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02.お兄ちゃんだから

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。



 ……俺はゆっくりと目を覚ます。


「…………」

「起きた、シーフくん?」


 視界に、眼鏡をかけた美女が映る。


「マーキュリーさん」


 この人はマーキュリーさん。

 俺とマイの所属するギルドの先輩だ。何かと面倒を見てくれる、いい人。


「俺……どれくらい眠ってた……?」

「3日くらいかしらね」

「そっか……」


 俺は現在馬車に乗っている。

 マーキュリーさんと一緒に、辺境の治療院に向かっている状態だ。


 俺は体を起こそうとする。

 びきっ!


 ……体に鋭い痛みが走る。


「無理しちゃだめよ。今の君の体、ボロボロなんだから」


 俺、シーフ・バーンデッドは前回、ダンジョンのなかで黄金のアウルムとかいうやつと戦った。

 

 すさまじいまでの強さをもった、強敵だった。

 マイが俺の体を操って、ギリギリで勝てるほどだった。


 ……だが、無茶がたたったせいで、俺の体はボロボロになってしまった。

 戦闘からかなり時間が経過してても、俺の体はいまだに、炎症を引き起こしてる。


「ねえ、シーフ君」

「なに?」

「マイちゃんに並び立とうとする……やめたほうがいいよ」


 ……一瞬、怒りで怒鳴り散らそうとしてしまった。

 でも……マーキュリーさんの心配そうな顔を見て、口を閉ざす。


「マイちゃんは、【逸脱者】よ」

「なにそれ……?」


「たまにいるのよ、この世の常識から逸脱した、とんでもなく強い存在。後に、英雄と呼ばれるような存在のこと」


 それがマイだというのなら、納得だ。

 マイは凄いからな。


「でもね、シーフ君……」


 わかってる、マーキュリーさんが言いたいこと。

 俺はその逸脱者ってやつじゃない。


 でも……。


「俺は諦めない。マイに並ぶ。絶対に」

「……そんなボロボロになっても?」

「たりめーだ」


 俺は、マイを絶対に一人にはしない。

 絶対に、その隣にいき、手を握ってやる。


「どうして?」

「俺が、マイのたった一人の兄ちゃんだから」


 俺、そしてマイの両親は死んでしまっている。

 マイの家族は俺しかいない。


 ……唯一の家族である俺までも、彼女をバケモノだといって遠ざけたら、あの子はひとりぼっちになってしまう。悲しんでしまう。


 そんなこと、絶対させない。


「そう……強いお兄ちゃんね、君」


 マーキュリーさんは微笑みながら、俺の頭を撫でる。

 

「デッドエンド治療院までもうちょっとかかるから、少し寝てなさい」


 デッドエンド治療院。

 この壊れてしまった体を治すために、これからそこへ行くのだ。

 

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