212 決戦③
「フェイド……」
「ん……やっぱり、中身が抜けテちゃ、役に立タない」
メイルの口調で、でもミレオロの狂気を乗せて、そんな言葉が発せられる。
魔法の応酬のさなか、突如投入された伏兵は、ほとんど何の意味も持たないままに、かつての仲間の命を一つ奪っていた。
罪滅ぼしに身を捧げたい、そう言ったから願いを叶えたつもりだったが、その言葉もクエラにとっては上辺だけのものだったらしい。
クエラは自らの骸に縋りついている。
「メイルはもう、フェイドにもクエラにも、何の興味もないか」
「ん……続きヲ、スる」
「そうか……いや、もう必要ない」
ミルムとレイとエースが、周囲の相手を片付けてくれた。
もう誰がどう見ても、あの相手は俺たちが救える命じゃなかったから……。
「【ネクロマンス】」
――ゴーストのネクロマンスに成功しました
――グールのネクロマンスに成功しました
――スケルトンのネクロマンスに成功しました
――レイスのネクロマンスに成功しました
――レヴァナントのネクロマンスに成功しました
──ゴーストのネクロマンスに……
ミルムたちがやってくれた相手以外にも、周囲に感じた死の気配にスキルを発動していた。
狙い通り、ここにはミレオロがもたらした死が蔓延していたのだ。
無数の死が俺に力を与える。
「今更、ソの程度で何も変わラない」
「そうとも限らないぞ。メイルのおかげで一つ、思い出せたからな」
フェイドの骸が動いたことは、相手にとっては意味のない奇襲に過ぎなかったかもしれない。
だが俺にとっては、大きな意味をもたらしていた。
――エクストラスキル【特級剣術】がユニークスキル【勇者の剣術】に進化しました
得られた力をもとに、目の前に現れた『勇者』の姿を見た結果、能力が開花した。特級剣術はかつて、フェイドの能力を吸収したことで得られたスキルだった。
別に俺は魔法が得意なわけではない。
魔法を扱えば大陸でも最高峰のメイルを相手に魔法の応酬に応えていたのは、俺のユニークスキルに物理攻撃がなかったからだ。
「えっ……?」
メイルの一瞬の呼吸の間を縫うように、俺の剣はメイルの小さな身体を貫いた。




