208 決戦②
「ランドさん! メイルは! メイルにミレオロが!」
クエラの叫びで疑問が確信に変わる。
と、同時に……。
「グルゥウウアアアアアアア」
「なんだこれっ!?」
周囲を埋め尽くすのはグールかと見紛うほどに自我を失った……。
「エルフ……獣人……あれは……冒険者たちか?!」
中から反応が多かったのはこれが原因か。
「何があった、クエラ」
「ミレオロがメイルに乗り移ったあと、実験室に繋がれていたものたちが動き出し……その後この場所にやってきた冒険者の皆さんも……」
「そんな無差別攻撃なのかっ……?!」
少なくとも俺には効果がないのが不幸中の幸いか……。
いやとにかく、目の前にいる敵がメイルだけではないことが問題なのだ。
クエラに敵意はないとはいえ、もう信用できるような相手ではない。
そして何より、いまメイルから目を切るのは非常に危険だと、本能が告げていた。
「レイ、エース、周りの相手を頼む」
二頭は答えるよりも早く周囲から迫っていた敵を叩き潰しに駆け出した。
俺のもとに向かってきていた周囲の冒険者たちは、動き出したレイとエースに吹き飛ばされる。
だがそれでも、一撃で沈むことはなく立ち上がり襲い来る様は……。
「まるでアンデッドだな……」
「違う……生きテる」
趣味の悪い話だった。
生きたまま、操り人形にしたということだ。
だが死者でない相手に俺のスキルは使えず、意識をそちらに持っていくと目の前のメイルがなにか仕掛けてくるのはわかっている。
お互いにらみ合いを続ける形になったが……。
――ドンッ
「あら、随分小さくなったのね」
「……お前ハ……」
「残念。貴方の相手は私じゃないわ」
「ミルム!」
上空で戦っていた相手は地面に叩きつけられた衝撃を受けてなお、抵抗を見せていた。
どんな原理かわからないが一体一体が異常な生命力を持ちながらアンデッドにはなっていないという相手。ミルムだからあしらえているが、一体一体がSランク相当だった。
「随分お客さんが多いようだから来てみたけど……あれ……古代竜の比じゃないわよ」
噛みつこうと目を血走らせる冒険者だった何かを軽くあしらい、ミルムが俺に耳打ちする。
周囲の敵も相当なものだが、ミルムの言う通り……。
「ああ……メイルはもう……」
「野放しにすれば領地どころじゃない、国が滅ぶわ」
その言葉に改めて気合を入れ直す。
メイルはそれでなくとも天才だった。
あの魔法の才能は、若くして歴代の大賢者のそれと並び立っていったほどだ。
だからこそ、そこにミレオロの狂気が加わった今、目の前の存在が国を脅かすほどの強大な存在であることに何の疑いもない。
「周りの雑魚は引き受けるわ。貴方はあれを……」
「ああっ!」
手をかざす。
メイルが杖を抜いたが、そのスピードはもはやかつての後衛職だったメイルのそれとは異なっていた。
「早いっ?!」
慌てて【黒の霧】と【夜の王】防御回避に集中したが……。
「ぐっ……」
杖から放たれた魔法が何かはわからなかった。
いや、何かなんてもはや、関係はないのだ。
属性の相性や状態異常の効果なんてものは、とっくに関係ないステータスになっている。
そうなればもうこれは……。
「お互い、アンデッドと戦ってるようなものだな」
「ん……」
魔法攻撃の応酬が始まった。
三巻の情報、そろそろ出ます〜
コミカライズも!




