035
「北にある山岳地帯の一角に、昔勇者が討伐した巨大な竜の骸が眠ってる」
ミルムに向けて説明する。
「ふーん。人間にとって竜っていい素材なんじゃなかったのかしら? なんでそのまま放置したのかしら?」
ミルムの疑問はもっともだ。
ギレンが答えを引き継いでくれた。
「でかすぎたんだ」
「でかすぎ……?」
「今になりゃ竜種相手でもな、倒すような力のある冒険者なら持ってこれるんだが……当時の勇者たちにその技術もなかった。ましてやこれについては今の技術でもどうかと思うほどにはでかい。ちょっと格が違ったわけだ」
結果、朽ち果てるまで放置された竜の骸は、そのままその地に残された。
今となってはもはや竜の骨が地形の一部にもなっているほどだ。
そしてその竜の膨大な魔力が瘴気となり、周囲は草木も生えぬ死の土地と成り果てている。
「定期的に神官が瘴気を祓ってたんだがな。いまこの地にいる最高神官は事実上謹慎中だ」
クエラのことだな。
「というわけで、お前さんに白羽の矢がたったわけだ」
「なるほどな……」
まあ確かに、聖女見習いを除けば俺が一番向いてるだろう。
だが、一つ引っかかることがあった。
「調査はいい。だが問題の解決までは約束できないぞ」
「ちっ……細けえことに気づきやがる……」
「だから正直にお伝えした方が良いと言ったじゃないですか」
ニィナさんがたしなめる。
やっぱり何か裏があるらしい。
「仕方ねえ……この話は他言するなよ?」
「ミルム、大丈夫か?」
「私の話し相手は貴方しかいないじゃない」
「それもそうか……」
ということで話を聞く姿勢をとる。
「ここ最近、竜の墓場はギルドの記録を遡っても例を見ない瘴気に包まれてる」
「もう異常があるのは確定ってわけか……」
「最悪の場合この依頼は……」
「ああ。ドラゴンゾンビ討伐依頼になる。それも、過去例を見ない最大級のやつのな」
先に反応したのはミルムだった。
「面白いじゃない」
ミルムはなぜか目の色を輝かせていた。
「ちなみに相手がドラゴンゾンビだとして、ミルムなら勝てるのか?」
「聞いた話だけでの判断だけど……一人じゃ無理ね。大きすぎるわ」
「じゃあ……」
「一人じゃ、と言ったでしょう? 直接戦ったのだからわかるわ。あなたとなら問題ない」
過大評価だと思う。
「ま、俺もランドなら大丈夫だと思って言ってるからな。流石にいざドラゴンゾンビになったとしたらギルドをあげて討伐隊は作る。お前らだけで戦うのは本当によほど運がいいか悪いかって時だけだ」
「そうですね。ランドさんなら大丈夫でしょう」
「どこにそんな根拠があるんだ……」
ギレンもニィナさんも結構適当なところがあるからなぁ……。
「ま、何かあれば私がなんとかしてあげるわよ」
「頼むぞ……」
ミルムならなんとかしてくれそうな気もする。
信じてみるとするか。
「よし! 話は決まった」
「あとは……ミルムさんも冒険者に登録したほうがいいですよね?」
「冒険者……! 私もなれるの!?」
「もちろんです。我々は他種族を差別しません」
目をキラキラさせたミルムがこちらを見て言う。
「人間も捨てたもんじゃないわね!」
「まあ、気に入ってもらえたなら良かったよ」
もともと仲間なんだからこうするつもりではあったけどそれは言わないでおこう。
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