04.アスクレピオス治療院
俺は英雄村という場所へと連れてこられた。
……英雄達の居る村と言われても、実態がわからん。英雄ってなんだ……?
でかい木の根元に馬車が止まる。
根元には扉やら窓やらが付いていた。
……もしかして、この樹自体が治療院なのか?
「お待ちしてましたよ、マーキュリーさん、シーフさん」
治療院の入り口に、桃色髪の若い女が立っていた。
ピンク色の制服に、頭には妙な帽子をかぶっている。
「久しぶりね」
マーキュリーさんが彼女に手を振る。
知り合いなんだろうか。
「この子が患者よ」
「まあ……」
桃髪の女が近づいてきて、倒れている俺に顔をのぞかせる。
「これは……ずいぶんと酷いですね。全身の筋繊維がズタズタ。体も炎症を起こしまくってます。正直……このままほっとくと一生寝たきりで過ごすことになりますね」
「そ、そんなに悪いのか!?」
そんな……体には確かに痛みはあるけど、でも一生寝たきりほどのダメージを負ってるようには感じないのに……。
「それは、マーキュリーさんが薬で痛みを緩和してくれてるからです。薬がキレたらあなた、多分痛みで気絶してしまいますよ?」
……そうだったのか。
ああ、くそ。そんな。一生寝たきりなんて、嫌だ。
俺は強くなりたいんだ。
修行しないといけないんだ。寝たきりだなんて……
「大丈夫です。あくまでこのままでは、という話です」
女は俺の腕に触れる。
「【修復】」
瞬間、女の手から淡い光が出る。
俺の体を包み込んでいく。
「さ、起きて」
「いや起きてって……」
「起きれます。ほら」
俺は立ち上がろうとする。今までは痛みで途中で倒れてしまった……が。
「……!? 立てた……」
「はい、大丈夫ですね。とはいえ、まだ完治するまでには時間がかかりますので、入院してください。じゃ、先にいって準備してますねー」
といって、女が立ち去っていく。
なんだ……あの女。
寝たきりになるほどの怪我を、一瞬でこんな和らげるなんて。
「彼女はここ、アスクレピオス治療院の院長、リリアよ」
「リリア……院長? って、ここのトップだったのかよ!」
あんな若い姉ちゃんが、この立派な治療院のトップとは……。
いやでも、俺を治したその治癒の腕は確かだしな。すげえ人なんだ。
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