、ゾフィアも信じると言う。


「わかりました。では、ブラッド様に噂の真相を確認してまいります」


 グラスグリーンのドレスをまとい、化粧と髪結いを施したあと、寝室に戻る。

 ブラッド様はいまだ、眠りに就いていた。

 ゾフィアとの会話を聞かれていたらどうしよう、と思ったのだが、杞憂だったようだ。

 寝台に腰掛け、ブラッド様に声をかける。


「ブラッド様、朝ですわ」

『ううん……!』


 ブラッド様はもぞもぞ動き、うっすらと目を開いた。


『エリザベル……か』

「はい、おはようございます」

『おはよう』


 のっそりと起き上がったブラッド様は、まだ眠たいのか目をこすっている。


「もう少し、睡眠は必要でしたか?」

『いいや、平気だ。なんというか、エリザベルがいると、不思議とよく眠れるゆえ、寝過ぎてしまったようだ』


 父君と入れ替わってからというもの、あまり眠れていなかったらしい。


「変化の術で魔力を消費したので、眠れるようになったのではないでしょうか?」

『いいや、それは違うだろう。父上と入れ替わったあとも、父上の体に魔力がほとんど残っていない状態だったが、眠れなかった』

「まあ! 大変でしたのね」


 そんな言葉を返すと、ブラッド様の瞳がじわりと潤む。


「ど、どうかなさったのですか?」

『いや、これまで誰にも同情されず、孤独に過ごしてきたことを振り返ってしまい、今、私の隣に心優しいエリザベルがいることを、心から嬉しく思っただけだ』


 ブラッド様を抱きしめたかったのだが、先ほどから、ゾフィアの視線がチクチクと突き刺さっていた。

 早く本題へ移れ、と言いたいのだろう。

 なかなか触れにくい話題なのだが、ゾフィアが安心して過ごせるように、聞くしかないのだ。


 私は居住まいを正し、ブラッド様に質問する。


「あの、ブラッド様、お聞きしたいことがあるのですが」

『なんだ?』

「その――串刺し公と噂されていることは、本当なのですか?」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ