ファイル11 銀行に騙された男
【カボチャの馬車事件】
この事件は、いわゆる「カボチャの馬車事件」として知られている。スルガ銀行が、担保の価値がないにもかかわらず、サラリーマンたちに対して無謀な融資を行い、その結果、借金の返済が不可能な状況に追い込まれるという事態に発展した。
この事件の特徴は、女性限定のシェアハウスに投資するという「魅力的」なプロジェクトが、実際には無価値であるという事実が後に明らかになることだ。シェアハウスは建設途中から問題を抱えており、最終的に「魔法」が解けたかのように、その物件はまるで廃墟のような状態に変わり果てた。
小林と千堂はその大家、加藤さんという俗に言うサラリーマン大家さんに会うために彼の借金して購入したシェアハウスへと向かった。
「おい、加藤さん。どうしてこんなことに…」
と小林が声をかける。
加藤は疲れた顔で応えた。
「俺は騙されたんだ。銀行もグルだったんだよ。最初は、女性専用という売り文句に乗せられたんだ。あと、低金利で借りられるって言われてな。でも、結局借金が膨らむばかりで、今じゃこの建物もただの廃墟だ…」
「でも、空き室のままじゃどうにもならないでしょう。家賃はかなり低くなるけど、何とか貸し出さないと、借金は膨らむばかりですよ。」
と小林が冷静に話す。
加藤は一瞬無言になったが、肩を落として言った。
「分かってる…でも、どうにもならないんだ。」
小林は静かに、そして確実な声で続けた。
「それでも、再建案を考えてみてください。無駄に時間を使うことなく、少しでも状況を良くする方法があるかもしれません。」
加藤は小さくうなずくと、シェアハウスの階段を上りながら言った。
「あんたたちには感謝してる。でも、もうどうしていいか分からない。魔法が解けて、もう元には戻らないんだ。」
半年後
その後、加藤のシェアハウスに関して、何も進展がなかった。数ヶ月が経過した後、シェハウス1階の部屋のベットの上で腐乱した加藤の遺体が発見されたのだ。
「これが銀行に騙された者の末路だ。」
小林はその知らせを受けて、改めてその現実を噛み締めるように言った。
「結局、金貸しは夢を見させるだけで、現実を直視することはない。銀行が彼をどうしても助けなかったのも、ある意味では見せかけだったんだろう。」
千堂は無言でうなずき、重苦しい空気がその場を包み込んだ。
シェアハウスは完全に荒廃し、誰も住んでいない。破産した大家の遺体は、無理矢理夢を追い続けて破滅した象徴のように、あの空間にひっそりと横たわっていた。
カボチャの馬車事件は、華やかな夢が一瞬で崩れ去る厳しい現実を象徴している。金利やリスクの面で無知な人々を引き寄せ、絶望的な状況に追い込む金融機関の罪深さが際立つ。この事件は銀行は無責任に担保なしに莫大な金額を貸してはならない教訓となった。




