202 決戦準備
「ランドさん……!」
「アイル、突然出て行って悪かったな」
ベリモラスが異変を感じたということでエルフの森に向かったわけだが、アイルたちに残ってもらったこちらは何事もなかったらしい。
「表情から察するに、千載一遇のチャンスは逃したのかしら」
ミルムは言葉のわりに柔らかい表情でそんなことを言ってくる。
エルフの森の異変は原因がわかっておらず罠の可能性もあったので、ミルムに残っておいてもらったのだ。
場合によっては宵闇の棺ですぐに呼び出せるという理由もあったが。
「そうなるな……ただまぁ、ベリモラスも手伝ってはくれたぞ」
ベリモラスの協力を取り付けられたのはミルムの言うとおり、非常に大きなチャンスだった。
神竜は従えているというよりお互いが契約に縛られている状態。気が向いた時にだけ繋がっているというのが今の状況だ。
次もまたベリモラスの協力が得られるかと言えば、おそらくそうはならないからな。
ひとまずあちらで何が起きたかを伝えて、今後の方針を決めることになった。
◇
『改めて、この領地の戦力はこちらでございます』
「ありがとう」
俺からミレオロたちの状況を伝えると、ロバートさんがこちらの戦力を改めてまとめてくれた。
「これだけいれば、騎士団は大した問題にならなそうね」
「そもそもなんか揉めてる様子だったしな。やっぱり問題はSランク冒険者たちがどれくらい来るか、だな」
「今回の件でなりふり構わず数を増やしたりしなきゃいいけど」
ニヤッと笑うミルム。
嫌なことを言う……が、その可能性は大いにあるからな……。
「元々は3名と言うことでしたが……増えると?」
アイルの質問の答えはハッキリとはしないが……。
「目的はハッキリしないにしても、エルフの森で相手はやろうとしていたことが果たせなかった可能性が高い。となると、わかりやすく戦力調達に走るのはまあ……」
「あるでしょうね」
「……」
考え込むアイル。
領地はダンジョン周回のおかげで順調にアンデッドたちが強くなっていっているが、こちらは人でも死ななきゃ仲間は増えない。
今回のエルフの森の犠牲者は、意思のあるものだけは連れてきたから増えたのは上位種五体ほど。
ミッドガルド商会、セシルム辺境伯、そしてギレンからの増援は見込めない。
対する敵は王都ギルド、騎士団、魔法協会がどこかから人を連れてくる可能性があり、少なくとも3名ほどSランクが加わると予想されている。
ミレオロの性格を考えれば増強された戦力が向かう先は……アイルが守るこの場所になるだろう。
ミレオロに合わせられるSランクなどいないだろうから。
その上で、アイルが口を開いた。
「ランドさんとミルムさん、そして三大使い魔の皆さんは対ミレオロのため遊撃となり、残る私とロバート以下、この領地の戦力で守備を固める。この方針を変更はしないでおきましょう」
「……いいのか?」
Sランク二人までは引きつけるとは言っていたが、それを超える可能性があるのだ。
「はい。こちらのことはお任せください」
どんな心境の変化があったかはわからないが、アイルの目には任せられる何かがあった。
それを受けて、ミルムがこちらに問いかける。
「ミレオロの相手はしてくれるんでしょう?」
「ああ」
ミルムにミレオロ《ヴァンパイアハンター》の相手はさせたくない。
「なら、もう他のことは気にしなくて良いようにしてあげるわ」
ミルムの頼もしい言葉で改めて動き出す。
「当てはあるの?」
「ベリモラスのおかげでな」
ベリモラスの呪いの効果は全てはわからないが、俺はもう、ミレオロを見失うことはなくなったのだ。
毎日更新目指して書組んで明日も更新予定です
共著の新作連載スタート、よろしくお願いします(タイトル変わりました)
https://book1.adouzi.eu.org/n1757gt/
「田舎者は帰れ!」と追放されそうになったけど、このまま俺が帰るとみんな死ぬけど本当にいい? 〜竜王族に『生殺与奪の権』を握られていることを知らない貴族たちに人類の命運がかかっているそうです〜




