042 元パーティー視点
「さて、とっととやっちまおうぜ! なぁクエラ!?」
竜の骸。
その巨大な頭蓋骨を無遠慮にバンバンと叩きながらロイグは言う。
「ロイグ? 何をするつもりだ!?」
あくまでここにきた目的は調査のはず。
だというのにロイグの様子はまるで調査をしにきたものではなかった。
「ああ?! フェイド。今の俺たちの状況を考えろ」
「状況……?」
「あろうことかあのクソ雑魚ランドのせいで俺たちはいまやSランクパーティーの資格を剥奪される危機にある」
「まさか……」
ロイグの言葉はフェイドにとってみればあり得ない話、いや、考えたくなくて頭から排除していた話だった。
意図してその可能性を頭から排除していたことに、今になってようやく気付かされていた。
「ん……フェイドはともかく、ロイグはもう冒険者じゃいられない」
「だぁっ! っるせーんだよ! どのみち前衛なしじゃてめえらも大したことできねえだろうが!? 違うか?」
「それは……」
フェイドは押し黙って考える。
メイルの言う通り、ロイグの立場が危ういものであることは当然意識をしていた。
だが一方で、自分は大丈夫だと甘く見ていた部分がある。
ロイグなしで……。
間に合わせとはいえ前を張っていたランドもいない中、自分が前衛として二人を守るような立ち回りを求められれば、まず十分な力は発揮しきれない。
二人もそうだろう。不安定な前衛では十分にポテンシャルを発揮できないことは、ランドなしに抜けようとしたあのダンジョンで痛いほど思い知っていた。
なんならここへ来るまでの道中ですら、様々な場面で苦戦を強いられる羽目にあっていたほどだ。
戦闘以外の雑務も含め、嫌でもランドの存在を意識させられ続けた道中だった。
フェイドは意地になってその雑務をこなしてきた。
それもひとえに、パーティーメンバーにランドの必要性を認識させないためだった。
「状況はわかるが、それといま何が……」
「ったく……お前は本当、俺がいねえと今もBランク止まりだっただろうな!」
「くっ……」
フェイドもわかっていた。
ランクを駆け上がるためのあの手この手の技術は圧倒的にロイグにあった。
評価を上げるための依頼の選び方、依頼達成の優先度、時には成果を大きくするため時期をわざと遅らせることすらあるほどだった。
それはフェイドにはなかった知恵だったし、フェイドだけでは実行しようと考えもしなかった手段だった。
この躊躇で完全に主導権はリーダーのフェイドからロイグに移っていた。
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