004
「キュウアアアアアアアアアア! ガッ!?」
「グォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「キュアアア……ギュッ……ガァッ!」
「レイ! 待てやめろ! どうして!?」
一角狼はBランクの魔物だ。俺の身に余る本当に優秀なパートナーではある。
だが、もちろんミノタウロスに敵うはずもない。
ましてや5体もいるミノタウロスに挑んで、無事にいられるはずはない。
「やめろ! やめてくれ! お前だけなら逃げられるだろ!?」
「キュウアアアアアアアアガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
目の前で蹂躙されていく相棒。
「待ってくれ……どうして……」
しばらく走り回って攻撃をかわして来たレイだが、ついにミノタウロスの剛腕に捕らえられた。
「ガッ……」
「レイ!」
ミノタウロスの持っていた手斧が、レイの頭に吸い込まれていく。
そして、無情にも斧は振り下ろされた。
「レイぃいいいいいいいい」
「きゅっ……ぎゅぁ……ぁ……」
「レイ! レイ!」
思わずレイのもとに駆け込んでしまっていた。
ミノタウロスが俺もろとも狙ってきていることなど目に入っていなかったんだと思う。
そのくらい、今はもう、レイのそばにいたかった。
「レイ……」
最期の瞬間。
ミノタウロスの振り下ろす斧はスローモーションのように見えていた。
「ごめんな……すぐ行く」
動かなくなったレイを抱きしめながら目を閉じた。
だが一向に、待っていた最期の瞬間が訪れることはなかった。
「え?」
『キュォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン』
「レイ?!」
目を開けると不思議な光景が広がっていた。
死んだはずのレイがなんと、ミノタウロスの斧を弾き飛ばし、その上ミノタウロスの一体の首筋に噛みつき、引きちぎっていたのだ。
「グモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
それはミノタウロスの断末魔だった。
だがおかしい。確かにレイは俺の腕の中にいるというのに、なぜあちらにもレイがいるんだ!?
「グモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
『キュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
「グォァアアアアアアアアアアアアアアア」
レイの分身のような何かは圧倒的な強さを誇っていた。
ミノタウロスの攻撃などまるで意に介さず、的確に急所を攻撃し、一体、また一体とミノタウロスを屠っていた。
そして最後の一体。
「グモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
『キュアアアアアアアアアアア』
「グ……ガッ……」
バタン、とミノタウロスの巨体がダンジョンの地面に倒れ落ちていた。
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