194 副団長の苦悩
王都騎士団副団長ガルムは悩んでいた。
ランドの領地の視察。もはや騎士団では歯が立たないことは身に染みて理解させられた。
いかにしてこの状況を打開するべきか……だが騎士団副団長という立場はこの場においてあまりに発言権がなかった。
「報告は……以上になります」
団長ベリウスが冷や汗をかいているのだ。そんな状況で自分に何か言えるはずもなかった。
報告は見てきた通りの内容を忠実に説明するもの。
それはつまり、暗に計画の破綻を指摘するものだった。
「ふむ……つまり君たちは主力不在の敵陣で何もできずに尻尾を巻いて逃げ帰ってきた、と」
「ぐ……」
軍務卿、王都ギルドマスター、そして騎士団長。
副団長であるガルムは席にすら着いていないのだ。護衛程度にしか見られていないだろう。
「まぁ良い。敵戦力が大きいということはわかった」
軍務卿ギレッドが静かに告げる。
「Sランクの冒険者の手配を急げ」
「はい……王都ギルドの威信にかけて……」
「威信、か……そのようなものがまだ残っておれば良いのだが……」
この時すでに王都ギルドマスターカイエンもまた、発言権などなくなっていた。
騎士団の視察中、主力であるミルムとランドの引き離しには成功したものの、その代償は非常に大きかった。
すでに王都ギルドにギルドマスターを慕うものはいない上、あの一件で王都を離れた実力者も多くいた。
「騎士団は念のため予備戦力を含めた全てを動員しろ。外部との戦争は現状起こさせぬ」
「かしこまりました……」
軍務卿は引くつもりはない様子だ。
それはそうだろう。いくら説明したところで頭にあるのはすでに廃墟とかしたゴーストタウンにたかだか冒険者の数名がいるだけ。
しかも主力となる冒険者には国内有数の実力者であるミレオロが自らぶつかると宣言しているのだ。
こんな条件で負けるなら軍務卿になど上り詰めてはいない。
だがガルムは思う。
もし軍務卿が自らあの地を実際に見ていればと……。
そうすれば今いかに無茶な戦争を仕掛けようとしているのかよくわかるはずだから。
「あとは……」
会議をまとめようとしたところだった。
「へェ。こんなところでこそこそとご苦労だねェ」
「ミレオロ様っ⁉︎」
「どうヤら相手さんは思ってたよりちゃんとしてるみたいだからねぇ……念のために一個あんたタちに仕事をあげるよ」
「仕事……?」
軍務卿が恐縮し切った様子で聞き返す。
「エルフ狩りサ」
聞き慣れない言葉に戸惑った一同だが意味が分かった途端顔色を変えて目を見合わせていた。
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宮廷テイマー、コストカットで追放されて自由を得たので未開拓領域に使い魔の楽園を作ることにする~竜も馬も言うことを聞かなくなったから帰って来いと今更言われても……もうエルフと同盟を結んだので……~
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