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「いいじゃないか。よし、今日は階級も何も気にしないで良い。個人の自由で挑む挑まないは決めて良いものとしよう」
セシルム卿の声に騎士団員たちがそれぞれ反応する。安心したように息をつく者から、闘気を溢れさせるものまで。
しばらくして、数名の騎士が前に進み出てきて話を始めた。
あれ? 待てよ? この並びでやると俺、レイたち無しで戦えってことなのか……?
不安になる俺の気など知らず騎士団員たちは話し合いを終え歩き出した。俺の前には一人の大男が進み出てきた。
「第一騎士団団長、グロイスだ。お手合わせ願いたい」
「ああ……えっと、お手柔らかに?」
団長が来たぞ!? と恨みを込めてミルムの方を見るとあちらも別の団長に声をかけられているようだった。
「第二騎士団団長、フリュードと申します」
「ふうん。騎士団はいくつあるのかしら」
「常駐している騎士団は二つです。有事の際に動けるよう団長は五名おりますが……」
「わかっているわ。強いのはあんたたちじゃないわね」
「手厳しい……おっしゃるとおり。団長は強さでは選ばれておりません」
フリュードと名乗る男はこちらの大男と違いかなり整った顔立ちの、いうなれば貴族らしい男だった。
その男がそれまでの柔和な表情を一転させ、ミルムに相対する。
「ですが、私が弱いということではありませんので、お気をつけて」
ミルムが笑う。
レイたちのもとにもそれぞれ騎士団員が来ているようだった。
ミルムとフリュードの会話からしておそらく、全員が各団の団長ということだろう。
「じゃあ、やろうか」
目の前に立つグロイスも一気に雰囲気が変わる。
これは確かに、Aランク相手に渡り合うというのもうなずける。というより、並のAランクなら圧倒するだけの力を感じていた。
「よろしく」
だが俺は一応Sランクを名乗る許可をもらった冒険者。レイたちなしでも勝たないといけない……のか? でもテイマーって使い魔込みでの強さだよな? 普通。
いや今更何を言っても仕方ないか……。
今回の目的はおそらくだが。騎士団員たちがくすぶらせるドラゴンゾンビ討伐への思いを払拭させることになるはずだ。
セシルム卿の思惑を汲み取り恩を売るという意味では勝たないといけないのはわかる。
「では、それぞれ準備はいいかな?」
セシルム卿が合図を出すらしい。
相手の実力がどこまでのものかはわからないが、やるしかないな……。オーラだけで言えば、勝てない相手ではないし。
「それでは……はじめ!」
セシルム卿の開始の合図を受け、それぞれ一斉に動き出す。
模擬戦が始まった。
こっちも更新します!
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テイマーの限界を超えたみたいなので女の子をテイムして最強パーティーをつくります 〜俺にテイムされると強くなるらしくSランクの獣人も伝説の聖女もエルフの女王も最強の龍王も自分からテイムされにくる〜




