84.決着、その後
《ルイス視点》
バーンデッド兄妹は協力し、迷宮主アウルムを討伐した。
シーフは討伐したその瞬間、気絶する。
1歩も動けなくなった彼に走り、抱き寄せる。
すぐにポーションを飲ませたが、彼が起き上がることはない。
「兄さんっ」
マイが不安そうな表情でこちらに駆けてくる。
……一瞬、恐くて体がすくむも、けれどルイスは彼女を拒まない。
冷静に、ルイスはシーフの状態を、そのよく見える目で調べる。
「大丈夫です、マイさん。シーフくんの命に別状はありません」
体の細胞の、あちこちに深刻なダメージがあるのは間違いない。
骨も筋肉も、ボロボロだが……しかし、生きてる。
彼の心臓は生きて、強く脈打っているのだ。
「ふむ、それは重畳」
「なっ……!?」
ルイスは、驚愕の表情を浮かべる。
いつの間にか、ルイスたちの元には、1体の魔導人形があった。
「け……て……す……け……」
それは、バーンデッド兄妹をかつて追放した男の、なれの果て。
魔導人形となってしまった彼の肩に……。
「アウルム!」
子供姿のアウルムが座ってるでは無いか。
アウルムは愉快そうに笑う。
「なんだ、死者でも見たようなツラだな」
「……あなたは倒したはずです」
「ああ。たしかに吾輩は死んだ。が、意識は別に移しておいたのだ。バックアップをとっていたのだ」
「…………」
人間がそんな、気軽に命をバックアップしておけるわけがない。
……それができるのが、この化け物ということなのか。
しかしそれはどうでもいい。
問題は、メインとなる戦力が瀕死の重傷を負い、残りも戦える力が残っていないということ。
「そう警戒するな。今日はもう戦うつもりはない」
……信じられないことに、アウルムからは、戦意が感じられなかった。
ルイスの目には、彼が非常に満足してるのがわかった。
「今日は本当に楽しかったぞ。またやりたいな、シーフ、それに……マイ・バーンデッド」
アウルムがパチン、と指を鳴らす。
魔導人形の体から、2本の金のインゴットが出てきた。
アウルムが錬成を使うと、それらは黄金の杖、そしてダガーへと変貌する。
ルイス達のもとに、黄金の武器が落ちてきた。
「それは吾輩を楽しませてくれた駄賃だ。使うといい」
ルイスは警戒するも、マイは「あ、どうも」といって普通に回収していた。
呪われてるとか考えないのだろうか。
「さて、吾輩はこれで失礼する。ああ、そうそう。迷宮主を貴様らはたおしたのだ。報酬は受け取るといい」
アウルムが居た場所に、巨大な魔力結晶があった。
あれは、迷宮核。
迷宮の心臓部でもあるそれを手にすると、クリア報酬をゲットできるのだ。
それと……。
ゴゴゴゴゴ……!
「ああ、早く脱出するといいぞ。迷宮主のいなくなったダンジョンは早々に崩壊するからな」
「!」
部屋全体が揺れ動いてる。
アウルムを殺せたのはホントだったのだ。
……ルイスはシーフを負ぶさり、マイとともに部屋を出て行く。
「ところでマイ・バーンデッド。吾輩と供に来る気は……」
「ありません。それでは」
即答だった。
ルイスはマイとともに、迷宮核に触れる。
瞬間、彼女らはその場から消えた。
「また会おう。次は……殺す」
【★大切なお知らせ】
好評につき、連載版をスタートしました!
『【連載版】おばさん聖女、隣国で継母となる〜偽の聖女と追放された、私の方が本物だと今更気づいて土下座されても遅い。可愛い義理の息子と、イケメン皇帝から溺愛されてるので〜』
広告下↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。
https://book1.adouzi.eu.org/n2184ix/




