006
ミノタウロスたちの死体は貴重な素材だ。
レイの身体もこのままにはしたくない。
「どうやって運ぶか……?」
これまでは全部レイに任せていたわけだがこの身体でそれが出来るのか……?
と思っていたらまた頭にあの声が響いた。
──スキル『死霊の棺』の習得条件を満たしました
「死霊の棺……?」
『ワォン!』
透けた方のレイが実体のほうのレイを咥えて戻ってきた。
え、触れるの? いやまあ俺が撫でれたからそりゃそうか。でもなんか不思議な光景だな。
「使えってことか」
『ワオン!』
「よし……【死霊の棺】」
意識して唱えるとすぐにレイの身体が吸い込まれるように虚空に消えた。
「いまのがスキルってことか……? 試すか。【死霊の棺】」
今度は手をかざして出すことを意識して唱えてみる。
「おお!」
するとすぐにレイの身体が目の前にポンと召喚された。
「これは便利だな……!」
『ワォン!』
「ああ。ミノタウロスもこれなら持っていけるってことだよな」
すぐに五体のミノタウロスがスキルによって消失した。
これ、荷物にも使えたりするのか……?
『クゥン?』
「【死霊の棺】」
やってみたものの反応はなかった。
「ダメか」
『クゥン』
──ミノタウロスが使役可能になりました
「え?」
『グモォオオオ』
突然目の前にミノタウロスが現れていた。こいつも身体は透けてるけど。
「なるほど、運んでくれるってことか」
『グモォ!』
レイより大きな身体なので俺が背負っていた荷物まで全て担ぎ上げてくれていた。すごいな。
「にしてもミノタウロスが荷物持ちってすごい豪華だな……あぁ、こうして話すなら名前をつけた方がいいか」
『グモォ!』
心なしか嬉しそうなミノタウロスが鳴いている。
「そうだな……エースでどうだ?」
『グモォオオオ!』
喜んでくれたみたいだ。
と、また頭にあの声が響いた。
──使い魔強化によりエース(ミノタウロス)のステータスが大幅に上昇しました
「なるほど……使役し始めて、名前をつけると良いんだな」
とりあえずこれでエースも強くなったんだろう。
レイが単体でミノタウロス五体を完封していたところから見るに、霊体になるだけで強くなっていると考えていい気がする。
「ま、とりあえず帰るか」
『ワォン!』
『グモォオ』
おかしなパーティーになったが帰路に就くことになる。
行きの道よりもパーティーは減った。だがそれでも、行きの道より遥かに足取りが軽い。
「どうするかなぁ。ここをでて、まずはギルドに報告に行くだろ?」
『クゥン!』
『グモォ!』
わかってるのかわかってないのかわからない二匹が返事をしてくれる。
「その後はどうするか……ネクロマンサー、だったかな。他にもいるのかね?」
『クゥン?』
テイマーは何人か見てきたがネクロマンサーは初めて聞いた職種だった。
「仲間を探してもいいし、ソロでやっていってもいいし、お前らは何がしたい?」
そんな話をしながらダンジョンを抜けていく。
強くなった二匹のおかげで全く苦戦することもなくすんなり抜けてこれていた。
「逆にもう一回ここに来て攻略するのもいいか」
夢を膨らませながらダンジョンを生還する。
さて、いずれにしてもまずは、俺を殺しかけたあいつらのところに行かないとだな。
別に仕返しをしたいとは思わないが、物を返す必要もあるし、しっかり報告に行く必要もある。
「いっそ勇者を目指すのも面白いかもしれないな」
色々な可能性に頭を巡らせながら、2匹と不思議な旅をスタートさせた。
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短編投稿文終了です
次から新章!
次は別れたパーティー側の視点を挟みます
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