69.前に出る、付与術師
《ルイスSide》
シーフ・バーンデッドが、人を助けている一方。
妹のマイは、黄金のアウルムとの戦闘を楽しんでいた。
「ふむ……傀儡を操る腕は、貴様の方が上か」
アウルムの周りに、たくさんあった黄金は、ほぼ消滅していた。
マイ……というか、マイの操るルイスが、黄金の化け物たちを狙撃してたおして見せたのである。
「ぜは……! はぁ……はあ……はぁ……」
「あらぁ、もう限界ですかぁ?」
ルイスはその場に膝を突いて荒い呼吸を繰り返す。
マイによって、ルイスは人間の限界を超えた動きを、し続けていた。
最初はマイの鋼糸によるサポートがあったおかげで、疲労を一切感じないで戦えていた。
しかし人間は生き物、疲労はたまるものである。
ルイスは、黄金の化け物を全て倒し終えたと同時に、倒れてしまったのだ。
「お疲れ様でしたぁ」
マイは、ルイスを無理矢理立たせることはしないようだ。
鋼糸の拘束を解く。
……ルイスは、もっと戦闘させられると思っていた。
ギリギリのところで、良心が働いたのだろうか。否。
「ここからの戦いではぁ、ルイスさんじゃ役者不足ですからねえ」
……どうやら、マイは次の展開を予想してるようだ。
アウルムがニヤリと笑って、こちらにあるいてくる。
「では、最後は直接、拳を交わすとしよう」
アウルムの両腕からは、異様なオーラが漏れている。
ルイスはあの手に触れたら危険だと、直感した。
そして同時に、完全に戦意をおられてしまう。
もう立ち上がれなかった。
マイはルイスがこうなるのを予想していたのだろう。
だから、傀儡化を解いたのだ。
「いいですよぉ」
マイは、アウルムにむかって歩き出す。
「ま、まって……マイさん……。あなたでは、無理です。あなたは……付与術師。殴り合いなんて……」
「……そうですかねえ」
マイが、つぶやく。
「わたし、ずぅっと試したいことがあったんですよぉ」
「試したいこと……?」
マイが、手に持っている杖を、自分のこめかみに当てる。
「身体強化」
「! 付与を……自分に!」
付与魔法。それは、味方を強くする強化魔法……。だが今マイは、そのバフの対象を、自分にむけている。
「身体強化……身体強化……身体強化ぅ……」
マイがバフを重ねがけするたび、彼女の体から放たれるプレッシャーが、跳ね上がる。
アウルムは、万全の状態のマイと戦いたいのか、彼女のすることを見守っている。
「さぁ……最終ラウンドですよぉ……」
ぽいっ、とマイが杖を地面に投げる。
パキンっ、と杖が壊れた。
マイが……拳を構える。
「付与術師が、杖を捨てて良いのか?」
「ええ。あの杖……正直もうボロボロで」
「はは! おまえの力について行けなくなったってことか。いいぞ、吾輩を殺せたら、新しい杖を作ってやろう」
「死人がどうやって杖を作るんですかねえぇ……! 見物だなぁ……!」
マイは拳を構え、腰を落とす。
実に、自然な構えだ。まるで、武闘家のようだ。
あり得ない……あの子は、後衛職。
付与術師のはずなのに……。
「さぁ……征くぞ」
「はぁい……!」
二人が地面を蹴り、そして……拳を、ぶつけ合う。
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