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「で、この子たちのこれよね。良いわ」
「おお」
「ただし、もう戻れなくなるわよ? 良いのかしら?」
ミルムは俺でなくレイとエースを見て尋ねてくれた。
すぐに二匹が返事をする。
『キュオオン』
『グモォオオ』
同意を示したことはミルムに伝わったらしい。
「そう。わかったわ」
ミルムが目を瞑る。
ミルムの周囲を黒い渦が包み、そのまま前にあった二匹の身体を包み込む。
ドロドロと溶けるように身体が黒い渦に吸い込まれていった。
次の瞬間、黒い渦が輝きを放って二匹の身体が変化した。
「これは……?」
「よし。成功ね」
光が収まり、現れたのは……。
「角? だな」
「そうね。私にできるのはそこまでよ」
見ただけでただツノを切り出しただけのものとは違うことはわかるんだが……。
するとレイとエースがそれぞれの角を取って吠え始めた。
『キュオオオオオオオオオオオオオオン』
『グモォオオオオオオオオオオオオオオ』
二匹の霊体がそれぞれ輝きを放つ。
同時に持っていた角が体内に取り込まれるように消えていく。
──レイの存在進化が確認できました 最上級種フェンリルへと進化しました
──エースの存在進化が確認できました ミノタウロスは最上級種のため、ユニークモンスター「エース」となります
──存在進化にともない大幅にステータスが強化されます
──使い魔強化によりレイ、エース、ミルムのステータスが大幅に向上しました
「なんだこれ……」
「元々強かったのが精霊になって強くなってたわけだけど、肉体と離されてた分やっぱり力は落ちるのよ」
「それが戻ったってわけか……?」
「そう。身体が綺麗だからそちらを器にする手段もあったけど、この子たちは強くなりたがってたから」
「そうなのか」
『キュオオオン』
『グモォオオオ』
役に立ちたいという意思表示だった。
「懐かれてるわね」
「不思議なことにな」
「そうかしら? 理由はわかる気もするけどね」
ふわりと俺から離れ、強くなった二匹のもとに飛んでいくミルム。
ま、考えても仕方ないか。
「そういえば、ネクロマンサーが不死に近いって、どういう意味だ?」
「ん? ああ……そのままの意味だけど……そうね。人間に比べて死に触れる力が強い。それを私たちは宵闇の魔力と呼んでいるわね」
「宵闇の……ただの闇属性とは違うのか」
「んー、闇魔法の中のひとつ、かしら? とりわけ死に関するエネルギーは特殊なのよ」
なんとなくわかる気もするし、なんとなくわからない気もする。
「まああれね。私たちは血を飲むと寿命が伸びる。これが宵闇」
「あー」
なんとなくわかった気がするような、しないようなという感じだった。
「ま、難しく考えても仕方ないじゃない! あなたは私に似てた。それだけでいいでしょ?」
屈託のない笑みを向けられ思わずどきっとする。
ドタバタしていたせいで忘れかけていたが、よくよく考えるとこれだけの美少女と近くにいるんだ。ドキドキしないはずはないな。
3回目!




