214 戦いの終わり
「見えてきたわね」
「ああ……って、あれ、まずくないか!?」
アールに乗って領地に戻ってくると、明らかに桁違いのパワーでぶつかる二人の冒険者を見つける。
しかし……。
「増援は期待できないって言ってたけど、味方か……?」
「ロバートあたりが戦ってたりして」
「そのほうが現実味があるけど……」
「まあいいわ。あっちは私が行ってあげる」
【夜の王】を発動したミルムが影になって消えていった。
「あっちは、ってことは……」
俺は領地の入り口にあたる森で小競り合いを続ける騎士団を見下ろしながらそちらに向かっていった。
◇
「我々の負けか」
騎士団の対応は非常にあっさりしたものだった。
ゴーレムとの戦闘指揮に立っていた団長ベリウスは俺が地上に降りるとあっさり剣を収めた。
「そうだな」
俺もゴーレムの動きを止める。
セラのおかげで仕組みが複雑になっていたが、答えを知っていたし上から見てたからな。
「にしても……騎士団はもともと攻めてくる気があまりなかったように思えるな」
「さて……私は攻め入る気があったのだが、副団長が言うことを聞かぬもんでな……」
ベリウスが笑う。
入れ替わりで副団長、ガルムが現れた。
「ランド殿……この度は……」
「いや、その当たりはあとでまとめればいい。まずは怪我人の治療が必要だろう。隊をまとめておいてくれ」
「はっ……」
ベリウスもガルムも、おそらく考えは一致していたのだろう。
この戦いは、俺とミレオロの勝敗によって決まると。
仮にベリウスが本気で侵攻してこの地を滅ぼしたとしても、俺とミルムがミレオロを倒して戻ってくれば何の意味もないことを理解していた。
だからこそ、ここで小競り合い程度のやり合いに乗ったんだろう。
まあもちろん、小競り合いになるだけの戦力を適時投入して対応したアイルの指揮も良かったんだろうけど。
ミルムの向かった先も戦闘が終わっていたし、これでひとまず、落ち着いても許されそうだった。
◇
「大丈夫なんだろうな!? カイエン殿」
「ええ……ギルドから送り出した戦力は万全です」
カイエンの言葉に偽りはない。
出来る限りのことはやったと言える。
Sランクは急増を含めて10組。
中でも二組は、個人で戦略兵器とされるSランク超級のレジェンドを送り込んでいる。
「そうか……いいな? なにかあれば騎士団に罪をかぶってもらう」
「ええ。それはもちろん」
ぶつぶつそう言いながらうろたえるリットルに、かつての面影はもうない。
その姿を見て、カイエンも自分の行末を悟りつつあった。
順風満帆だったはずの出世街道の行き着く先がこんなところになるとは、現役時代には二人とも思っていなかった。
当然ながら二人の罪は騎士団にかぶせられるほど小さいものではなかった。




