表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ホラー小説ランキング2位達成】5千PV突破 訳あり不動産の事故物件調査ファイル  作者: 虫松
第一部 小林治編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/49

ファイル16 賃料滞納者

古いアパートの玄関のドアの前


「賃料を2ヶ月以上滞納した場合は、“無催告解除”だと、賃貸の契約書に明記されています。」

小林は、冷静な口調で、だが明確に滞納者・矢部へと告げた。


その言葉に矢部は、どこか笑っているような目で睨み返してきた。

「出てけ? 行くとこなんてねぇんだよ……だったら殺せよ」


声が低く、重く、濁っていた。小林は一瞬、言葉に詰まった。


「……とりあえず、今月中に荷物をまとめて出て行ってください。そうしないと、本当にまずいことになりますよ」

小林は静かにポストに解約通知書を差し込んだ。だがその瞬間、背後に強烈な視線を感じた。


ガチャッ。ドアの内側から、誰かがゆっくりと鍵をかけ直す音がした。


「家賃を滞納しておいて、あの態度……ありえませんよ!」

千堂は怒りを抑えきれずに声を荒げた。


小林は静かに言った。

「実際に追い出すにはな……裁判所の手続き、執行官の立ち合い、全部で数十万円と、数ヶ月はかかる。

下手に刺激すれば、何をされるか分からない」


「まるで加害者が被害者みたいに守られてる……家賃払ってる人間が損するなんて、そんなのおかしいですよ!」


「……日本の法律を変えるしか、ねぇんだよ」


その数日後だった。


矢部の部屋の異臭に、隣室の住人が管理会社へ連絡を入れた。

連絡を受けた大家が、警察も呼ばず、我慢の限界とばかりに部屋に踏み込んでしまった。


その日の夜、ニュースになった。


【家賃滞納を巡るトラブルか 60代男性オーナーが刺殺される】


現場から発見されたのは、血まみれの包丁と、壁に爪で引っかいたような無数の傷跡。

部屋の床一面には腐った食品とゴミが散乱し、人間のものと思われる髪の毛の束がいくつも落ちていた。


「これが……現実の“返り討ち”ってやつか」

小林はテレビのニュースを見て呟いた。


千堂は顔を青ざめさせ、言葉を失っていた。


そんな中、小林だけが無言でタバコに火をつけた。


「……さあ、この事故物件アパートを処理しますか。」


その声は、妙に明るく、どこか浮かれてさえいた。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ