041 【後半元パーティー視点】
「まぁ、瘴気の量で想像はついていたとはいえ……大きいわね」
竜の骸。その顔面部分だけで一軒の住居ほどの大きさがある。
全体像は見渡せないほど巨大な竜だったことが窺える姿だった。
「で、ミルムの見立てで、どのくらい保つ?」
「ま、余計なことをしなければ数十年ね。で、数十年もすれば竜の魔力の方が尽きるから、百年後には元どおりというところかしら」
「良かった」
とりあえず何事もなく調査を終えられそうだ。
「あとはこの辺りで他の依代がないかだけね」
「それについては俺が役に立てそうだな」
範囲に向けたネクロマンスを何度かやりながら歩けば周囲で死んだ魔物や迷い込んだ動物も除霊ができる。
反応があればそこに行って死体の処理をすればいいってわけだ。
「じゃ、回るか」
「ええ」
また手をかざすだけで道を開けるように拓いた瘴気の中を通って、竜の墓場の調査は順調に進んでいった。
◇
ランドたちが到着してしばらくしてから、四人の冒険者が竜の墓場に足を踏み入れた。
「くそ……ランドのやろうなんだあれは!?」
「フェンリル……」
「馬鹿な……! あの犬はただの一角狼だったはずだぞ!?」
「存在進化……でしょうか。伝説に残るテイマーには使い魔の進化を促進するものも……」
「馬鹿野郎! ランドが伝説に残るようなテイマーなわけねえだろ」
四人の、特にロイグの頭ではランドは使えない雑魚という認識がこびりついて離れなくなっていた。
いや正確にはその認識を改めるわけにはいかないのだ。それを認めた途端、自分たちのあのときの判断ミスを突きつけられることになるから……。
「とにかくドラゴンのほうへ。まず確認をしないとな」
「けっ……ランドの野郎が余計なことをしてねえといいけどな」
「ですが……私達が以前来たときとは比べ物にならない瘴気ですね……」
クエラは正式に依頼を受けていたなら、この瘴気を払いきれたかと自分に問いかける。
答えは出なかった。
少し前のクエラなら正確な答えを出せたかも知れない。
だが今の彼女にとって、それを認めること、それを実行することはあまりにも、彼女の、そして背負った組織のプライド上許されなかった。
彼女の胸の奥底に芽生えた答えは、「自分ひとりでなく、何人かの神官を連れてくれば完全に瘴気を払える」というもの。
今の彼女に人に頼る余裕は、色んな意味でなくなっていた。
「よっしゃ! 行くぞ! 俺が前だ! 今度は遅れんじゃねえぞ!?」
「待てロイグ!? 少しでも離れれば見失うほどの瘴気だぞ!?」
「だから遅れんなって言ってんだろ。おら!」
フェイドの制止も聞き入れずぐんぐん進むロイグになんとかクエラとメイルはついていった。
殿をフェイドが務める形で進む。
ランドたちとは対照的に、視界を奪われた不安定な竜の墓場調査が幕を開けていた。
しばらく元パーティーしてん続く予定です




