12:もう遅い!
ダンジョンを出ると、入り口にはシャルルたちがやって来ていた。
「アシエ! 無事ですか!?」
「お、おう! 無傷だよ?」
俺を見つけるとシャルルがペタペタと全身を撫でまわしてくる。
心配そうに「お怪我は?」とか「綺麗なお顔が!」とか言ってるけど表情が「ハァハァ」しすぎで友情よりも邪念を感じるな。
俺たち、ただの友達なんだよね……?
「もう、装備も持たないまま飛び出して行ったから心配しましたよ! ……ってドラゴン!?」
「こいつはギーくん。ウチの従業員だ!」
「従業員!?」
「あぁ、アイス担当だ!」
「ア、アイス!?!?」
「これから忙しくなるぞ。な、ギーくん?」
「ギー!」
もちろんギーと鳴くからギーくんだ。
「ピ、ピー!!」
ピーちゃんが「ボクもいるよ!」って感じで鳴いてくる。
「分かってるって。ピーちゃんはウチの看板娘だからな!」
そういえばピーちゃんってオスなのかメスなのかどっちなんだろう。
もしかしたらオスかも知れないけど、かわいいから問題ないよな。
「よーしよしよし」
「ピー!」
「ギ、ギー!」
うん、かわいい。
ギーくんもかわいいよ。
「あの、その小さなドラゴンがアイスドラゴンなのですか……?」
「そうだよ?」
「あっと、ギルドの報告ではこのダンジョンに住んでいるのは巨大なドラゴンだと……」
「あぁ、それは仮の姿みたいなもんだ。本体はこの子だから」
「そ、そうなのですか……?」
シャルルは言葉で説明されても半信半疑って感じだった。
王宮騎士たちも怪しんでいるな。
そもそもこの場で俺に好意的なのはシャルルだけだし、ちゃんと証明しておいた方が良さそうだ。
「ギーくん、見せてやってくれ」
「ギー!」
ギーくんは小さな羽でパタパタと飛び上がると、周囲の水分を集めて巨大なドラゴンの氷像を作り上げていく。
この辺りの気温がいっきに下がった。
氷の洞窟の最奥にいた時の半分くらいの大きさだが、それでも見上げるほどにデカい。
「「「うわああああああああ!?!?」」」
そのリアルな造形に王宮騎士たちすら驚いた。
ドラゴンの恐怖とはそれほどのものってことだ。
「な? ウソじゃないだろ?」
「ほ、本当のようですね……それに良く懐いているようで……」
「あぁ、契約したからな。ほら!」
「契約!?」
みんなが怯えるのでギーくんには本来の姿に戻ってもらって、それからシャルルに契約書を見せてやる。
「これは……確かに雇用契約書、ですね」
カフェを経営するため、今後のためにと事前に作っておいた雇用契約書だ。
ギーくんの前足で印が押してある。
まさか初めて使う相手が人間じゃなくてドラゴンになるとは思ってなかったけどな。
「ドラゴンだから俺たちの言葉も理解してくれる。ギーくんはもう安全なんだ……だから、討伐は中止してくれないか?」
「ギー! ギー! ギー!」
入口まで戻ってくる間にギーくんに教えた「お手」とか「お座り」とか「伏せ」なんかを披露して安全をアピールしながら頼む。
「わ、わかりました……確かに危険はなさそうですね。ですがドラゴンの対処となれば王国全体の安全問題になりますから、いくら私が王女とは言え、この場で即決できるモノでもありません。お父様に話してみます」
シャルルはギーくんのその動きのキレに納得のご様子だ。
さすがウチの従業員。
「そうか、頼むよ」
国王は娘であるシャルル王女を溺愛してるらしいから、そんなシャルルがお願いすれば大丈夫だろう。
「このダンジョンが安全になったことは良く分かりました……ですが、あの男は……」
「おい、アシエ!!!!」
振り返ると、洞窟の中からレオンが走って来ていた。
「噂をすれば……ですね」
「あー、忘れてた」
「忘れるな!?!?!? って、シャルル王女!?!?」
シャルルに気づいたレオンはその場で膝をつく。
「勇者レオン、アイスドラゴンはアシエが手懐けたようですね。話は聞きましたよ。アシエに助けられたのでしょう?」
「いや、誤解です! こ、こいつのせいで邪魔されたのです! 本来なら私が討伐できていました!!」
「何を言ってるんだ? ギーくんにやられそうになってたクセに」
「だ、黙れビッチ! お前の言うことなど誰も信用しないんだよ!!」
誰がビッチだよ。
全く、良く言うぜ。
信用されてないのはどっちなのか、王女さまに聞いてみるか。
「だってよ、シャルル?」
「今の話は本当なのですか、勇者レオン?」
「えっ!? ですからコイツのカンチガイですよ! そもそもコイツが俺たちのパーティを崩壊させようとしたあの悪役令嬢なんです!! こんなヤツの話を真に受けるなんて……」
「アシエは私の大切な友人です」
「…………え?」
その言葉にレオンが青ざめる。
シャルルが何を言っているのか理解できないような表情だ。
俺とシャルルの態度を見ればわかるだろうに。
王女様にこんな態度とったら、友達でなければ余裕で斬首だぞ?
「ですから、私の友人を侮辱するおつもりですか? そう聞いているのです」
「い、いえ! とんでもございません!!」
無駄に洗練された無駄のない動きでレオンがシャルルに頭を垂れる。
「でしたら勇者レオン、アナタを勇者から解任いたします!」
そんなレオンをギーくんの氷よる冷たい眼で見下ろしながら、シャルルは冷酷に告げた。
「そ、そんな……!! い、今一度、私にチャンスを……!!」
「チャンスなら与えましたよ。単独でドラゴンを倒さなくても……アナタが仲間の力を、アシエの力を認めていればこんなことをするつもりはありませんでした」
「……え?」
「勇者レオン……いえ、ただのレオン。アナタに足りないのは仲間を信じ思いやる心です」
シャルルの言う通りだ。
レオンが持つ聖剣の力は本物だった。
パーティを組んでみんなで協力して戦えていた時のレオンは、本当に輝いていたのになぁ。
と、思い出に浸っていると、レオンがギラリと俺を見た。
そして……
「すまないアシエ!! この戦いで頭が冷えた! 俺が間違っていたんだ!! すまない!! この通りだ!! もう一度、俺と一緒に戦ってくれーーーー!!」
今度は俺に土下座してきたのだった。
その顔は涙とか鼻水とかでグチャグチャだ。
やれやれ。
「レオン、俺は言ったよな? あとで泣いて謝ってももうこのパーティには戻らない……ってさ」
「うぐっ……!! だ、だから俺が悪かった!! 俺が悪かったから!! だから考え直してくれよ!?!?」
「無理だな。今さら謝っても、もう遅いんだよ」
こいつと組むのはもうゴメンだ。
少なくとも今のコイツを俺は仲間として信用できそうにないんだ。
「話は終わりですか? では勇者レオンをリーダーとした勇者パーティは、今ここで解散いたします!」
「そ、そんなぁ……!!!!」
そもそもパーティがなくなってるじゃん。
「そしてアシエ・ノプテル、アナタを新しい勇者とし、勇者パーティのリーダーに任命します!!」
「「ええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?」」
最後の最後に俺とレオンの声が重なった。
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