196 エルフの森へ【クエラ視点】
エルフの森。
ベリモラスが封印されていた神域ダンジョン【久遠】の、そのすぐそばの森にミレオロたちは姿を見せていた。
森に向かったのはミレオロ、メイル、クエラの三人と、別働隊として騎士団の人間たちが動いている。
「メイル、あんたカら見せてやリな」
「……ん」
突如、メイルの周囲に無数の魔法陣が浮かび上がる。
その数はかつてデュラハンと対峙したときから、数倍に膨れ上がっていた。
「良いじゃァないカ。アタシの教えが役に立っタかい?」
「……気が散る」
取り合わないメイルだがミレオロの言葉は否定できないものがあった。
メイルの力はミレオロによって以前までの数倍に膨れ上がっている。
単体Sランク――その力を持った冒険者を相手取っても、数人相手ならやられないだけの力がある。
パーティーとしてSランクまで上り詰めたクエラがその様子を見た印象は……。
「おかしい……」
その一言に尽きた。
人は普通こうも急激に成長しないのだ。
ランドがパーティーにいた頃と独立してからで大きな差が出た事例。
あれはフェイドの話から考えるなら、ランドには元々相当な才能があったのだと、クエラは考えていた。
「それこそ私たちとはまるで違う才能があった……」
それがあるきっかけで爆発した結果、ネクロマンサーという唯一無二の存在へと覚醒した。
だがメイルの変化はおかしい。
明らかにステータス自体が大幅にいじられているのだ。
ランドとは違い、メイルは自分の才能を百パーセント以上に活用する技術を持ち合わせていた。
「あれじゃあ……身体が……」
メイルは天才だ。
自分の限界を強制的に超えさせる技術……ミレオロの助言をメイルは余すところなく生かしきることができる。
その結果身体にダメージがあることも、当然理解していた。
そしてエルフの森にやってきた理由もまた、メイルだけが理解していたのだ。
「……これで、身体の心配はなくなる」
「サすがはメイルだ。そうサ。肉体が才能に耐エきれないのナら、その肉体をいじっちまえばいいんだヨ。その材料はここにいくらデもあるんだからねェ」
その言葉を聞いて、クエラはついに決意を固めるに至った。
「私が……止めないと……」
クエラは奇跡の聖女として、慈愛に満ちた存在として、人々と接し続けてきた。
それは本人も意識しない部分で、呪いのように、彼女が彼女自身に対しても自愛の精神を育み続けていた。
「私が……」
震える身体を抱きながら、クエラは初めて覚悟を決めた。
自分の信念を守るために、目の前の強大な相手と戦わなければならない。
彼女が真の意味で聖女へと至る、その第一歩が踏み出されようとしていた。
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