199 エルフの森の救世主
「なんだ……これ……私は、死ぬ……のか?」
「うわぁあああ。嫌だ! 嫌だ!」
「とにかく逃げなければ……」
エルフの里は突如放たれた大魔法により大混乱に陥っていた。
人間と比べれば無限と言っても良い寿命を持つエルフたちにとって、死という概念は非常に遠いものであった。
それが突然目の前に運び込まれてきたのだ。その混乱っぷりは筆舌に尽くしがたい。
「団長……」
「我々の任務は逃げてくるエルフたちを食い止めることだ。一人でも取り逃がせば我々の居るこの場所ごと焼き払われる……我々が何もしなくとも、彼らはもう助からん」
団長ベリウスの表情は、その口から出た言葉ほどに割り切れたものではなかった。
「うわぁああああああ」
「来るぞ!」
混乱に陥っていたエルフのうちの何人かが、そのままの勢いで森を出ようと駆け出した。
「んじゃあまぁ、仕事をするとしますか」
いち早く反応したのはヴェイだった。
森を駆け抜けようと走り出したエルフたちを素早く迎え撃ち――
「うわっ⁉ なんだ……⁉ 人間⁉」
「まずいぞ! 森を奪われた我々に抵抗する術は……」
「ほう? そいつぁいいことを聞いたぜ。安心して狩りができるってわけだな!」
「ひぃっ……!」
エルフの青年の悲鳴。
それとほぼ同時に……。
――ガキン
「……なんのつもりだ? ジル」
騎士団随一の剣術を持つヴェイに抵抗したのは、若き才能であるジルだった。
「なんの罪もない相手を斬るのが、騎士団の仕事だなんて、そんなこと、間違ってるはずです」
「あぁ⁉ 間違いだろうがなんだろうが命令が出た! それが全てだろうが!」
「それでも俺は! 彼らを見殺しには出来ない!」
「なら一緒に死んどけや!」
――ガンッ
ヴェイの剣を止めたのは副団長ガルムだった。
「副団長……あんたもかよ」
「ああ。そして私もな」
「ちっ……くそがっ!」
ヴェイの背後に素早く回り込みその身柄を押さえたのはビンド。
騎士団にクーデターが起きた瞬間だった。
「ガルム、馬鹿な真似はよせ」
「団長……最高戦力のヴェイが抑えられた以上、何も馬鹿な真似と言い切れる状況じゃないかと思いますが?」
「……違う。その先を見ろ。ミレオロを敵に回した我らに未来があると思うか?」
「逆ですよ団長。あのアンデッドタウン。あれこそ絶対に敵に回しちゃいけない相手ですよ」
「そうか……」
剣を抜くベリウス。
そのオーラは全盛期を過ぎてなお、歴戦の猛者であるガルムを、そして味方であるはずのヴェイですら、身震いするほどに強大なものだった。
「構えろ。ガルム」
「団長……」
騎士団のトップツーが剣を持ち向かい合う。
だが、それ以上の発展はこの場では起こらなかった。
――ズン
「なんだ⁉」
「これは……この力は……」
森の空気が重くなったのを、その場にいた騎士団たちが全員感じ取ったのだ。
「まさか……もうぶつかるのか?」
副団長ガルムは、その異様な雰囲気に身体を震わせながらも、どこか期待を込めて森の上空を見つめていた。
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