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【ホラー小説ランキング2位達成】5千PV突破 訳あり不動産の事故物件調査ファイル  作者: 虫松
第一部 小林治編

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32/49

ファイル29 録音される内見音声

物件は、駅から徒歩十分の1DK。

築浅。

事故歴なし。

告知事項 なし。


内見の予約は、よく入る。

だが、契約まで進んだ例はない。


理由は、

「なんとなく落ち着かない」

それだけだった。


録音


室内確認のため、

小林はボイスレコーダーを机の上に置いた。


記録目的。

それ以上でも、それ以下でもない。


リビング。

寝室。

水回り。


小林は、

いつも通り、

ひとりで部屋を歩く。


「日当たり、問題なし」

「騒音、特になし」


誰もいない。

声は、ひとつだけ。


違和感


確認を終え、

念のため再生する。


最初は、

普通だった。


自分の声。

足音。

ドアの開閉音。


だが、

途中から


知らない声が、混じる。


再生音声ログ


『……ここ、落ち着く……』


小林は、

再生を止めなかった。


『……帰りたくない……』


声は、

男でも女でもない。

年齢も、わからない。


ただ、

室内に溶けるような声。


小林は、

小さく頷いた。


「でしょ?」


誰に向けた言葉でもない。


「帰らない人、

 多いんだ」


録音は、

まだ続いている。


再生音声の、

一番最後。


ほんの数秒。


スー……

 スー……


規則正しい、

呼吸音。


近い。

マイクの、

すぐそば。


小林は、

それを聞いて、

初めて少しだけ黙った。


停止


録音が終わる。


部屋は、

静かだった。


だが、小林は言った。


「……まだいるね」


※備考欄


物件ファイルに、短く追記。


内見音声 人数差分あり

※声が残る傾向


※追記事項


当該音声の最終数秒、過去の調査記録と一致する呼吸音を確認


音声解析結果:マイク設置時、室内に人影なし


小林 治

「声はね、 先に住み着くことがある」

と記録

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