200 相対
「やりナ。メイル」
「ん……」
ミレオロの指示に従い、メイルが三度目の極大魔法を放とうとした瞬間だった。
「【ネクロマンス】」
「――!? これは……!」
エルフの森。神域ダンジョン【久遠】の入り口にほど近いこの場所は、大陸唯一のネクロマンサーの使役する魔物の中でも最も格が高い存在のゆかりの地であった。
「チっ……ちんタらしてるから邪魔が入ったじゃァないカ」
ミレオロが空からの侵入者を見上げる。
単体戦力で他の追随を許さない彼女を持ってしても、その存在は脅威だった。
「ランドさんっ!」
クエラにとって救世主にすら思えたランドの登場。
だがランドはクエラと目を合わせることもなく、冷たく睨みつけるだけだった。
ランドに付き従うのはいつものフェンリルではなく……。
「ベリモラス、あれが元凶だ」
『ふむ……不思議なものだ。我を封じ続けた場所だというのに、他者に荒らされるのは我慢ならぬとはな』
大地の覇者。
神話上の存在とされた伝説の竜、ベリモラスだった。
◇
──エルフをネクロマンスしました
──スキル【精霊の加護】を取得しました
──エルフをネクロマンスしました
──スキル【属性強化 木】を取得しました
──エルフをネクロマンスしました
──スキル【星詠み】を取得しました
──能力吸収によりステータスが向上しました
──使い魔強化により使い魔の能力が向上します
俺のスキルが発動したということは、間に合わなかったということでもあるわけだ。
だがことここにおいての相手の目的であるエルフの実験体回収は阻止できたことになる。
命は救えなかったが、死者への冒涜までは許さずに済んだ。そう思うしかないだろう。
「ベリモラス」
『良かろう』
もはや作戦などない。
ベリモラスの力は圧倒的だ。
ベリモラスとの交渉の結果、この場所に限って、その力を発揮することを約束したのは良いものの……。
「チッ……引くヨ」
やはり……。
ミレオロは狂っていても馬鹿ではない。
神獣を相手に正面から戦いはしないだろうと言われていた。
だが……。
「逃がす前に何か出来るか?」
『……仕方あるまい』
――キィィィィイイイイン
ベリモラスが口を開けた途端、周囲に甲高い何かが響き渡る。
相対するミレオロは一瞬表情を歪ませたものの、そのまま自ら作り出した空間魔法でその場を後にした。
クエラとメイルとともに。
「何をしたんだ……?」
『逃げてなおヤツを苛む呪いだ』
「呪い……?」
『とはいえ、逃げると決めたあやつを捕らえるほどの力は我になかった。我の好意に感謝せよ』
ベリモラスはそう言うと、仕事は終わったとばかりに姿を消す。
俺もここに来た目的は果たしたし戻るとするか……。
決戦はもう少し先。それをお互いわかっているからこそ、ここに出てきたんだ。
「次で……終わらせる」
慌てて撤退する騎士団たちを眺めながら、かつての仲間に思いを馳せていた。
三巻発売決定しましたー!
クライマックス、頑張って執筆していきます!
なるべく頻度よく更新する予定です!
『新作! お願いします!』
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【悲報】生殺与奪の権を竜に握られた人類、竜国の使者を「田舎者」呼ばわりして追放しようとしてしまう~俺は学院生活を楽しみたいだけだから気にしないけど、俺を溺愛する竜王族の姉は黙ってないかもしれません〜




