13:エピローグ/最高のミルクを探しに行こう!
「それで、新しい勇者パーティのリーダーに?」
それから後日、すっかり友達になったディーンと我がボロ小屋で泥のようなコーヒーを飲む昼下がり。
俺が煎れると泥のようになるコーヒーは、なぜかディーンが煎れると普通に飲める事が分った。
なんでだろう?
「だって王女さまの頼みだからさ」
コーヒーを1口飲むと、口の中にフルーティな酸味がひろがる。
うまい。
「だってアシエ以上の人間が他にいませんもの」
そう言ってシャルルもコーヒーを口にする。
そんな小さな動作すらも優雅だな。
さすが王女さま。
シャルルも良くウチに遊びにくるようになった。
とは言っても、一国の王女さまだからお忍びだけど。
「それにしても、女の勇者さまか。この国の歴史上では初の快挙だな」
「そして魔王を倒した初めての女性になりますね! 快挙だらけです!」
ディーンも俺の事を女だと思ってることが判明した。
衝撃の事実である。
シャルルに男だってバレたら俺が斬首されるかも知れないから絶対に黙っておこう。
「それにしても、そんな勇者パーティのリーダー様がこんなにのんびりしてて良いのか?」
リーダーになっても俺の生活は変わってない。
ピーちゃんと一緒に畑を耕して、ギーくんと冷蔵庫で在庫を管理。
たまにアイスを作る練習をしているけど、全く成功していない。
ミルクを冷やせばアイスになると思ったんだけど、ただ凍るだけなんだよなぁ……。
「本格的な活動はまだ先になるみたいだからなー」
別に人類の平和を無視して遊んでいるワケではない。
ただ、今は焦って動いてもしょうがないからのんびりしてるってだけだ。
勇者の座を奪われたレオンは冒険者に戻ってまた1からの再スタートを始めたらしい。
それにバボンズやギルバート……魔王との戦いで傷ついた他の仲間たちの回復も待たないといけない。
シャルルは勇者パーティ再結成のための準備をしてくれているが、今はすぐには動けない状況なんだ。
それまでは俺は自由の身。
戦いとは無縁の生活を満喫している。
「あ、そうだ。アシエ、お父様からアイスドラゴンの飼育許可を正式にいただきましたよ」
「おー、さすがシャルルのお父さんだな! 話がわかる! ありがとな!」
「え、えへへ……コホン! ま、まぁ、討伐の目的は周囲の集落への安全の確保のためでしたから、人に危害を加えないのなら問題ありませんし!」
「この子は賢いからなぁ。それにこのスベスベが最高だ……というかアシエは普通にフェニックス飼ってるし今更だよな」
「ですわねー。あー、このモフモフ最高です!」
ディーンはアイスドラゴンのギーくんをオデコに乗せ、シャルルはフェニックスのピーちゃんをモフモフする。
ピーちゃんはまた成長して体温管理が上手になった。
今では魔術で熱に強くなれる俺じゃなくても普通に触れる。
ギーくんのヒンヤリした鱗も気持ち良いんだよね。
「あ、シャルル。そういえばお礼のことなんだけどさ」
「あら、何か決まりました?」
初めて出会った時、シャルルを狂暴なドラゴンから助けた時のお礼だ。
まだ決めていなくて「思いついたらいつでも言ってください」ってことになっていた。
「ギーくんのダンジョンを管理する権利を俺にくれないか?」
我がカフェの冷蔵庫として使ってるけど、正式な認可を得たワケじゃないんだよな。
今は誰もいないのを良い事に、俺が勝手にモノを置いている状態だ。
「構いませんけど、それって褒美というか、むしろ仕事を与えるみたいで……」
「俺が欲しいんだから褒美だよ。こいつの巣だし、職場にもなる予定だからさ」
「でしたら、わかりました。また今度、新ためて権利書を作ってきますね」
「おう、頼むよ!」
『団長! そろそろ仕事ですよー!』
話がまとまった所で見計らったかのように外から警備の人たちがディーンを呼ぶ。
「おっと、もうこんな時間か? じゃあ、またな。アシエ」
「おう、いつでも来いよ」
「では失礼します。シャルル王女」
「えぇ、騎士団長さん。アシエの事は私にお任せください」
「いえいえ、王女さまの方が忙しいでしょうからアシエは俺が守りますよ」
ニコニコと見つめ合う2人……お互いを紹介した最初はなんだか険悪な感じだったんだけど、いつの間にか仲良くなったんだなぁ。
『王女様、そろそろお時間です』
今度は王宮騎士の人たちだ。
「あら、せっかく2人きりになれるところだったのに……」
ディーン、シャルル。
警備の人と王宮騎士たち。
ペローンの人たちがたまにイチゴを買いに来たり、食べ物をワケてくれたりもする。
相変わらずこの村には俺しか住んでないけど、ちょっとだけ賑やかになって来た。
「さーて、次は何をしようか?」
「ピー!」
「ギー!」
勇者パーティ再始動までの空白の時間。
短い間になるかもしれないけど、俺はこのスローライフを楽しむつもりだ。
「まずは最高のミルクを探しに行くか!」
それからシャルルのおかげもあって、すぐに俺の「悪役令嬢」の汚名は払拭されていった。
……んだけど、かわりに何故か「聖女さま」なんて呼ばれ始めてしまうのはもう少し後のお話。
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