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「おお……」
最初にアールを着地させようとした広大な敷地は訓練施設にもなっていたらしい。
入るときには見なかった騎士団がずらっと整列していた。
それだけでも壮観だったが、現れたセシルム卿を見て更に姿勢をただした姿はもう圧巻といえるほど整ったものだった。
「私兵団でここまで訓練されているのはすごいわね……」
ミルムも唸るほどだ。
アイルが隊列に入り改めて敬礼していた。
「さて、今日は高名な冒険者であるランド殿とミルム殿をお連れした。Sランクパーティーとして活躍する二人だ。ぜひ君たちの日頃の鍛錬の成果を見せてほしい」
セシルム卿に促されて頭を下げておく。
「たまに私のところを尋ねてくれる冒険者には手合わせを頼んでいるんだ。アイルくんをはじめ、先鋭クラスはAランク冒険者程度なら一騎打ちで渡り合う力がある」
「だから睨まれてるように感じたのか……」
要するにお前らはどの程度なのかと値踏みされてたわけだ。
そしてAランク相手に互角ということであれば、Sランクパーティーと紹介した程度では響かないこともわかる。フェイドたちもそうだが、単体ではAランクまでの実力でありながらSランクパーティーとなる例が多いからだ。
「で、どのくらい加減すればいいのかしら?」
「おいおい……」
ミルムの明らかな挑発に殺気立つ騎士団員たち。
「はは。できれば本気を見てみたいところだけれど……死なない程度にお願いできるかな」
「わかったわ」
流麗な所作で広場の中央に進み出るミルム。
セシルム卿が補足するように話を続けてくれた。
「もともとは竜の墓場に何かがあれば自分たちが、と思ってこれまで鍛えてきたのがこの騎士団だ」
「余計状況が悪い……」
それでこんなに敵視されるような空気感だったのか。
セシルム卿は自分の興味といったが、これは騎士団のガス抜きという意味合いも強い気がしてきたな……。
もしかするとミルムもそれがわかっていてあえて挑発したのかもしれない。
できれば俺は穏便に過ごしたいのだけど……。
「あなたも来るのよ」
「やっぱり……」
「あとあの子達も並べてあげて」
ミルムの作った空気感の中で歩み出るのは恐ろしいんだが、まあもう今更か。
「おいで」
『キュオオオオオン』
『グモォオオオオオ』
『きゅぅううううう』
レイ、エース、アールがそれぞれ並ぶ。
はじめて騎士団の面々がざわめいていた。
「おお……これはすごい」
セシルム卿も感心するように使い魔たちへ視線を向けていた。
「まずは一騎打ちを受けてあげるわ。挑みたいところに並んでもらおうかしら」
ミルムの宣言を受けて騎士団員たちにざわめきが起きていた。
同時に俺の心もざわめいていた。
「俺も相手するのか……」
毎日更新は引き続きがんばりますー!
こちらの短編驚いたことに総合一位まで上げていただきました
ありがとうございます
https://book1.adouzi.eu.org/n1266ge/
王女に仕えた万能執事、わがままが度を越したので隣の帝国で最強の軍人に成り上がり無双する〜誰からも評価されず毎日姫のわがままに付き合わされた不遇の執事はいつの間にか大陸屈指の実力者になっていたそうです〜




