160 王都騎士団②
「今回の件、騎士団としても重く受け止めております。元団長のロイグのことに関しては本来我々がまっさきに動かねばならなかったところを救っていただき感謝してもしきれません」
深々と頭を下げるベリウス。
「ああいや。被害が出ないのが一番いいから……」
「流石は英雄殿。器が違いますな」
終始褒め殺しといった感じでペースのつかめない相手だった。
「今回の件、まだ解決したわけではありません」
「ええ。魔術協会ミレオロですな。姿を隠したようで我々でも追いきれていないのです……」
「騎士団長の件の鬱憤を晴らすチャンスでしょう?」
「いやはや、そうですな。我々としても全力で捜索させていただく次第です」
騎士団は犯罪者の取締も仕事の一部、というか戦争もない平時ならそれがメインの業務になるしな。
いまは時間を作れるとしたら期待が持てる。
「さてと、田舎者ゆえなかなか来られぬ王都。是非王都騎士団の実力をこの目で拝見したいのですが、いかがかな?」
「おお、それはもしや、稽古をつけてくださるので?」
「ランド殿の意向次第ですが……」
目配せしてくるセシルム卿。
打ち合わせ通り答えておいた。
「是非お手合わせ願えればと思います」
◇
「いやあ、壮観ですな」
「数だけは多いですからな。我が騎士団は」
セシルム卿が壮観と言ったとおり、辺境伯騎士団とはまるで規模が違う。
「訓練、警備、その他を隊に分けてローテーションしているのですが、折角の機会ですので主だったものは集めさせて下さい」
「是非そうしていただきたい」
「では……ガルム。副隊長格以上のものに招集を。その他希望するものがいれば業務を中断し見学を可とする」
「かしこまりました」
静かに副団長ガルムが返事をして、各地に伝達するため消えていった。
「ではいるものたちから行いましょうか。これは三つ目の隊になりますが、隊長一名、副長が三名おります。どれもそれなりにやります……もちろんお二方に比べれば大したことはないのですが……」
そう言いながら訓練中の部隊の隊長らしき人間のもとに歩いていく団長ベリウス。
「人数が多い。できるだけ脅威に感じてもらえるようにしたいねぇ」
「私の正体はどうすればいいかしら?」
「もはや副長以上であれば公然の秘密として認識しているはずさ。できれば伏せておくにしても、直接戦う相手には見せてしまって問題にはならない」
「わかったわ」
まあそんなもんか。
ヴァンパイアだからといって攻撃していいことにはならない。
むしろこういった法の縛りは田舎よりも都市のほうが意識されやすいわけだし、王都はヴァンパイアはいなくとも亜人はちらほら見かけたしな。
「えっと……私はどうすれば……」
アイルがわたわたと慌てる。
「丁度いいじゃない。貴方の力を見せつければ良いのよ」
「相手はあの王都騎士団ですよ!?」
「あれを見てる限りそれなりに戦えるんじゃないかしら?」
「副長以上は別格です。隊は五つあるので副長以上は二十名前後なのですが……全員が冒険者でいうAランク上位以上、Sランククラスと言われています」
「そんなに強いのか」
「ええ。何かあれば元Sランク冒険者の犯罪者たちも追いかけられるように選ばれていますから……実際中には冒険者から副長や隊長になったものもいます」
「なるほど……」
となると団長と副団長は……。
いやまあロイグを考えればそうか。
そう考えると対ミレオロの戦力としてとても頼もしい存在だと言える。
「味方につけるには貴方がどれだけ脅威であるかを示さないといけないわね」
「そうだな……」
Sランク相当の副長たちにどこまでできるかわからないが、レイとエース、アールも召喚して準備を整えた。
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