089
セシルム卿の言った通り、冒険者は言葉遣いに気を使わない。
そもそも気を使ってもそんな上品にしゃべれないという話もあるが、腕っぷしで勝負する冒険者たちは悪い言い方をするなら舐められることを避けるためにあえてそうしているという側面もある。
とはいえ、さすがに王族や大貴族を相手にする場合は普通冒険者側も配慮が必要なんだが……。
「そうだ。それがいい。ランドくんもぜひ、そうしてくれたまえ」
「わかり……わかった」
落ち着かないがまあ、相手が言ってくれているならこのほうが自然か……。
それにしてもほんとに、出された紅茶を優雅に飲むのが非常に様になる二人だった。身分の違いを見せつけられるようだな……。
「わざわざ呼びつけるようになってしまって悪かったね」
「いや、問題ないで……問題ない」
「はは。ありがとう。しかし空から来たと言っていたね。いやぁうらやましい限りだ」
情報が入るのが早いな。門番と話す機会があったようには思えなかったが……。
これだけの規模だ。なにかそういう魔道具も屋敷にあるのかもしれないな。
「さて、早速だが本題に入ろう。まずはドラゴンゾンビの討伐、本当に助かった。ありがとう」
その大貴族であるセシルム卿が俺たちに頭を下げる。
それだけのできごとだったのかと改めて思い知らされた。
「ギルドにはそれなりの金額は預けたつもりだったけど、受け取れたかい?」
「それはもう……十分すぎるほどに」
「はは。それは良かった。だが私は、それでは足りないと思っていてね」
あれだけでも十分すぎるというのに……。
ギレンも言っていたがそれだけ重要だったんだろうな。
「他に望むものがあれば用意しようと思っている。爵位も、屋敷も。んー……娘、は少し幼いが望むなら」
「いやいや?!」
「あら。辺境伯の娘がまだ空いているのね」
「まあそろそろそういった話もでてくるだろうがねえ。まだ7歳。どうせなら本当に、ランドくんのような人にもらってもらうほうが幸せな気がしているけれど」
父の顔を覗かせるセシルム卿。
だがそれも一瞬のことだった。
そもそも俺も貴族の娘と結婚なんて考えられない……というより、7歳の娘と婚約なんてしたくないしなぁ。話を変えよう。
「その前に爵位とか……」
「ああ。独断でも子爵くらいまでなら……」
「子爵?!」
国の要職につくこともあるような爵位じゃないのかそれ……。
「あら、いいじゃない」
「簡単に言うな」
ただまぁ、ミルムがいれば統治とかのことは……いやこいつ孤高の王なんだった。だめだ。
「とても失礼なことを考えている顔をしているわね」
鋭いな……。
ミルムに睨みつけられながら、なんとか話に戻っていった。
短編投稿しました
この作品を書く前に書いてたメモが残ってたので出したのですがよかったら
https://book1.adouzi.eu.org/n1266ge/
王女に仕えた万能執事、わがままが度を越したので隣の帝国で最強の軍人に成り上がり無双する〜誰からも評価されず毎日姫のわがままに付き合わされた不遇の執事はいつの間にか大陸屈指の実力者になっていたそうです〜
本日はこちらも更新します
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テイマーの限界を超えたみたいなので女の子をテイムして最強パーティーをつくります 〜俺にテイムされると強くなるらしくSランクの獣人も伝説の聖女もエルフの女王も最強の龍王も自分からテイムされにくる〜




