207 決戦①
「罠がないといいけど……」
アールを飛ばしながらミルムに声をかける。
「準備を整えた相手を迎え撃つのか、準備してるかわからない相手を叩くのか、どちらが良いかでしょうね」
「まあなぁ」
「私なら別に気長に待ってもいいのだけど、貴方たちは早く片をつけないと短い寿命なのにつまらないことを気にかけて生活し続けるものじゃないわ」
「それもそうだな」
「ふふ。眷属になるというのなら、それも良いのだけど」
ミルムが微笑む。
「眷属か……それ、なったら何が変わるんだ?」
「さぁ……? 言ったでしょ? 私もわからないって」
「そうだったな」
ミレオロとの、そしてメイルとクエラとの関係にケリを付けたら、考えるのも一つの手かもしれない。
「さて、ここまでは何事もなく来れたけど……」
森の奥深く。
誰も好き好んで入り込まない人里を遠く遠く離れたその場所に、ポツンと一つの小屋が立っている。
「ここに……」
「悩んでいても仕方がないのだし、仕掛けたほうがいいんじゃないの?」
「ああ」
アールの上から小屋の様子を探る。
中から感じる生きた人間の数は……。
「数が多い……?」
「数だけは……ね。ほとんど死んでるわよ」
「どういう……なっ!?」
小屋からありえないスピードで何者かがこちらに向かってくる。
「予定通り、貴方は本体に集中するといいわ」
ミルムが【夜の王】で相手を捉えたかと思うと、アールの上から飛び出していった。
「やるしかないか……」
先手を取られた形だが、俺もアールから飛び出して小屋に飛び降りていく。
「アール! 上空で待機してくれ。ミルムの様子には一応気を配りながら!」
『きゅるー!』
可愛らしく応えてそのまま空高く離れていくアールを見送り、今度はレイとエースを喚び出す。
「いくぞ!」
『キュオオオオオオン』
『グモォオオオオオオ』
俺も翼を展開しながら、真っ直ぐ小屋めがけて急降下していった。
――ドゴン
着地と同時に小屋を破壊して飛び込んだのだが……。
「これは……」
「ん……ヤっと……きタ」
「メイル……いや……お前は……!?」
そこにいたのはメイル。
だがその目にあの、狂気じみたオーラを宿らせている。
これではまるで、ミレオロとメイルが合体したかのような……。
クライマックス〜




